レスター時代は、バーディ、マフレズといった強力な「個」の中でプレーをした岡崎慎司。

 W杯以降、三笘薫の活躍が止まらない。日本代表、そしてブライトンで圧巻のパフォーマンスを見せ、先日のFAカップではリバプールを下す決勝ゴールを決めた。

 日本サッカーの未来を考えたとき、例えば「三笘薫のような選手を日本から生み出すような「育成」や「指導」体制はあるのか――? どう作ればいいのか?」ということは重要な視点だ。

 では、その欧州のトップレベルと日本の指導環境はどう違うのか。特に、トップレベルを支える「育成」や「指導論」についてどう仕組化され、マネジメントされているのか。

 シント=トロイデンでプレーする岡崎慎司はその疑問について自身が配信するコンテンツ「Dialogue w/ 」で「海外指導者」とのLive配信を行い、そのヒントを探し続けている。

【対談Live】
 #1 Dialogue w/山下喬(FCバサラマインツ/ドイツ)
 #2 Dialogue w/尾崎剛士(アルボラヤUD/スペイン)
 #3 Dialogue w/宮沢悠生(ザルツブルク/オーストリア)
 #4 Dialogue w/中野吉之伴(SVホッホドルフ/ドイツ) &more!

 今回は海外指導者とのLive対談の中で、2010年からドイツで指導者を続けるFCバサラマインツの山下喬(やました・たかし)氏に聞いた、ドイツの指導哲学、具体的なトレーニング、そして日本との違いを紹介する。

山下喬「日本とドイツの育成の問題点には似通った所がある」

――最初はお二人の出会いについてお願いします。

山下:私は、日本で岡崎慎司くんと一緒に滝川第二高校でサッカーをしてました。高校卒業した後にすぐにドイツに来て、もうそこから19年ですね、今。

 最初はサッカー選手としてプレーをしていたんですけど(マインツのセカンドチームと契約)、23歳で引退して指導者の道に進みまして、今はドイツでサッカークラブを運営してるというような状況です。

――岡崎さん、山下さんの印象は?

岡崎:いや高校のときは本当怖くて。

――(笑)。あるあるですね。

岡崎:はい。1年生と3年生なんでやっぱり。そんなに話す機会はなかったんですけど。

 そのときからちょっと個性的な感じはあったんで、サッカーの部分の記憶っていうのがあんまりないんですけど……ただ、僕も1年の最後のほうは選手権のメンバーに入っていて一緒にプレーをしていて、声がけとかをする印象は持ってました。

 むしろ「自分を持っている先輩」っていう感じで。ちゃんと話したことがなかったんですけど、ドイツで偶然、再会したときはかなり印象が変わりましたね。高校の「怖い」「先輩・後輩」という感じから……。

――2人の再会が、山下さんがドイツで指導者をされている中で、岡崎さんがマインツに移籍され「通訳」としても二人三脚でやられてた?

山下:通訳というか、僕がそのときにマインツ05の育成カテゴリーで指導していたので、マインツ側からしても「ちょうど日本人いるぞ」みたいな形で。

 それがたまたま慎司だったっていう。

――偶然、同じ高校でプレーをした先輩・後輩だった。すごい奇跡ですね。

山下:かなりの確率だと思いますけどね。

岡崎:初めて(ドイツで会ったのは、マインツに移籍するより前の)シュツットガルトのときのフランクフルトとの試合でしたよね?

山下:そうそう。

岡崎:そのときにホテルに来てくれて……。

山下:うん。そんな大した用事はなかったんだけどね。そう、あのときは僕も慎司と喋ったことなかったんで、ほとんど。なので久々に会って、なんかすごい話せるようになってると思いましたね。

岡崎:高校のときの僕は、本当にただの「サッカー馬鹿」みたいな感じだったんで、ずっとサッカーしてるみたいな(笑)。

 普段の学校生活とかも、何も分からなくて、先生とかにも結構怒られるけど可愛がられるみたいな感じで。本当に多分そこまで考えて行動はしてなかったんです、サッカーを。

 ただ、このときはちょうどシュツットガルトにきて、いろいろ学んでるときだったんで、ちょうど。壁にぶつかったりとかしてて、そのときフランクフルトで会って、喬くんの話をいろいろ聞いたり。

 経験談とかを聞かせてもらったりして、内容は明確には覚えていないんですけど、怖いっていう印象はすでにそのとき抜けました(笑)。またマインツで会うとは思わなかったですけど、マインツに決まったときは、そういう運命なんかな?みたいなふうにはちょっと思いましたけどね。

 運命みたいなの感じましたけどね。

――その2人が一緒にドイツにクラブを作る(岡崎・山下氏で2014年にFCバサラマインツを創設。11部からスタートし現在6部に)っていうのもまたすごいことだとは思うんですけども。

 本題のところに移らせていただくと、最初に伺いたいのが、選手を育てる、育成するときに「日本とドイツの育成に差がある」のか。

 率直に「あるかないか」って言われると、山下さんはどうお答えになりますか?

動画で解説してもらったバサラマインツの練習風景。

山下:これ僕もこういう話になったときにいつも言うんですけど……、ドイツには長くいるんですけど、逆に日本の育成現場で行われていることや悩まれていることをあまり目にしてないんですね。

 だからドイツと日本の育成に何か差があるかっていうと、明確にあるとはちょっと僕は言えないんです。

 でも、悩みというか問題点ってちょっと似てるとこあるんだろうなっていうふうにも思ってまして。

 それはドイツにおいてサッカー協会とかが今、目指しているところです。

 例えばゲームの形ですね、子どもたちの。7対7や8対8といった形から、もっと年代の低い子たちは2対2とか3対3を取り入れようっていう(流れにあります)。「フニーニョ」と言われて、そういうゲーム形式を取り入れていこうと言ってるんですけど、それにはいろんな背景があるんです。

 ひとつは子どもたちがそれぞれボールに関わる時間をもっと増やそう、と。

 でも、それ以前に指導者が子どもの年代から勝ちにこだわり過ぎてることで出る弊害とか、そういうものを減らして子どもたちがもっとサッカーを好きになるとか、サッカーからドロップアウトする子どもたちを減らそうとか、そういうような取り組みの一環でもあるんですよ。

 そういうのってわりと日本だけが抱えてるような悩みというか、要は勝ちたいと思ってる指導者が多いとかっていう話もたまに聞くんですけど、「いや、でもそれは実はドイツでも同じような悩み抱えてるんだよ」とか思いながら。

――なるほど。

山下:育成のところで差があるかっていうと、もちろんそれぞれ色があってやっぱりサッカー大国って言われてるだけあって、いろいろと差……、と言っていいか分かんないですけど、違いはあると思うんですけど、良いか悪いかっていうことで言うと、簡単には言えないなという感じです僕は。

「チャレンジしたい」「もっと上手くなりたい」と思える環境を指導者が作る

 

岡崎:FCバサラマインツの目標は、日本でプレーしていた選手たちがここからブンデスリーガに行く機会が増えて欲しいということじゃないですか。その前に、「ヨーロッパを目指す今の子どもたちは、何を意識した方が良いのか?」というのは、喬くん的には何だと思います?

山下やっぱり、“強いプレッシャーの中で使える技術を育てる”のは大事かなって。

 プレッシャーが少ないというのは、言い方が良くないかもしれないけど、ボールを持って考える時間が多いと、ヨーロッパに来てボールを持つ時間がグッと短くなったときに自分ができていたことが全くできなくなる。

 

 結局、世界で戦いたいと思うときに、スタンダードはそこになってくる

 プレッシャーが強い中でやれないといけないし、ボディコンタクトがある中でやらなきゃいけない。それを避けて通れない状況であれば、やっぱり日本にいるときからインテンシティを高くして、プレッシャーが強い中で発揮できる技術や判断を育てていかないといけない。

 ただそれをやったからと言って、(ドイツで)プロになれる可能性がグッと上がるわけではないだろうから、最終的にはメンタリティーの部分を育てなきゃいけないと思っていて。

 ドイツでは今、育成年代で「ミスを許せる指導者になりなさい」ということをしきりに言っている。

 

 選手たちが「チャレンジしたい」「もっと上手くなりたい」と思える環境を指導者が作ってあげる――。そういう雰囲気を作るというのはすごい大事かなと思う。

 なかなか難しいことだと思うし、指導者も人間だから(試合に)勝ちたいって思っちゃうけど、選手の成長を一番先に置いて、そういう雰囲気作りとかミスを許せる文化を作ることは大事かなって。

 自分が知ってる(プロ)選手って、(岡崎)慎司だったり、慎司に紹介してもらった代表レベルの選手を含めてもそうだけど、やっぱり共通して言えるのはみんなサッカーが好きだし、成長意欲が強いということ。

 このレベルになっても、「もっと上手くなりたい」って、サッカーのことをもっと考えたりとか。そういう頭の選手を増やしていくことが(ブンデスリーガに行く)近道なんじゃないかと思ってる。

 

 例えば、最近(フォルトゥナ・)デュッセルドルフの内野(貴史)選手が日本ではプロキャリアがなくて、ドイツに来てからセカンドチームからトップチームの試合に出たりとか。

 あとマインツだと水多海斗がいて、この間、慎司も会ってくれたけど、(トップチームでの)リーグデビューはしてないけど、トップチームでテストマッチに出たりとか。

 そういう日本でのプロキャリアがなくて、ブンデスリーガのチームのセカンドチームにアンダーカテゴリーから這い上がってきてる選手が出てきてる。今後も増えると思う。

岡崎:いろんなところでチャンスが増えていくことは重要ですね。

【フル対談はこちら↓】
・【岡崎慎司×山下喬】在独19年監督が見るドイツサッカーの文化
https://www.synchronous.jp/articles/-/687
・【岡崎慎司×山下 喬】ドイツサッカーが取り組む「インテンシティを高めるメニューと指導法」
https://www.synchronous.jp/articles/-/775
・【岡崎慎司×山下喬】在独19年の指導者語る、欧州を目指すとき身につけるべき「技術と意識」
https://www.synchronous.jp/articles/-/776

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日本サッカー、スポーツには世界に誇るべきポテンシャルがある。けれどそれはまだまだ世界に認められていない――岡崎慎司は欧州で13年目のプレーを迎え、その思いを強く持つ。胸を張って「日本サッカー」「日本のスポーツ」を誇るために必要なことは何か。岡崎は言う。
「新しいサッカーやスポーツの価値を探し、作っていくアクションが必要」。
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・【対談】日本サッカーの進歩を妨げるハラスメントの実態
・【Live配信アーカイブ】岡崎慎司が考える「40歳までに成し遂げたいこと」
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