みなさん、こんにちは遠藤航です。
ヘルタ・ベルリン戦での負傷から、多くの人にメッセージをもらいました。ありがとうございます。先ほど、クラブで再検査をした結果、カタールへと向かっています。ついにワールドカップです、応援よろしくお願いします。
(2022年11月14日シュツットガルトにて)

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「マウスピース無くしたら、デュエルに行けなくなるかも」

 カタールワールドカップに臨む日本代表。欠かせない存在である遠藤航が試合で必ず装着するのが「マウスピース」。そこにある意図とは? マウスピースを作る歯科医・宮川順充(みやかわ・ゆきみつ)との対談で、パフォーマンスへの秘密を語ります(全2回の2回目)。

[総再生時間:28分20秒](聞き手:シンクロナス編集部)

動画内容
👉実際に使っている「マウスピース」と歴代「マウスピース」
👉遠藤選手との測定と作り方
👉完成系はカタールワールドカップ
👉マウスピースが義務化されているスポーツ
👉上の前歯よりも下の前歯の方が折れやすい?

遠藤 航(以下、遠藤):こんにちは、遠藤航です。

月刊遠藤航「1/12」ということで、今回は僕のマウスピースをいつも作ってくださっている宮川先生にお越しいただいて、「マウスピースとは?」とか「何で僕が(マウスピースを)着けてるのか?」みたいなところを話していきたいと思います。

宮川さん、よろしくお願いします!

宮川順充(以下、宮川):よろしくお願いいたします。(以下後編)

噛みしめるためではなく、リラックスのため

編集部 例えば日本で有名な話だと、世界的なバッターである王貞治さんの奥歯は、ボロボロで歯がすり減っていたと言われます。その話を広げると、スポーツをするとき、力を入れるとき奥歯を噛みしめる、歯にすごい負担がかかる。そこで改めて(スポーツにおける)歯の重要性などについて教えていただけますか。

宮川 そうですね。一般的に考えられている「スポーツをするときの瞬発力を出すために食いしばる」という話。実際にはですね、歯をグッと食いしばってパフォーマンスをしてる人ってそんなには多くないんですね。

 むしろ歯を浮かせたりだとか、あえてズラしたりとか、人によっては歯と歯の間にベロを噛ませて「いい場所を自分で探している」というのか……、そういうタイプの人もかなり多いんです。

 例えば重量挙げとか、ウエイトリフティングとか、そういった選手だと嚙み合わせるというのもあるかもしれないんですけども、一般的な多くのスポーツ――例えばサッカーなんか有酸素運動なんですね。

 そもそもの歯を食いしばる機会すらない。

 私が考えてるのは、噛みしめるためのマウスピースではなくて、リラックスさせるためのマウスピース。

 もしくは、普通に噛んだときの顎の位置ってありますよね。あと顎の関節。それと実際にパフォーマンスしてる、運動してるときの顎の位置って全然違うんですよ。

 私が作ったマウスピースは、パフォーマンスをしたときにどこに顎の位置や下顎の位置があるのかっていうのを探しながら、そこの場所でピンポイントの場所を見つけて計測して、それでマウスピースを作ってるんですね。

 なので、マウスピースそのものを作るプロセスも非常に、いわゆる一般的なマウスピースに比べて時間はものすごくかかるんですけども、その顎の場所を探すのに半年以上かかりましたね。

編集部 「本能的にズレている」ということで、例えば普通の人でも運動をすると「顎の位置」が変わってるということですか?

宮川 そういうことですね。ただ、サッカーで思いっきり走っているというのは、口はかなり開いてるというか、開いてますから、実際にマウスピースをしたところでマウスピースが何をするわけではないんですね。

 ただ、止まってるときに、人によっては歯を「カチカチカチカチッ」とやったりとか、顎を頻繁に動かす人がいるんですね。そういうところでマウスピースをきちんとしたパフォーマンスポジションで作ってあげると、噛めば顎がスッとそこの場所に誘導されるっていうのかな? ……効率よく顎がベストなポジションに持っていける。

 そういうとこというのは、結構落ち着くというのか、顎が余計な動きはしないんですよね。

編集部 なるほど。遠藤さんは実際着用されて、今の効果みたいなものっていうのはどう感じていますか。我々は勝手にさきほどの「グッ」という、よく言うG(重力)を受け止めるとか、あとはパワーをなるべく分散させないとか、そういうふうに思ってしまったんですけど、リラックスなどのほうに効果を感じていますか。

遠藤 そうですね。そこも面白いなと思ったところで。

 僕もマウスピースのイメージって、どっちかというと食いしばるためのモノだと思っていて。それを食いしばらないためにマウスピースを着けるみたいな話をされたときに、すごい理にかなっていると思った。

 やっぱりプレーをするときってグッと力が入り過ぎても、良いパフォーマンスって出せないというのは個人的な感覚としてあったんです。

 やっぱり試合中とかも、いかにリラックスした状態で瞬発的に(力を)出すところで出すか、みたいな部分をすごく意識してトレーニングをやっていたので、着けてみて面白いなというのは感じていました。

 今は本当に、奥歯を食いしばるというより、前歯がちょっと当たってるという感覚です。そっちのほうが、(プレーの)感覚がいいので、そういうところも含めてちょっとずつ調整しながらやっていく感じで、面白いですけどね。

編集部 例えば今、マウスピースなしでプレーしろと言われたら、違和感はすごいわけですか?

遠藤 めっちゃ違和感があると思いますね。上(顎)も下(顎)も着けているんですけど、(着けなかったら)なんか怖いですね。

 もちろん手が当たったりする可能性もあるわけですが、まず何が大事かって、歯を守るためなんで。なかったら「歯が折れるんじゃないか」と思いながらプレーをして「デュエル」に行けなくなって、自分の良さをまったく出なくなる可能性があります(笑)。

編集部 そこまでの。

遠藤 急に消極的になるかもしれない、そのくらい欠かせないですね。(スポーツ歯学でわかっていることとは?)……すべての内容は、アーカイブよりご覧ください👀✅

[その他、対談動画]
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「サッカーは“最適解”の見つけ合いだと思っています。相手、システム、能力、特徴、コンディション…それらを考慮しながら、勝つために自分たちは“どれ”を選ぶのか。これはサッカーの楽しさであり醍醐味でもあります。もっと“最適解”を見つけたい、聞いてみたい。そんなコンテンツ企画です」(遠藤航)

 

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