江戸の男女が実際にどんな会話をしていたのか?

 当然ながら録音した音声は残っていないため再現するのは困難…しかし、手がかりはあります。

 それは、戯作(大衆小説)の中のセリフです。読み解くと、身分差、男女差、職業差、年齢差などの厳格な社会だったことがわかります。

 とくに春本や春画の書入れは、江戸の男女が性をめぐる場面でどんな用語を用いていたのか、どんな言い回しをしていたのかを生き生きと伝えています。

 この連載では、江戸の性文化に精通した筆者がこれらを紐解き、江戸の男女の性をめぐるやりとりを再現、江戸時代の男女のリアルをお届けします。

 

図1『吾妻文庫』(歌川国芳、天保九年頃)、国際日本文化研究センター蔵

「がっかり」は満ち足りた疲労と虚脱感

 落胆や失望の意味ではない。現代人が誤解しやすい表現のひとつと言えよう。性行為のあとの、満ち足りた疲労と虚脱感を「がっかり」という。とくに、男の射精後や、女のオルガスムスの余韻の状態である。つまり、「がっかりする」は性的な満足の意味である。

 図1は、房事にがっかりし、おたがいに顔を見合わせる若夫婦である。ふたりの目に満足といとしさの情がうかがえるようだ。

 

●女のよがりようを見て、

 弥兵衛も今はたまりかね、

「俺もたまらぬ、それいく」

 と、たがいに気をやり、がっかりと、それなりぐっと、ひと寝入り、

             春本『絵本開談夜之殿』(歌川国貞、文政9年)

 ふたりは共にがっかりし、そのまま寝てしまった。理想的な眠りと言えようか。

 

●芸者のおかほと助次の情交。

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