まもなくウクライナ戦争の開戦から1年が経つ。現在も収束の兆しはなく、刻々と変化する戦況に世界中が揺り動かされている。

 ほかにも昨夏には各国で深刻な干ばつや大水害が起こり、世界中が極端な異常気象に見舞われた。

 一方で、コロナ禍によるさまざまな制限が少しずつ緩和され、世界を行き来する自由さも戻りつつある。

 そんな2022年の流れをうけ、2023年はどんな世界となるのか。

 昨年もウクライナを中心に、各国の様子をシャッターに収めてきた渡部陽一が注目する2023年の世界情勢について、 TVなどでは報道されない、喫緊の“世界のうねり”を報告する。

【動画バージョンはこちら】
渡部陽一が「カリスマなき後のイラク」情勢が握る中東の命運

2023年も続く、ウクライナの苦しみ

 こんにちは、戦場カメラマンの渡部陽一です。

 今回は、世界を回るなかで僕が感じた、2023年に注目するべき国際情勢、ウォッチしていきたい国、それらの予想や展開をお伝えしたいと思います。

 まず、2022年は「ウクライナ戦争」によって、世界情勢が引きずり込まれ、悲しい時間を突きつけられてきました。2023年も、ウクライナ戦争が尾を引く、または悪化することも想定しています。

 

 こちらの美しい写真は、ウクライナの首都キーウにある「ウクライナ正教会」の教会です。

 こういった教会は街中にいくつも点在しており、たくさんのオペラ劇場や、伝統的な建築技法の街並みが広がり、それこそ世界中の人々が、その美しい建造物をひと目見ようと足を運ぶ芸術の都です。誇り、尊厳、美しさ、歴史など、さまざまな魅力あるウクライナですが、今は戦争の苦しみの真っ只中です。

核弾頭保有数 世界第一位の「ロシアの圧力」

 ウクライナのゼレンスキー大統領と国民が連帯し、欧米諸国から武器の供与、戦略・戦術などの後方支援を受けながら、ロシア軍に対して少ない兵力で効果的な戦いを繰り広げていることは事実です。

 ただ、絶対的な兵力を持ち、約5800発という核弾頭保有数世界第一位のロシアは、核による抑止力を使ってきています。ウクライナ北部のベラルーシで長距離弾道ミサイルの軍事演習を行ったり、ロシアの陸海空軍が、ロシア全域で同様の軍事演習を繰り返しています。

 これらは、欧米諸国、特にアメリカ、ドイツ、フランスなど、対ロシアとして軍事支援を行う国々に対する「核の圧力に向き合うのか?」というメッセージ。

 2023年、ロシアのプーチン大統領は、ゼレンスキー大統領をなにかしらの方法で排除し、勝手な大統領選を行い、ロシア寄りの大統領を立て、ウクライナをロシアの完全同盟国に落とし込もうとするだろうと、僕は想定しています。

 それは、隣国のポーランド、ルーマニア、ハンガリーなどのヨーロッパ諸国が、ロシアの国境と直接向き合わないように、まるでサンドイッチのように、ウクライナを軍事的な緩衝地帯とすることが、プーチン大統領の戦略的イメージだと見ています。

 一方で、ウクライナ側の軍事的圧力や、欧米諸国の外交圧力、経済制裁による効果が、2023年には表に出てくるのではないかというメッセージも現場では広がっています。ウクライナ戦争、2023年もつばぜり合いが続くと僕は感じています。

「食糧危機」から生じる、暴動、デモ、テロ組織

 ウクライナ戦争は、世界中の国々にも大きな悪影響を及ぼしています。特に「世界食糧危機」が深刻さを増しています。

 穀倉地帯であるウクライナ。トウモロコシ、サトウキビ、ひまわり油、特にパンやパスタの原料となる小麦は、世界トップクラスの産出量を誇っています。

 ウクライナ産の小麦に頼ってきた中東やアフリカ大陸の国々は、戦争によって小麦が入ってこないため、食料の価格、特にパンの価格が高騰しています。生活が厳しいだけでなく、主食であるパンも買うことができない。生活そのものが成り立たなくなっていく。

 不安定な情勢によって、国民の怒りが暴動となり、国家を揺さぶるほどの大規模なデモ、反政府抗議活動が広がっていく可能性が指摘されています。

 さらに情勢が不安定になると、政権そのものを崩壊させようと、国際テロ組織といった世界情勢に関わる武装組織が、それぞれの国や地域で暗躍。武器をみせ始める時期を迎えているのでは、と感じています。

SDGsを掲げ、世界規模でアンテナを向けたい「砂漠化」

 

 この写真、映画『アラビアのロレンス』のワンシーンのような砂漠の地平線。これは、インドとパキスタンの国境に広がるタール砂漠です。

 パッと見れば美しい風景ですが、僕が世界を回っていて強く感じた変化が「砂漠化」です。

 パキスタンやインドでは、タール砂漠が町を飲み込んでいく状況が続いています。ほかにも、アフリカのサハラ砂漠や、中国北西部のタクラマカン砂漠など、世界中が砂漠化によるさまざまな影響を受けていると強く感じています。

 砂漠化が進めば、水の問題や、穀物の産出に影響を及ぼし、緑地化を進めていた場所までもが壊されてしまいます。

 今、世の中で大きなうねりとなっている持続可能な開発目標「SDGs」。豊かな地球環境、限られた資源を、国境、領土、民族、国籍問わず、皆で支えていく。そういった地球規模での連携や支援が広がってきています。

 ただ、それらの支援が必要になった要因は、人間が自然環境に強烈な負荷をかけ、破壊し、自然を無視した開発や、戦争による締めつけによるものであると、世界中の前線を回っていくなかで感じました。

 SDGsという開発目標を掲げながら、環境破壊を止め、見つめていくなかで、この「砂漠化」というものにも、世界規模でアンテナを向ける必要があると感じています。

 「今一度、地球や自然環境に目を向けよう」。これは、戦場カメラマン・渡部陽一が2023年に向けて、皆さんにお伝えしたいメッセージのひとつです。

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 今回ご紹介した情報以外にも、イランやイラクを中心とした中東情勢、イスラム教宗派による対立、イランで「ヒジャブ(頭や身体を覆う布)」の着用方を巡って女性が拘束され、その後急死した事件、そこから世界的に派生した抗議デモ、それが契機となりかねない暴動など、2023年に繋がっていくであろう“世界情勢のうねり”を、動画『渡部陽一 1000枚の「戦場」』で明かしています。ぜひご視聴ください。

 
「現場」でしか知れない、世界のホント。

「戦場」の真実をどのくらいの人が理解しているか。戦場にある悲惨な現実。犠牲になるのは子どもたち。一方で、戦場にいる人々は「私たちと同じ」日常を持っている。これも「戦場の本当の姿」――。戦場カメラマン渡部陽一が撮ってきた写真の中から、1000枚をピックアップ。写真とともにその背景を知る。「戦場の真実」と「世界の本当」を学ぶ。

 

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世界中でどのくらいの「争い」が存在していて、それはなぜ起き、今どうなり、これからどうなっていくのか。そしてその「戦場」に思いを馳せられる人はどのくらいいるでしょうか。
渡部陽一が撮ってきた「戦場の写真」をベースに、争いの背景、現実とその地域の魅力について解説するコンテンツです。

 

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