吹奏楽部員たちが部活に燃える日々の中で、書き綴るノートやメモ、手紙、寄せ書き……それらの「言葉」をキーにした、吹奏楽コンクールに青春をかけたリアルストーリー。ひたむきな高校生の成長を追いかける。
第35回は東海大学付属高輪台高等学校(東京都)#5(#1はこちらからご覧になれます)。
本連載をもとにしたオザワ部長の新刊『吹部ノート 12分間の青春』(発行:(株)日本ビジネスプレス 発売:ワニブックス)が好評発売中。
吹奏楽部員、吹奏楽部OB、部活で大会を目指している人、かつて部活に夢中になっていた人、いまなにかを頑張っている人に読んで欲しい。感涙必至です!
天才肌のクラリネット奏者
「いい意味でも、悪い意味でも、自分がこうと思ったことを貫ける人。クラリネットの実力があるからこそ、言葉に説得力があるし、違うと思ったらそう発言できる人。私が持っていないものを持ってて、性格も正反対。だから、仲良くなれたのかも」
コンサートマスターの柿沼七夕星(ナユセ)は、サキにそう思われている。

全国に知られる名門・東海大学付属高輪台高校吹奏楽部で、高1から蒲公英(たんぽぽ)チーム(55人のA編成)に選抜された3人のうちの1人だ。
小3から吹奏楽部に入ったのは、4つ上の姉の影響だった。演奏する姉の姿に憧れを抱き、その後を追うように中学でも吹奏楽部を続け、姉がバスクラリネット奏者として所属していた高輪台にも入った。
姉は高3のとき、全日本吹奏楽コンクールに出場したが、結果は銀賞だった。
「お姉ちゃんの分も、絶対私が全国大会で金賞をとってやる!」
ナユセはそう心に誓っていた。そして、その誓いは高1の全国大会で早くも現実のものとなった。
だが、全国金賞メンバーではあったものの、実際には先輩についていっただけ。技術の足りなさを突きつけられ、落ち込むことも多かった。とても「金賞獲得の原動力のひとつになれた」とは思えなかった。
中学時代にマーチングをやっていたナユセは、マーチングコンテストにも参加し、全国大会で金賞を受賞した。昨年の全日本吹奏楽コンクールでも金賞。自分の姉や、日本中の高校生たちが憧れる全国大会金賞を何度も受賞した。
しかし、やはり「自分が成し遂げた」と心の底から思うことはできなかった。特に、3年生の存在がどこまでも大きかった。
今年1月におこなわれた定期演奏会で1学年上の先輩たちが卒部し、ナユセやサキたちが最高学年になった。そのとき、顧問の畠田貴生先生にこんなことを言われた。
「この2年間の栄光は、そのときの3年生のおかげ。お前たちの力じゃないよ」...