
「プロサッカー選手になりたい」――そう思う子どもたちに親はどんなことができるだろう?
努力? 才能? コネ? 指導者?……分からないことだらけの「夢の話」。
ヒントとなるのは実際にプロに、そして欧州にわたった選手たちの「子ども時代」だ。元日本代表・岡崎慎司が2年間をかけて聞き続けた、欧州リーグでプレーする日本人サッカー選手たちの幼少期。
その動画をまとめた「Dialogue w/ Education プロサッカー選手はどんな子ども時代を過ごしていたのか?」が発売された。
今回はその特別編として岡崎慎司の「子ども時代」を本人の著書『鈍足バンザイ!僕は足が遅かったからこそ、今がある。』(幻冬舎・2018年4月刊行)から紹介する(執筆は2018年、所属・データは当時のものです)。
基本、ネガティブ
僕は、ピッチ上では泣けない。
泣きたくないと強く思っているわけではないけど、涙は出てこないタイプ。
2010年に行なわれた南アフリカワールドカップで、パラグアイに敗れたあとでさえ、僕は泣いていない。
大会の直前にレギュラーの座を失ったけれど、腐っていたわけでも、疎そ外がい感を覚えていたわけでもない。チームの一員として精一杯戦っていた。それは自信を持って言える。
では、なぜ泣けないのか?
僕はいつも、ネガティブなイメージを抱えている。サッカーは勝負ごとなんだから、負けるかもしれないと、心のどこかで備えている。だから、「勝ちたい!」と思うのと同時に、負ける可能性も心のどこかで覚悟しているのだと思う。
「やりきってないんじゃないの?」と思われても仕方ないけれど、そんなことはない。100%やりきっている。僕は基本的に、「ネガティブ」系なアスリートなのかも。
スポーツの分野に限らず、ビジネスパーソンの間でもメンタルトレーニングは流行っているし、実際に効果もあると思う。
その大半が、成功する自分、理想の自分をイメージして、そこに向かってポジティブに行動するもの。これまでお世話になってきた人たちからも、そうしたメンタルトレーニングに取り組んでみないかと誘っていただいた。
でも、いつも丁重にお断りしてきた。なぜなら、自分には合いそうもなかったから。
鈍足バンザイ! 僕は足が遅かったからこそ、今がある。(幻冬舎文庫)
足が遅い。背も低い。テクニックもない。特に際立ったスキルを持たないストライカーが如何にして日本を代表する点取り屋に成りえたのか。その秘密が詰まった一冊!大事な試合が控えていたとする。正しい準備の仕方として想像されるのはこうだろう。音楽を聞いて集中力を高める。自分を奮い立たせるような大声を出して、気持ちを盛り上げていく。そして、活躍する自分をイメージする。
一方、僕は試合前にこんなことを考えている。
「試合、始まらんで欲しいなぁ……」
「相手のディフェンダー、ごっついやん」
怖い。試合が始まるのが怖い。プレッシャーを楽しむなんて、もってのほかだ。僕はプレッシャーに弱いタイプ。プレッシャーなんて大嫌い。決定機で外したらどうしよう。周りの人の期待に応えられなかったらどうしよう。そんな考えがアタマのなかをグルグル回っている。
「試合前の高揚感が、オレを奮い立たせてくれる!」
そんなカッコイイセリフを言ってみたい気もするけれど、そうは思えない。
ただ、「ピーー!!」っと試合開始の笛が鳴れば、不思議とそこからはスイッチが切り替わり、無心になれる。スペースを探し、ゴールを常に狙い続ける。相手のディフェンダーと執拗に駆け引きしながら、ボールを追い続ける。チャンスボールが来れば、縮こまることなく冷静にシュートが打てる。
これはどうしてか。専門家に言わせればきっと違うんだろうけれど、「緊張感」「重圧」という負のエネルギーを溜ため込み、それを正のエネルギーにパッと上手に切り替えられるタイプなのかもしれない。
結局、僕はものすごく臆病なのだ。
だから、最悪の事態を想像して、気持ちをなえさせておく。つまり、自分へのハードルを下げておく。そこまでして、なんとか試合に臨む。自分が臆病だとわかっているからこそ、謙虚に戦える。一見、僕は熱血漢に思えるかもしれないけれど、かなり冷めた部分を持って戦っているのだ。
試合でゴールを決めれば、「嬉しい!」よりも「ホッとした」という感じ。
試合で勝ったら「よっしゃー」ではなく、「よし」という感じ。
試合に負けたら「悔しい!」よりも「反省を次に活かそう」という感じ。
試合でゴールを決めなければ、「情けない!」よりも「悔しいけれど、上手くいかない日もある」と切り替える。
そして、試合の前に楽しめないかわりに、試合が終わったら、「やっぱ、サッカーって楽しいなぁ」と幸せな気分になれる。オカザキ流「ネガティブ思考」は強くなりたくてもなれない自分なりの方法です。
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