江戸の男女が実際にどんな会話をしていたのか?
当然ながら録音した音声は残っていないため再現するのは困難…しかし、手がかりはあります。
それは、戯作(大衆小説)の中のセリフです。読み解くと、身分差、男女差、職業差、年齢差などの厳格な社会だったことがわかります。
とくに春本や春画の書入れは、江戸の男女が性をめぐる場面でどんな用語を用いていたのか、どんな言い回しをしていたのかを生き生きと伝えています。
この連載では、江戸の性文化に精通した筆者がこれらを紐解き、江戸の男女の性をめぐるやりとりを再現、江戸時代の男女のリアルをお届けします。
早く終わらせるための演技
「泣く」とは性行為のときに、女がよがり声をあげること。「よがり泣き」という言い方もする。ただし、遊女(女郎)が泣くのは、客の男を興奮させて早く終わらせるための演技だった。だが、多くの男がだまされた。
図1は、女が泣いている様子。
●親の留守に、男を引きこんだ娘。真っ昼間から始めた。
男「こうか、こうか、俺もいきかかってきた、ええ、いい、いい」
女「フウ、フウ、そうだ、そうで、フフウ、おめえの、フフウ、物が、アア、火のように熱くなって、ウウ、な、フウ、った、アアア」
と、しくしく泣き出す。
春本『喜能会之故真通』(葛飾北斎、文化11年)
もちろん、この「泣き出す」は、よがり声のことである。
●旦那と妾の性行為の様子をうかがい、住込みの下女は、
「どうぞ、一番、させてみてえ。いまいましい。あのよがり泣きがもうもう、耳について、いっそ気が味になって、ええもう……」
春本『万福和合神』(葛飾北斎、文政4年)
妾の泣き声を聞いているうち、我慢できなくなり、下女は自慰を始める。
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