（1）444年経た今、上杉謙信と織田信長の「手取川合戦」を再検証
（2）友好な関係だった上杉謙信と織田信長はなぜ、手取川で戦ったのか
（3）vol.00『謙信と信長』で、何を描くか？
（4）【謙信と信長（１）】武田信玄と徳川家康の確執、それぞれの遺恨
（5）【謙信と信長（２）】上杉謙信の判断、武田信玄の思考を紐解く
（6）【謙信と信長（３）】甲陽軍鑑に見る、武田信玄の野望と遺言
（7）【謙信と信長（４）】謙信の父・長尾為景の台頭
（8）【謙信と信長（５）】長尾家の家督は、晴景から景虎へ
（9）【謙信と信長（６）】上杉謙信と川中島合戦、宗心の憂慮
（10）【謙信と信長（７）】武田家との和解、二度目の上洛
（11）【謙信と信長（８）】相越大戦の勃発、長尾景虎が上杉政虎になるまで
（12）【謙信と信長（９）】根本史料から解く、川中島合戦と上杉政虎
（13）【謙信と信長（１０）】上洛作戦の破綻と将軍の死
（14）【謙信と信長（11）】足利義昭の登場と臼井城敗戦
（15）【謙信と信長（12）】上杉景虎の登場
（16）【謙信と信長（13）】越相同盟の破綻
（17）【謙信と信長（14）】弾正忠信秀の台頭・前編
（18）【謙信と信長（15）】弾正忠信秀の台頭・後編
（19）【謙信と信長（16）】守護代又代・織田信長の尾張統一戦
（20）【謙信と信長（17）】桶狭間合戦前夜
（21）【謙信と信長（18）】桶狭間合戦
（22）【謙信と信長（19）】美濃平定前の第一次上洛作戦
（23）織田信長、失敗に終わった第一次上洛作戦と「天下布武」の真の意味
（24）天下統一を望んでいたわけでなかった信長と、第15代将軍足利義昭の関係
（25）信長が「殿中御掟」で守ろうとしたもの
（26）足利義昭・織田信長連合政権における「五箇条の条書」と「金ヶ崎合戦」の意味
（27）姉川合戦、信長と義昭の「近江挟撃作戦」
（28）織田信長、中立を断られ「比叡山焼き討ち」を決行する
（29）織田信長、幕府の忠臣が「殺戮の覇王」になった理由
（30）戦国上杉家の家中改革と西上指向
（31）謙信、度重なる侵攻を退け「越中平定」を完了する。
（32）上杉謙信の戦略転換。打倒・織田信長のきっかけはある人物からの勧誘だった
（33）長篠合戦とその勝因。「織田の鉄炮隊」が果たした具体的な役割とは。
（34）手取川合戦直前の情勢。信長の「安土幕府」構想。謙信と本願寺の同盟。
（35）謙信と信長「戦国最強武将対決」、決戦前夜の密書の中身とは？
（36）謙信の能登攻め。「完全要塞」七尾城があっさり陥落した理由
（37）謙信最後の合戦「手取川合戦」の実像を13の軍記資料から紐解く
（38）歴史ノ部屋『謙信と信長』連載一覧
（39）謙信と信長が激突した「手取川合戦」、古史料を基に両軍の動きを再現する
（40）【最終回】謙信と信長、幻とも言われる「手取川合戦」の実相
（41）【無料Live配信】人気シリーズ『謙信と信長』遂に完結…その裏側に迫る
足利義昭主導の浅井討伐作戦
今回は織田信長と徳川家康の連合軍と、朝倉義景が派遣した朝倉景健らと浅井長政の連合軍がぶつかった姉川合戦について、見ていこう。これは信長と家康の活躍ばかりが注目されるが、本来は将軍・足利義昭も参戦して、公的に行なわれるはずの戦いであった。
なお、本稿における姉川合戦の説明は、佐藤圭氏の論文「姉川合戦の事実に関する史料的考察」（福井県郷土誌懇談会『若越郷土研究』298号・2014）を参考とさせてもらう。
永禄13年（1570）4月23日、元号は永禄から元亀に変わった。昨年9月から将軍義昭が朝廷に提案していた元号が、実現したのである。
同月30日、浅井長政の裏切りにより、信長はほとんど3万の大軍を置き捨てて、わずかばかりの供と京都まで撤退した。5月21日、無事に美濃岐阜城まで帰陣した信長は、近江浅井領防衛のため二万余の大軍を派遣したという朝倉軍（『越州軍記』）と、長政を討伐するため、諸将に参戦を呼びかける。また、次なる軍事行動には足利義昭も出馬することになった。
義昭は徳川家康にも支援を要請する。
これより信長は「元亀争乱」と呼ばれる大きな争乱に巻き込まれていく。
野洲河原合戦
6月4日、まず信長により近江から脱出していた六角承禎が失地奪還のため、出馬してきた。
信長不在の織田軍は、昼前後（11〜13時）の野洲河原合戦（「小濱合戦」）でこれを討ち払い、六角方に2〜3000人の戦死者を出さしめた（『言継卿記』6月4日条）。
そして16時頃には足利義昭のもとへ諸方面より報告が届けられた。...
