子どもが生まれると、それまで仲良くやっていた夫婦が衝突するようになる。そんな経験を持つ夫婦は少なくない。
「夫婦リカバリー相談室」で様々な夫婦のお悩みに答える夫婦カウンセラーの安東秀海氏は、その背景に「価値観の違いへの対処法のなさ」と「幼少期の親子関係の持ち越し」があると指摘する。
多くの夫婦が悩むことが多い子育てに関わる夫婦問題の本質に迫った。
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「コミュニケーション」「価値観」「感情」夫婦問題は三つに分解して考える
―夫婦間でトラブルが起こった時、まずは何を考えればよいのでしょうか。
安東秀海(以下、安東) 問題が、コミュニケーションの行き違いなのか、価値観の相違なのか、それとも感情のわだかまりが主な原因なのか、まずそこを分けて考えることが第一歩です。
コミュニケーションの行き違いの例でいうと、仕事の悩みを家庭で話す場面があります。
一方は気持ちをシェアして気持ちが楽になるのに、もう一方は「愚痴に意味はない」と考える。これはコミュニケーションのスタイルの違いでもありますし、価値観の違いでもあるので、どちらに起因するかの判断は難しい。ただ、まず「違いがある」と認識することが大切です。
――具体的にコミュニケーション行き違いとはどういったものですか。
安東 人には、思考優勢・感情優勢・感覚優勢といった違いがあります。
思考優勢の人は、物事をロジカルに分析して問題を定義するように話します。感情優勢の人は、出来事そのものよりも「相手がどう感じているか」にフォーカスする。感覚的な人は、話している場の雰囲気が心地よいかどうかを重視します。
価値観の違いがある場合は、まず自分がどんな価値観や信念を持っているかを理解したうえで、お互いがそれを出し合える場をつくることが必要です。
問題なのは「価値観の違い」ではなく「違いへの対処法がないこと」
――では、価値観が近い夫婦のほうがうまくいくのでしょうか。
安東 トラブルの火種自体が少ないという意味では、価値観は近いほうがトラブルは少ないと思います。ただ、全く同じという人はいないので、価値観が違っていても、重要なところですれ違わなければ問題がないケースもあります。
大事なのは、価値観の違いよりも、その違いについて話し合えなかったり、違いを乗り越えるような方法を見つけられていないことのほうが問題だと思っています。違いが問題なのではなく、違いへの対処法がないことが問題なんです。
――子どもが生まれると夫婦喧嘩が増えると言いますが、これも価値観の違いからくるのでしょうか。
安東 子どもはお互いにとって大切な存在だからこそ、価値観の違いが明確になりやすいというのがひとつあります。
例えば学生時代から付き合っているカップルは、ある程度お互いの価値観を理解している。しかし子どもが生まれると、それまで触れたことのなかった違いに初めて直面することがある。10年以上気にならなかった違いに突然ぶつかって、相手に絶望してしまうケースもあります。
一方、成熟した大人になってから交際を始めたカップルは、最初から「違いがあるのは当然」という前提があるため、違いを受け入れる土台ができていることが多いです。
夫婦関係に関する様々なお悩みを夫婦カウンセラー・安東秀海先生がお答えする連載。
日頃のコミュニケーションの難しさから、家事・育児の不満、姑や実家問題、セックスレス、不倫、離婚等の問題まで、夫婦がお互いをストレスに感じることなく、心地よい関係を築く秘訣がわかります。
親になることで、自分の親子関係が再度浮上する
安東 子育てで夫婦喧嘩が増えるもう一つの要因として、自分が親になることで、自身の幼少期の親子関係が再び浮上してくることがあります。
例えば、厳しい父親のもとで育った男性が、自分が父親になったとき「同じような怖い父親にはなりたくない」と考える。すると子どもへの接し方が優しくなりすぎて、妻側から「もう少し威厳を出してほしい」と感じるようになる。そこから行き違いやケンカになることがあります。
そういった意味で、子ども時代にきちんと「子どもとして甘えきれているか」は、夫婦関係にも影響します。甘えきれなかった未消化な部分は、パートナーへの過度な期待として持ち込まれやすい。その期待が満たされないとき、感情的に相手を責めてしまうことにもつながります。
ですが、パートナーにに過剰な期待や甘えが出てしまうのも、いたって自然なことです。夫婦間で関係を調整するだけでなく、「そこに別の要素が重なっていないか」を分けて考えることが、良い関係を築くうえで重要だと思います。
夫婦カウンセラー。妻とともに夫婦専門のカウンセリングオフィス「LifeDesignLabo」を主宰。東京渋谷のカウンセリングルームには不倫やセックスレス等様々な問題を抱える夫婦が日々訪れ、2023年7月現在サポートしてきた夫婦は2000組に上る。機能不全に陥った夫婦の関係性を読み解き、健全なパートナーシップ構築へと導くことを得意とする。心理カウンセラーとして10年以上臨床に携わってきた実績から多彩なアプローチ手法を持ち、心理療法(セラピー)や心理ワークにも精通する。1973年生まれ。2023年7月21日に『夫は、夫婦は、わかってない。 夫婦リカバリーの作法』(SYNCHRONOUS BOOKS)を上梓。