
アメリカを代表するレコード会社数社が音楽生成AIの制作会社に対する訴訟を起こしているのをご存知でしょうか?
実は、2024年、ソニーミュージック、ユニバーサルミュージック、ワーナーミュージックといった大手レコード会社が、「著名アーティストの楽曲を無許可で学習データとして使用している」としてSuno社とUdio社を提訴したのです。
AIによる既存の楽曲の学習は、アーティストの権利を侵害するものなのか? それとも、AIによる学習はあくまで公正なデータ利用の一種なのか? 音楽業界は、新しい倫理的・法的課題に直面しています。
そもそも音楽生成AIとは、Chat GPTやGeminiとは違って、音楽を生成するAIのこと。
例えば、音楽生成AIのひとつである「Suno」は、ユーザーがジャンルや曲調をテキストで命令するだけで、作曲から編曲、演奏まで自動でおこない、楽曲を生み出します。
音楽生成AIは、誰もが手軽に音楽を創造できる時代を切り開いたといえるでしょう。
しかし、新しい技術を社会に導入する際には、さまざまな課題がつきもの。SunoとUdioに対する訴訟は、音楽生成AIもまたそうした課題の源泉となるのだということを浮き彫りにしました。
こうした先端的技術の社会実装に伴う諸課題は、一般に「倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues)」の頭文字をとって「ELSI」と呼ばれます。
音楽生成AIにおける学習元データの問題は、まさにELSIの典型的な事例です。そして、技術革新が著しい現代において、このELSIに関する深い理解を持つことは、ビジネスを前進させる大きな価値を持つようになっています。
連載「ELSI最前線」では、各領域の専門家が注目の事例を取り上げて論点を解説します。
今回のテーマは「音楽生成AIのELSI」。本記事で紹介した学習元データをめぐる問題のほか、
- 音楽生成AIは、私たちの音楽への向き合い方をどう変えるのか?
- AIが作った楽曲が氾濫することにはどのようなリスクがあるのか?
といった論点について、音楽学・文化政策学の専門家である肥後楽氏が全3回の連載で解きほぐします。

(編集協力:原虎太郎)
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