子どもの興味関心を起点に、学びをどこまでも広げていく「探究型保育」。鍵となるのは、保育者が子どものつぶやきを拾い上げることだ。
0歳児から子どもの目線や仕草を手がかりに保育者が働きかけることで、興味は予想外の方向へと広がっていく。「子どもはこの程度しかできない」という大人の思い込みを外したとき、子どもの可能性はどこまで伸びるのか。
探究型保育を実践し、『2050年の保育』を出版した株式会社エデュリー代表取締役・菊地翔豊氏に、その考え方と日々の取り組みを聞いた。
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子どもの成長の限界を大人が決めない
――「探究型保育」の一番の特徴はどこにありますか。
菊地翔豊(以下、菊地) 探究型保育は、子どもたちの興味関心からスタートします。0歳児であっても1歳児であっても、子どもの目線や表情、仕草をもとに保育者が働きかけていく。
0歳児のお散歩中に花に目が向いたら、保育者が花のコーナーを作る。幼児になると興味はさらに広がって、例えば電池の仕組みに興味を持った子が図書館に行き、そこからモーターや動くものへと関心が発展し、小学校で学ぶような理科の内容にまで広がることもあります。
最大の特徴は、子どもの成長の限界を決めないことです。「子どもはこの程度しかできない」という大人の物差しで可能性を狭めるのではなく、子どものやりたいことを保育者と一緒にとことん追求していく。そういう保育を展開しています。
――日々の活動はどのような流れで進むのでしょうか。
菊地 午前中はダイナミックに、午後はクリエイティブに、という形で組み立てています。
午前中はそれぞれの興味に沿ってフィールドワークに出かけます。新幹線に興味がある子は新幹線を見に行くし、ドーナツに興味があるチームはドーナツ屋さんへ行く。野菜に興味がある子はスーパーに買いに行ったり、実際に野菜が育っている場所を訪ねたりします。
「とりあえず公園に行く」という発想を覆して、地域全体を園庭と捉え、地域の資源を最大限に活かす。午後はさまざまな素材や道具を使ってものをつくる活動をしています。
子どもの「つぶやき」を拾い上げて形にする
――保育者が具体的に意識していることはありますか。
菊地 私たちはこの取り組みを「仕掛け」と呼んでいます。子どもが「どんぐりってなんだろう」「キャンプしたい」とつぶやいたとき、「そうなんだね」で終わってしまったら、遊びはそれ以上発展しません。
そのつぶやきをちゃんと拾って、「じゃあ明日どんぐりがある公園に行ってみよう」とか「キャンプができる場所を探してみよう」と形にしていく。キャンピングカーという言葉が出てきたら「保護者の方でキャンピングカーを持っている人を探してみよう」と動く。
実際に活動につなげ、一緒に何かをつくる環境を整える、この一連の流れを、保育者が常に意識しています。
保育士を含むチーム全員が、「子どもの成長と発達の可能性を最大化するプロフェッショナル」という意識を持っています。「保育は子どもを預かるだけの場所」という考え方とは、そこが一番大きく違う部分です。
個性的でありながら「一人ひとり」に寄り添う「探究保育」。そこには、子どもの成長を裏付ける確かなエビデンスがあります。最新テクノロジー、そして現場の経験と熱意が結実した「個別最適」な保育ノウハウとは?
子どもの可能性を最大化するヒントを凝縮。保育業界のみならず、「子どもを育てる」すべての人に贈る、注目の1冊。
子どもに「正解」を押しつけない
――保護者の方がこの考え方を家庭で生かすには、どうすればいいでしょうか。
菊地 保護者は忙しいので、子どものつぶやきをすべて拾うのは難しい。つい「はいはい」と流してしまうこともあると思います。
ただ、すべてでなくていいので、何気ないつぶやきを少し意識して覚えておくだけで、「そういえばあのとき、こんなこと言ってたな」と形にすることができます。それだけで子どもは親に「また話してみよう」という気持ちになる。小さな積み重ねが、子どもの探究心を育てていくと思います。
――保育や教育において大切にしていることを教えてください。
菊地 日本の教育は「なぜこれを学ぶのか」を教えてくれないことが多い。自分にとって必要なものだと理解できれば、子どもは自分から動きます。逆に、なぜやらなければいけないのかが分からないと、なかなか前に進めない。
だから私たちは、子どもたちの正解を大人が知っているとは思っていません。「子どもとはこういうもの」「これをしていれば必ずこうなる」という絶対的な答えはない。根性論ではなく、その子その子にとっての最適解を常に探し続けること。それが保育において一番大切なことだと考えています。
1994年5月30日生まれ。
日本の教育にあわず高校を退学になり、ニュージーランドへ留学。
帰国後、慶應義塾大学に入学、2014年 当時19歳で保育施設の運営を目的に株式会社エデュリーを創業。子どもたちの潜在能力の最大化をミッションに掲げ、現在は東京、