脱いでも稼げない「裸のデフレ」の時代、コロナ禍がその状況に拍車をかけた。夜職で働く女性たちが収入を失い、困窮化。性風俗産業は女性の貧困とからめて取り上げられるようになった。

その一方で、稼げる女性と、そうでない女性が二極化しているともいわれている。ではその背景には何があるのか。社会全体で格差が拡大するなか、性の世界にもその影響はあるのか。

本企画では、風俗の世界で働く女性たちへのインタビューを行っていく。記事だけでなく、動画、音声、LIVEなどのイベントを通して、格差が生じる要因を探る。前回に引き続き、高野あやこさん(仮名)の話をお届けします。

高野あやこさん(仮名)
最高年収 約1100万円
稼いだとき お店を辞める最後の年

男性客の「自分でも自覚していない欲求や気持ち」を引き出す

 風俗を利用する男性は、意外にも「自分が何をしたいのか」「何をすれば満たされるのか」を明確に理解していない人が多い。

 自分のニーズや現状への不満について、自分でもよく分かってないけど、どこかモヤモヤした気持ちはある。自分の性的嗜好を口に出して伝えることに抵抗がある、という人が少なくない。

 そうした男性の心理をうまく察して、「あなたは本当はこれがしたかったんですよね」と提案できる女性は、指名と収入を増やすことができる。

「私は意外と懐に入っていけるタイプだったので、お客さんの趣味嗜好についても、コミュニケーションを取ることができました。『自分の性癖がわからない』『SなのかMなのかも分からない』『だからちょっと今日は、お尻に指を入れてみてほしい』と言われたりしました。自分の性癖を確認するために時間を作って来てくださる方もいたし、試してみた結果、『やっぱり違った』と言って帰るお客様もいました」
 

高野あやこさんのインタビュー動画#1はこちらから

メンタル不調の波をうまく乗りこなす

 高野さんが風俗の世界に入ったきっかけは、昼の仕事でうつ状態になったことが原因だったが、デリヘルで働いている期間中も、メンタルに関しては結構波があったという。

「予約が入らなくて、出勤しても待機が続く状態のときは、よくメンタルの波が起こってましたね。元々、精神的に落ち込みやすいところもあったのですが、怒りや不満のぶつけどころがあるわけでもなくて。自分の中だけで抱え込んで、モヤモヤしてしまっていました」

 セルフプロデュースによって、自分で自分を売り出している場合、予約が入らないのは全て自己責任になる。精神的なダメージも大きい。 

「そういうときは、スタッフさんに『今日は予約が入らないから帰ります』と告げて、突然帰ったりとかしてました。ここはお店に感謝している点なのですが、結構自由にさせてもらっていました」

 出勤してもお客の予約が入らなかった場合、待機時間に対して保証や時給を出してくれる店はあるが、待機によって病んでしまうのであれば、本末転倒である。「その日はすっぱり諦めて帰る」という選択肢は重要だろう。

「お客様がつかなかったときの待機保証についても、スタッフさんは渡そうとしてくださるのですが、私は予約が入らないのは自分の責任だと思っていたので、もらわなかったです」

「稼げないのは自分のせい」「電話が鳴らないのは自分のせい」と考えるのはしんどいが、客のせいや店のせいにしても、稼げるようにはならない。風俗の世界で自己責任論が根強く残っているのは、「誰かのせいにしても稼げないから」というシンプルな理由からなのだろう。

卒業とセカンドキャリア

 20代後半で高収入を稼げるようになり、生活の不安もなくなった。デリヘルで稼いだお金は、主にどんなことに使っていたのだろうか。...