少子化の原因って結局、なんだ?

 今年の3月に岸田内閣による「異次元の少子化対策」試案が政府から発表されました。

 日本の未来を語る上で「少子化」は欠かせないキーワードになっています。

 この「少子化」を示すデータは多く存在します。

 例えば、2022年の出生数は79万9728人

 政府の統計より「11年早く」そして「(1899年以降)初めて80万人を下回った」ことを示すこのデータは客観的な事実を提示しています。

 また、合計特殊出生率は1.30で、これは昨年より0.3%低下し、6年連続の減少していること。これも日本の事実です。

 高齢化社会に加えて、少子化が進むと労働力の低下や経済規模の縮小、今の日本を支える多くの制度の維持が困難になる、などさまざまな課題に直面するとされており、それゆえ「異次元の対策」が示された、というわけです。

 では、「少子化」を食い止めるにはどういう政策が必要なのか。これを考える上で「少子化の原因」を突き止めていくことが重要になります。

 今回、「データの裏側」編集部で取材を進めたのは多くのところで語られる「少子化の原因」となるとき根拠として持ち出された「データ」になります。

1)少子化の原因は「女性の晩婚化である」というデータ

 ある閣僚のひとりは「女性の晩婚化」を原因にあげました。

 確かに出産が可能な女性の結婚年齢が遅くなれば(例えば日本はフランスのように婚外子が多くないので)少子化の原因となり得ます。

 果たして女性の結婚年齢は上昇しているのでしょうか。

 人口動態統計によれば、平均初婚年齢は1985年の妻25.5歳、夫28.2歳から2021年には妻29.5歳、夫31.0歳となっています。

 確かに晩婚化が進んでいるように見えます。

 しかし、別のデータもあります。

 例えば「女性がもっとも多く結婚した年齢」(これを最頻値と言います)。

 初婚の年齢の最頻値は26歳。この数字は2001年と変わっていません。

 平均値と最頻値で3歳以上の差(29.5歳と26歳)があることは「データ」としては見逃せません。

 そして単純に平均だけを見て「晩婚化が進んでいる(※実際に一部の人が高齢で結婚をする「外れ値」を示しているため平均が上がるわけですから晩婚化自体は進んでいるとも言えますが)ことが少子化の原因だ」としてしまうと、政策を誤ってしまう可能性があります。

2)少子化の原因は「生みたいのに生めない」というデータ

 

 合計特殊出生率が1.3なのに、平均理想子ども数は2.25。

 あるメディアが報じた「生みたいのに生めない」理想と現実を示したデータですが、これには大きな誤りがあります。

 ということで今回は、長野智子編集長とともにデータの専門家・高橋信氏に「少子化データ」の裏側について徹底取材をしていきます。

 なぜ、このデータは間違っているのでしょうか? 是非みなさんも考えながらご覧ください。

再生時間:23:35



【内容】
○少子化は“女性の晩婚化”が原因?
○平均値が現実とは限らない…?
○出生数80万人割れの深刻度
○“合計特殊出生率”って何?
○“2人出産”なら人口維持
○不適切なデータ比較に注意!
○今なぜ“データサイエンス”?

【ゲスト】
高橋信
民間企業でデータ分析や講演活動に従事。著書に『マンガでわかる統計学』、『マンガでわかるベイズ統計学』(ともにオーム社)などがある。

【今回取り上げたデータ】
・夫婦の初婚年齢の年次推移(厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」)
・初婚の妻の年齢(各歳)の構成割合(厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」)
・年齢別初婚件数【令和2年(2020)】(内閣府「男女共同参画白書令和4年版」)
・日本の出生数の推移(厚生労働省:人口動態統計)
・日本の合計特殊出生率の推移(厚生労働省:人口動態統計)
・平均理想子ども数(国立社会保障・人口問題研究所 2021年調査)

「データの裏側」編集会議も全部見せます!
<少子化前編>【編集会議】「親からの仕送りが少ない!」今月「メディア」を賑わせたデータは?

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前回の【データの裏側】は「消費者物価指数」と「賃金データ」
https://www.synchronous.jp/articles/-/820

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