脱いでも稼げない「裸のデフレ」の時代、コロナ禍がその状況に拍車をかけた。夜職で働く女性たちが収入を失い、困窮化。性風俗産業は女性の貧困とからめて取り上げられるようになった。
その一方で、稼げる女性と、そうでない女性が二極化しているともいわれている。ではその背景には何があるのか。社会全体で格差が拡大するなか、性の世界にもその影響はあるのか。
本企画では、風俗の世界で働く女性たちへのインタビューを行っていく。記事だけでなく、動画、音声、LIVEなどのイベントを通して、格差が生じる要因を探る。前回に引き続き、大原智恵さん(仮名)の話をお届けします。
また記事執筆者の坂爪真吾氏が、12月19日まで、夜の世界で孤立している人たちに、AIの力で「明日の選択肢」を届けるためのクラウドファンディングに挑戦中。ご覧になってみてください!
夫には仕事のことは一切伝えていない
結婚後から現在に至るまで、智絵さんは風俗の仕事を続けているが、夫には風俗の仕事をしていることは一切伝えていない。吉原のソープでは、3ヶ月前ほどから働き始めた。
「激安店でもなければ高級店でもない、中級店です。今のお店を選んだ理由は、求人サイトでメッセージをやり取りした際に、ちゃんと私のプロフィールを見て、そのうえでオファーを出してくれている、ということが伝わってきたからです。そっけない文面だったんですけど。「ぽっちゃり体型だけど、大丈夫でしょうか」と質問した際も、「うちの店は胸で売っているので、大丈夫です」と言われました」
心身の状態が不安定で出勤が難しいとき、お店は対応してくれるのだろうか。
「メンタルが厳しい時は、正直に厳しいってお店に伝えますね。だけど、あんまり汲んではくれません。毎月20日までに次の月のシフトを出すのですが、その際に「仕事なので、出したシフトはきちんと守ってね」と言われます。
まあ、おそらく私が平日メインで出勤しており、平日は比較的お店の部屋が空いていることが多いので、勤怠についてはそこまで厳しく言われないのかなと思っています。
お客さんの層は、若い人で30代、40代がパラパラで、50~60代くらいが多いです。中高年になって、仕事や生活が落ち着いてきてお金を使えるようになった、という人が多い印象を受けます」
働く上での不安と悩み
現在働いているお店では、入店時の講習は全く行われなかったという。
「サービスに関する講習は全然なかったです。お店のトップの女性が有名な講師の方だったので、その方に講習費を払って、初心者コースを2時間受けたんですけど、全然できませんでした。マットプレイは難しいです。まず私がマットから滑り落ちてしまう。そしてお客様も滑り落ちてしまう。本当に大変です。マットプレイをきちんとできる人は、本当にすごいなって思います」
入店してから、もうすぐ3ヶ月になる。智絵さんの今の悩みは、新人期間が終わって客数が減ってしまうことだという。
「本指名はまだ多くないのですが、2~3人はリピートしてくれたと思います。今働いているお店は最短が70分コースなのですが、私は1人のお客様と仲良くなる方が好きなので、120分や150分のロングコースだと嬉しいです。お客様の中には、毎月来てくださる方もいます。本指名を増やす工夫は・・・全然できていません。お客様からは「親しみやすい」「落ち着く」と言って頂けることがあります。人の話を聞くことも、自分が話すことも好きなので、お客様との間で悪い空気になったことは、ほとんどありません。まぁ、私が勝手にそう思っているだけかもしれませんが」
様々な不安はあるが、今のお店は自分に合っていると感じている。
「デリヘルだと裏引きとかあるじゃないですか。本番交渉とかもすごく面倒臭いし、値切ってくる相手もいる。単価も安いので、私にはあんまり向いてないです」
障害者の無料パスを使って出勤
現在、智絵さんが風俗の仕事で得ている月収は、10数万〜20万円前後である。
「先月が20万位で、その前の月が17万ぐらいかな? 平均して20万円くらいですね。バック率は6割位ですが、ソープはとにかく雑費が高くて。新人ボーナスも無くなるので、これから先どうなるかはわからないです。とりあえず、出勤はめっちゃ入れています」
自宅から吉原までは、一部の路線で障害者の無料パスを使えるため、往復で数百円で移動することができる。
「ちょっと時間はかかりますが、都営の交通機関を使えば、半額あるいは無料で移動できるルートがあります。都バスは基本的に夜遅くまでは運行していないので、出勤する時間帯は日中にしています。13時頃にお店に着いて、20時まで接客して、22時には帰れたらいいなという感じです」
現在は、吉原のソープ以外に鶯谷のデリヘルを掛け持ちしている。
「今のお店は、吉原以外のお店であれば掛け持ちOKということだったので、鶯谷のデリヘルでも週一くらいで働いています。そのお店は本当に完全自由出勤で、当日欠勤や当日出勤についても寛容で、すごく気が楽で良いですね。
一本あたりの単価は良くないんですけど、体重百キロ超えのぽっちゃりさんもいて、ホームページの写真で体型の補正や加工は一切していません。「このお腹がいいんだよ」って言ってくれるお客さんがいっぱいいる。稼ぐためというよりも、自己肯定感を上げるために出勤しているのかも・・・と思ってしまうくらいです」
生活保護と収入
風俗の仕事以外に、昼の仕事も少しずつ始めている。
「毎週一回、無理のない範囲で働ける職場で働かせてもらっています。仕事を休むことに関しても、「ちょっと先に言ってくれたら問題ないよ」というスタンスのところです」
収入をきちんと把握せずに働いていた時、デリヘルの収入が多い月があり、ケースワーカーに相談したほうがよいのでは、と思う時があった。しかし思い悩んだ末、結局相談することはできなかった。...
