「プロサッカー選手になりたい」――そう思う子どもたちに親はどんなことができるだろう?

 努力? 才能? コネ? 指導者?……分からないことだらけの「夢の話」。

 ヒントとなるのは実際にプロに、そして欧州にわたった選手たちの「子ども時代」だ。元日本代表・岡崎慎司が2年間をかけて聞き続けた、欧州リーグでプレーする日本人サッカー選手たちの幼少期。

 その動画をまとめた「Dialogue w/ Education プロサッカー選手はどんな子ども時代を過ごしていたのか?」が発売された。

 今回はその特別編として岡崎慎司の「子ども時代」を本人の著書『鈍足バンザイ!僕は足が遅かったからこそ、今がある。』(幻冬舎・2018年年4月刊行)から紹介する(執筆は2018年、所属・データは当時のものです)。

チビでも大丈夫

 鈍足なだけではない。僕はフォワードの選手としては、背が低い。身長は174㎝。そんな僕がマインツでは1トップ、最前線にいるたった1人のフォワードとしてプレーしている。

 シャルケ04のエース、フンテラールは186㎝だし、バイエルン・ミュンヘンのマンジュキッチは187㎝もある。

 ただ、昔から足のサイズだけは大きかった。だから、周りの人たちは僕の大きなサイズの靴を見るたびに、こう言ってくれた。

「きっと背も高くなるね」

 僕もそれを信じていたけれど、残念ながらそうはならず……。順調に伸びていた身長も高校1年生になると、ピタッと止まってしまった。

 それでも、一縷の望みはあった。僕の父が高校入学以降に20㎝も背が伸びたと聞いていたからだ。父のように背が伸びないかな? と期待したけれど、一向に伸びる気配はなかった。

 ただ、よく考えたら父の身長は現在165㎝。遺伝ですね、これは。

 それでも、不思議と背の高いフォワードに憧れることはなかった。これは決して負け惜しみではなく、「背が高くてうらやましい」と思えるような長身の選手が周りにいなかった。

「背が高いヤツは、えてして動きが鈍いなぁ」

 失礼ながら、小、中学生のころから、そんな風に見ていた。

鈍足バンザイ! 僕は足が遅かったからこそ、今がある。(幻冬舎文庫)

足が遅い。背も低い。テクニックもない。特に際立ったスキルを持たないストライカーが如何にして日本を代表する点取り屋に成りえたのか。その秘密が詰まった一冊!

 幸運だったのは、指導者から、背の低さを短所として見られなかったことかもしれない。「背が低いからフォワード不適格」という烙印を押されなかった。

 小学校から中学校まで所属していた宝塚ジュニアFCの山村俊一コーチが、繰り返し教えてくれたのが、ダイビングヘッドだった。

「恐れずに、アタマから突っ込んでいけ!」

 足で合わせられる低い弾道のボールにも、飛び込んでアタマで押し込むように刷り込まれり返したから。

 アタマから突っ込むのを怖がっていると、お仕置きにジャイアントスイングというプロレスの技をかけてくるようなコーチだった。最近、僕の生え際はだいぶ後退しているけれど、あの練習のせいで毛根が破壊されたのかもしれない。ダイビングヘッドの練習を何万回も繰り返したから。

 チームを卒業する際にコーチから贈られた言葉も「一生ダイビングヘッド」。山村さんの教えに嬉々として従っていた僕は、ダイビングヘッドがトレードマークになった。

「見つけてくれた」2人の人物

 滝川二高のコーチを務めていた荒川友康さんもそうだ。名門高校に入った僕だけど、当初から期待されていたわけではなかった。1年生だけで11人のチームを組んだときも、僕はスタメンに選ばれる存在ではなかった。

 荒川さんはアルゼンチン代表の通訳兼コーチをした経験もあり、練習の前後によくアルゼンチンのサッカーの映像を見せてくれた。

 当時の僕は今と変わらず、テクニックはなかった。フォワードとして最前線に立つ僕は、後方の味方からのパスを受けても、ガムシャラに前を向いてシュートを打つくらいしか出来なかった。

 視野が狭い上に、味方を活かすようなパスも出せなかったからだ。それでも、パスを受けてから闇雲に「まずシュート」を打とうとする僕のプレーを荒川さんは気に入ってくれた。力強く、サッカー大国アルゼンチンの選手みたいだと評価してくれた。

「今のオマエはただの石っころだ。でも、磨けばダイヤになる可能性がある」

 当時、かけてくれた言葉は今でも忘れない。荒川さんから背の低さを問題にされたことなど、一度たりともなかった。その荒川さんの進言もあり、僕は毎年冬に行なわれる全国高校サッカー選手権大会で1年生ながら試合に出るチャンスを得た。しかも、当時在籍していた3年生の兄とこの大会で一緒にプレーする幸運にも恵まれたのだ。

 ダイビングヘッドという強固な武器
 〝まずシュート!〟という強い意識

 
 先天的に持っていたストライカーとしての本能を見み出いだしてくれたコーチがいたから、自分の能力を磨くことに一生懸命になるだけで良かった。背が低いことを言い訳にしたり、腐ってあきらめてしまったりするヒマもなかった。

 2014年1月25日のシュツットガルト戦で僕が相手のディフェンスラインの裏のスペースへ飛び出してゴールを決めると、マインツのハイデルGMが、こんなことを言ってくれた。

「センターフォワードに身長が必要というわけではない。キミは我々が求めていたタイプのフォワードなんだ」

 ハイデルさんは高い移籍金をシュツットガルトに支払い、僕のことを獲得すると決断してくれた人。

 ハイデルさんはドイツ人。日本人よりも体格に恵まれているドイツ人のハイデルさんから、そう言ってもらえたことは嬉しかったし、強い期待を感じた。
 
 背が低いからセンターバックは出来ない?
 不器用だから大工さんにはなれない?

 そんなことはないと思う。(次回に続く)

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