「“ゴールをつくる“だけでも変わるスポーツが日常化するための地道なアクション」

(再生時間:1時間17分23秒/聞き手:シンクロナス編集部)

岡崎慎司、聞く。

 髙田さんの話を聞いて、すごくいいなと思ったのが『自分のために、女子バスケを開拓していきたい』というところでした。海外にいても、自分のために、という部分は成長するためのすごく大事なファクターだと思います。

 日本だとどうしても自分を押し殺して、我慢して、何とかたどり着く、みたいなイメージがありますが、そういうものがない世界のほうが、ブレイクするのではないか、と。一方で、女子バスケの環境は、僕たちサッカー選手より厳しいものがあるとも感じました。

 そんな中で、どうすればスポーツとして共通点を見出し、未来につなげていけるのか。ぜひ聞いてみてください。

 

#1 Dialogue with 髙田真希(女子バスケットボール選手)

2020東京オリンピック女子バスケットボールで銀メダルの獲得に貢献した髙田真希さんは「現役アスリートだからこそ、伝えられることやできることがある』と活動の幅を広げている。Wリーグ(女子バスケ・トップリーグ)でプレーするかたわら、2年前から社長も兼務する理由とは――。2人のトップアスリートが「選手目線」で日本スポーツの課題を語る(以下は本編の一部)。

 

――(育成の話)「負けず嫌い」とか「反骨心」ってすごく良い言葉ですが、それを養うことは、今の日本のサッカーの育成だとすごく難しい。どちらかというと、テクニカルなことを小さいうちに教えている、と言われますね。トレンド的でいえば、ヨーロッパサッカー的なポジショナルとか戦術・システム的なことも頭に入れようねっていうのがすごく多い。(となると、より)感情的な、続けるためのエネルギーみたいなものを落とし込んでいくのが、難しいのではないでしょうか。

 バスケ界の育成では、髙田さんと同じ思いを持った子たち――「バスケが好きで続けたい」子たちを作る仕組みはできていますか?

髙田真希(以下、髙田) うーん……できてきているとは思います、たくさん。それこそバスケットだけでいうと、男子のバスケのBリーグも7年目で、下部組織もあってサッカーに近い形にはなってきています。

 そういう育成の部分もそうですし、最近は情報もたくさん得られる時代なのでそういうのも使いながら、引退した選手たちがスクールを開いたりとか。いろんな形で技術を学べる場所は増えてきているなって思うんですけど……。

 そういったメンタリティーの部分が教わるかっていうとまだまだかなって思います。技術だけを見るとめちゃくちゃうまいなって思いますし、それこそ自分が小学生中学生の時に比べたらはるかにうまいと思いますが、それだけで活躍できる人は一部かなって感じます。

――サッカーと似ているんですね。岡崎さんはどうですか?

岡崎慎司(以下、岡崎) 共通しているところでいうと、バスケもチームスポーツなので、海外に来ると個人スポーツに変わるんですよ。

 プロになったら変わる。自分が活躍しなくちゃいけないじゃないですか。チームの中で活かされながら自分が活躍しなくちゃいけない

 でも、日本だとチームのためにやったことが自分に返ってきて、自分は成功できたなって思ったんですけど、その考えで海外に行くとそうじゃなくて。まず個人を出して、チームがそれに合わせていく

 だから、自分に焦点を当てるのがわかりやすいですよね、海外だと。でも、日本だと、育成でバスケがどうなっているのか気になります。

 サッカーは戦術とか豊富で練習もいろいろあって、監督も知識を持っていて、よりチームスポーツというものが強くなってくると思うんですよ、勝つためには。

 バスケもそういうふうに下部組織もできて、チームの中で輝ける選手が出てくると思いますが、そうなってくると自分で何とかしようとする選手が育たなくなってしまうのかなと。

 メンタル的にも人のせいにする、チームのせいにしてしまう、自分にフォーカスできなくなっちゃうのかなって思っています。

 バスケはいっぱい戦術があって、僕の印象ではよりコンパクトでチームの中でやらなきゃいけない。そうしたなかで(チームプレーが)できない子はついていけなくなる可能性もあるのかなって。上に行けば行くほど狭くなっていくような気がして。

 そうすると、土台の部分。サッカーだとフットサルとか楽しむ土台も作ったりしているんですけど、そのへんがバスケだと何になってくるのかなって興味があります。

髙田 バスケだと、3x3もオリンピックの競技であったりしますし。そういったものに力を入れ始めてもいます。

岡崎 (こういう質問に答えていただくのは)指導者じゃないから難しいですよね(笑)。僕も同じような考えなので、あんまり育成とか指導とか言えないんですけど。

 振り返ると、僕もどちらかというと、コンプレックスを持っているので、人のせいにするよりも自分にフォーカスする癖がついていて。それが、結局さっきの(話)につながっているわけじゃないですか。動機がどうであれ、最初に自分にフォーカスできる環境だったので。

 それを活かせるとなったら、例えば、育成のところで自分にフォーカスさせるなら、そこだなって思ったりしますけど。

髙田 自分はもちろん育成で、いろんなことを伝えていくのも大事だと思うんですけど、育った環境もすごく大事だと思っていて。

 2つ上に兄がいるんですけど、外でよく遊んだり野球やったりサッカーやったり鬼ごっこしたり、兄の友だちとやることが多かった。2つ上の兄たちと遊ぶってだいたい負けるので、そのとき、どうやったら勝てるのかなって頭で考えていたんですよ。

 そうしたら勝手にずる賢くなったりとか、どうしたら勝てるのかな、次こうしたらいいかなというのが染みついているので。

 岡崎さんがおっしゃったみたいに自分で考えてこうしてみようかな、ああしてみようかなっていうのは、やってみて育ってきたのでそこが大きいかなって個人的には思いますね。

岡崎 環境ですよね。ストリート的な。スペインに来てから思うのは、プレッシャーを感じている中でそんなリスクの高いプレーできるのかっていうのがたくさんあって。遊びというか。そういうのって、(環境の中で)染み付いていると思うんですよね。

 外国の選手は、チームスポーツの中で自分の好きなことをやっているから、疑問すらない。それを見て思うのは、そういう環境でやっているからなのかなって。

 自由さがあることも大事なのかなって。さっきの話はめちゃくちゃヒントになる。そういう環境があるって、そうなんだと思いました。

――髙田さんや岡崎さんの今の活動にもつながることだと思ったのが、どう我々社会や、もっというとアスリートたちが作っていけるかが重要なんじゃないかと。次世代に向けて課題感を伝えられていることを伝えられていないのは、2人の中であったりしますか?

髙田 まだまだ伝わっていない感じはありますよね。

 だから、自分もいろいろな活動をしたいなって思いましたし、またサッカーとは違って自分がいるのは女子のバスケットになるので、まず認知でいうと低くてニッチな世界。

 女子バスケって聞けば(それが何かは)わかると思いますが、「日本の中で(女子)バスケットボールプレーヤー、誰を知ってる?」ってなると、今回のオリンピックを除くとまだまだ浸透していない。男子(バスケの人気)が徐々に伸びているくらいで。

 実際、私たちも今リーグ戦をやっているんですけど(編集部注:取材時)オリンピック前は空席が目立ちぐらいだったので、まずはそこを変えたいと思って、いろんな活動を始めているんですけど。

 自分たち伝える側にいなきゃいけない人も、その場に立てていないのが現状で。立てる場がないというか、自分で動かないと作れないので。求めている人はたくさんいると思うんですけど……。

 じゃあ、そのためには人が動かなきゃいけないですし、そうなるとそういう場を作ってもらって呼んでいただかないといけない。まだまだそのレベルなので。そこが自分たちの環境では整っていないかな、とは思います。

<略>

岡崎 サッカーは確かに世界的にも規模がでかいし、歴史も日本でも長い。ひと通りそういうことは通って、ワールドカップも出て世界的(にも認められるように)なりつつも、課題が解決していないのは「伝える」ことにも限界があるというか。

 伝えたいところには伝わってなかったりとか、変わってほしいところは変わってなかったりとかするのも実際にあって。

 僕はスポーツ全体がぶつかっているところは一緒だと思っていて。サッカーも女子バスケも規模は違うけど、同じスポーツというカテゴリーで、スポーツが日本国民にとって必要になっていないのが問題点というか。

 そこの幅が広がって、「スポーツっていいよね」というのが広まらないと。

 海外を見ると、環境は国が積極的に作っているわけです。(災害があったときに)保証されたりとか、健康保険があったりとか……。スポーツがあることによって豊かになっている。

 みんなが心や体のところで。そういうことをすごく感じます。そういったところで、スポーツ選手がリスペクトされている部分があると思う。

 日本は、オリンピックを見ても(髙田さんは実際に)体験されていると思うんですけど、その時は「ワーっ」と(盛り上がって)、でも「感動した」って言ってくれた人の何人がその後も盛り上げてくれるか。

 結局、バスケ界の人だけしか(盛り上げようと)思わない、女子バスケ界の人たちしか(盛り上げようと)思わないと思うんですけど……。

 これを、どうしたら本当の根っこの部分にフォーカスできるかっていうのが、一番の課題だと思っていて。

 サッカーも女子バスケも同じ課題にぶつかっていると思うので。だから、僕が髙田さんを見て共感できた部分はそこです。伝えるだけじゃなくて、自分がいて体験しているので。そこがヒントじゃないか。

(スポーツが)日常というか習慣になるのかな、って

 バスケだったら、ドイツではそのへんにバスケがあったりするんですけど、コンクリートのところに書いてあるだけのゴールが駐車場のところにあって。

 なんか、ああいう環境というか、勝手に3x3が始まるような環境があったりとか。

 言葉でしゃべるよりも、必要性をみんなが感じ出すのかなって思ったりしますね……(続きはフルバージョンでご覧いただけます)。

【動画内容】ヘッドライン

◇髙田真希から見た岡崎慎司の印象
◇髙田真希の原点とは?
◇コンプレックスを払拭できた理由
◇トップアスリートのコンプレックス
◇バスケ・サッカー界の育成に必要なこと
◇次世代に伝えるべき課題とは?
◇髙田真希の夢・女子バスケの魅力
◆時間:1時間17分23秒

次回は、4月13日21時~live配信を予定しています。本対談で学んだこれからの取り組みとは――?

👇live配信は以下から👇
https://www.synchronous.jp/articles/-/471

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