渡部陽一「1000枚の戦場」146~161/1000
2022年6月からスタートした「1000枚の戦場」も、今回が最終回となりました。
1年半という期間のなかで、ウクライナ戦争、イスラエルとハマスの紛争と2つの戦闘が起き、その他の地域でも火種がくすぶっています。
そして一見、平和に見える日本でも、「情報戦争」に突入しています。SNSにおいては、フェイクニュースの弾が飛び交う戦場になりつつあるのかもしれません。
そこで、最終回の今回は「情報戦争を生き抜く術」について、渡部陽一氏が語り下ろします。
ウクライナ戦争をきっかけに情報戦が活発化
こんにちは戦場カメラマンの渡部陽一です。
これまで、世界中の様々な情勢が絡み合ってきた中で、この1年を見ていくと、戦争報道に大きな変化があったと感じています。
戦争というものは、兵士がお互いの武器を取り、命を奪い合う戦争だけではなく、情報を管理した側が優位に進めていく情報戦でもあります。
この情報の衝突というものが、この1年で世界を良くも悪くも大きく揺るがしてきました。
その象徴であるのが、ウクライナ戦争です。
ウクライナという小さな国が、どうして強大なロシアという国に約2年間も対峙することができたのか。
その理由は、まさにウクライナが持っている情報の力、ITの力、さらにはAI。
ヨーロッパの中でもトップクラスのIT技術を持っているウクライナがこの情報の力を使い、前線での最新兵器の戦い方やドローンの使い方、さらにはロシア軍の動き方に対する情報管理の仕方。
それらに対する様々なAIを使った戦略の組み立て方に秀でている。
昨年から今年にかけて、情報を駆使した戦い方で勝利に導くことができるという考え方やその輪郭が、ウクライナには強く見えてきていました。
そして、ガザ軍事侵攻。
ガザに関しては、いかにお互いが優位な情報を流すのか。例えば、イスラエル側は、ハマス側がどれだけ残虐なことをしてきたか、イスラエル側に攻撃してきたことを映像で見せてきました。
逆にハマス側も、イスラエル側が学校、医療施設、市民が逃げてきたシェルターとして使われていた場所が、攻撃の予告もなく破壊されたという情報や映像を世界中に強く配信してきました。
武力を使った軍事的な戦い方が絶対的な土台にありながらも、情報戦とは、いかに世界中の人々に、自分たちがどれだけ悲しいのか、不利な状況や残虐な光景に立たされているのかを具体的に見せていくことです。
現代の戦い方として、世界中の国、情報を受ける我々もこの状況を認識してきています。それは日本に限らず、世界中が携帯電話、パソコン、ネットの情報がないと、暮らしを整えることができない。そんな時代に完全になってきています。
情報を管理したものが、戦いを制していく。AI、フェイクニュース、個人的な情報の発信などを使った情報戦争が私達が今生きている現代の戦争です。
情報に対してどう向かい合っていくのか。
世界情勢だけではなく、ファッション、グルメ、音楽、ダンス、歴史、様々な環境でSNSを通して世界中が繋がっていると思います。
その中で戦場カメラマンとして情報を発信していて強く感じたこと。
ズバリ、「気持ちの良い情報、要注意」、「心地良すぎる情報、要注意」です。
私たちは大量の情報が飛び交う環境で暮らしています。
時々ちょっと疲れている時、実は無意識のうちに、自分の気持ちの根っこに待っている本能的な好みや心地いい情報に意外と引っ張られていることが多いです。
情報社会の中で、あまりにも出来すぎた良い情報。皆さん、要注意です。
これこそ、無意識のうちに相手に引きずり込まれる情報の戦争の最前線です・・・続きはフルバージョンで✅
(この他にも、渡部陽一さんが撮影した貴重な写真を紹介します。)...