#5 Dialogue with 夫馬賢治(金融・戦略コンサルタント)

(再生時間:34分01秒/聞き手:シンクロナス編集部)

岡崎慎司、聞く。

今、スポーツ界のみならず、あらゆる分野でESG投資が注目されています。

ESGとは「ESG(Environment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス)の頭文字を取ったもので、この環境・社会・ガバナンスが、現代の投資や経営において重大要素といわれています。

佐伯夕利子さんとの対談でも話題にあがりましたが、ヨーロッパでは、サッカーを投資として捉える文化が根付いていて、新しい投資先として女子サッカーが注目されているそうです。

日本でもサッカーにもっとお金を投資したらどんなことが変わるのか、そもそも、なぜスポーツにESG投資が必要なのか。

そのようなことをもっと知りたくて、今回、ESG投資の日本の第一人者である夫馬賢治さんに登場していただきました。

夫馬さんは1年前からJリーグの特任理事を務め、そのことを急ピッチで進めていると聞いています。どうすれば、日本のスポーツ・サッカーが発展し、ヨーロッパと渡り合うことができるのか。ESGの視点から、夫馬さんにいろんなお話をしていただきました。

ぜひみなさんも聞いてみてください!

今、スポーツ界でESG投資が注目されている理由

ESG投資の日本の第一人者である夫馬賢治さんとの対談・前編。スポーツにはなぜお金が必要なのか。ヨーロッパでは当たり前とされるスポーツとESG投資の関係とその価値など(以下は本編の一部)。

――そもそも、スポーツと投資という部分において、「スポーツに投資が必要なのか」というのは大きすぎるんですけど、スポーツが発展していくために投資をすべきかどうか。そして、その投資とはどうあるべきかについて、夫馬さんのお考えを伺わせていただけますか。

夫馬賢治(以下、夫馬) 2つの視点から、サッカー・スポーツと投資の関係を説明したいと思います。

もともと、特にリーグ運営されているスポーツもサッカーも、日本でバレーボールも野球もそうですけど、かなりお金が動いてはじめてスポーツクラブの運営ができています。

今、Jリーグのクラブが60近くありますが(J1=18クラブ、J2=22クラブ、J3=18クラブ)、合計で約1,110億円のクラブ運営収入があって、そこから選手の給与もスタッフの給与も、それ以外のいろんな支出も全部賄っている状況ですので、やはりお金は非常に大事なんですね。

▼2021年度Jリーグ営業収益
54クラブ合計:1,147億円
※3月決算の3クラブ(柏レイソル・湘南ベルマーレ・ジュビロ磐田)を除く

岡崎慎司(以下、岡崎) なるほどー。

夫馬 お金がないと、クラブの運営ができないというのが前提にあります。じゃあ、クラブ運営はどうあるのかというと、これはどの国を見てもスポンサー収入が大きいわけです。

スポンサーのあり方がどんどん今進化してきていますが、平たく言うと、スポンサーからお金が出てくるというのは大事な前提なんです。

ちょうど去年の今ごろ、Jリーグは今年で 30年目を迎えるので30年を振り返ったり、当時の状況をもう一度思い返して、「我々はどこを目指すのか」という議論を、まさに佐伯(夕利子/元Jリーグ常任理事)さんも一緒に入ってやっていました。

そこでJリーグ発足時の話になって、(初代Jリーグチェアマン)川淵三郎さんはなぜJリーグを作ったのかーー。

日本のサッカーを強くするためには、当たり前のように日本のいたるところでサッカーができるような状態ができてないといけない。だからこそ、フィールドを作るんだ、クラブを作るんだと。

でも、それを実現させるためには、サッカー協会だけの予算ではとてもまかなえません。

だからこそ、リーグという形にしてスポンサーさんにどんどん入っていただいて、よりサッカー文化を根付かせていく。まさにスポンサーが前提となる構想で、Jリーグが立ち上がっていたりしています

そういう意味でもお金は大事なんです。

▼Jリーグ発足時の構想
日本サッカー協会だけの予算ではまかなえない

リーグという形にしてスポンサーにどんどん入ってもらう

サッカー文化を根付かせる

岡崎 そうですね。

夫馬 もう一つの観点でいくと、(Jリーグに対して)上場企業や地元の企業さんなど、たくさんスポンサードしてくださっていますが、やっぱりお金が大きくなるのは、上場企業です。

上場企業は当然、彼らのお金も投資家から出てきているお金です。その一部が、クラブ経営のスポンサーの方に流れてきている状況なので、その意味でも、投資家のお金が回ってクラブに来ています。

投資家が企業に求めるものは、本質的に企業がクラブに対して影響を与えることなので、実は非常に密接なんです。

ちょうど去年、Jクラブ自体の上場解禁も意思決定しました(※Jリーグは今年2月28日、Jリーグ各クラブの株式上場を可能とするリーグ規約の改定を決めた。施行は3月1日から)。

お金とスポーツはやり方を間違えるとすごく良くない関係になってしまいます。でも、もともとは大事な関係なのでちゃんとした上場のスキームであれば、むしろそこにお金が入ってくるのはあるべき姿じゃないかということで、意思決定をしたわけです。

このようにお金は大事な関係で、お金のことをきちんと考える、そしてお金を大事にするのは(スポーツが発展するための)前提かなと思いますね。……続きはフルバージョンで

【動画内容】ヘッドライン

◇Jリーグは今、変わろうとしている
◇Jリーグの中にサステナビリティを入れてどのように価値を生み出すか
◇スポーツと投資の関係
◇なぜ「お金が大事」なのか☜ピックアップ
◇お金がないとクラブ運営ができない☜ピックアップ
◇クラブ運営は世界を見てもスポンサー収入が大きい☜ピックアップ
◇Jリーグ理念を実現するには協会だけの予算ではまかなえない☜ピックアップ
◇Jリーグはスポンサーが前提の構想で立ち上がった☜ピックアップ
◇スポーツに投資がないとどうなるのか?
◇投資の大きな意味は、未来に向けて変化させるため
◇手元の資金だけでは、変化のスピードが遅くなる
◇スポンサーから見たスポーツクラブ
◇”会う人を広げる”と新しいスポンサーシップの価値を生む
◇スポンサーと選手・クラブの関係
◇日本の場合はお金を出してもらっている関係
◇海外の場合はフラットでパートナーのような関係
◇スポンサーとの関係は、選手が社会と関われるきっかけになれる
◇投資家は、これからクラブの価値を使える状態が生まれてくる

◆時間:34分01秒

 

次回、dialoguew/#5 夫馬 賢治さん(後編)は
8月3日(水)配信予定です。

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