夫婦カウンセラーとしてこれまで4000組以上の夫婦をサポートし、著書『夫は、妻は、わかってない。夫婦リカバリーの作法』でも注目を集める安東秀海先生が、読者の皆様から寄せられた夫婦関係のお悩みにお答えする「夫婦リカバリー相談室」。
シリーズ「夫婦健康診断」では、夫婦問題の予防や早期発見のために必要な向き合い方や考え方を安東先生が紹介・解説。
今回から全3回にわたり、「夫婦ゲンカのスパイラルを止める」をテーマにお届けします。
相手のためを思って伝えた言葉が、思いがけず夫婦ゲンカのきっかけになってしまうことがあります。良かれと思ったアドバイスが、なぜ相手の反発を招き、関係をこじらせてしまうのでしょうか。
第1回では、夫婦の暮らしを「個人の領域」と「共有の領域」に分けて考えながら、ささいなすれ違いが大きな衝突へと発展する仕組みを安東先生が解説します。
「相手のため」がすれ違いに変わる、夫婦の境界線とは
「そんな仕事の進め方じゃ体を壊すよ。もっと効率よくできないの?」
相手のためと思って言ったアドバイスが険悪な空気を作ってしまう。気をつけてほしいから口にしたひと言がきっかけで、口論に発展してしまう。
伝えたかった意図とは裏腹に相手を怒らせてしまったり、その刺々しい反応になんだかこちらもカチンときてしまったり。時に夫婦のケンカというのは、「なんでこうなった?」と自分たちでも理解できないきっかけから始まることも少なくありません。
カウンセリングでも、コミュニケーションに関する相談のおよそ半数は、「なぜこれほど険悪になってしまったのか理由が特定できない」というケースです。
明確な原因が見えないくらいの小さな違和感が、お互いの感情を巻き込みながら取り返しのつかないほど大きな衝突へと発展してしまう。そんな「夫婦ゲンカのスパイラル」を止めるには、どうすれば良いのでしょうか。
今回は、良かれと思った発言がなぜか衝突へと向かってしまう「構造的トラップ」について紐解いていきたいと思います。
夫婦の関係がこじれる構造的原因
思い描いていた穏やかな暮らしとは裏腹に、どうして夫婦の関係はこれほどまでにこじれてしまうのでしょうか。そのメカニズムを紐解く上で役に立つのが、夫婦の暮らしを「1階」と「2階」に分けて捉えてみる考え方です。
ふたりで暮らす「ひとつの家」を想像してみてください。
【2階 👉共有スペース】
夫婦や家族が一緒に生活をする場です。家事や家計の管理、育児の協力など、ふたりの暮らしの土台はここで営まれます。お互いが心地よく過ごすためには、日頃のコミュニケーションを通して「ルールや役割の分担」をすり合わせていくことが欠かせません。
【1階 👉個人の部屋】
それぞれがひとりの人として、自分らしくあるための場です。仕事への向き合い方、趣味や休息の過ごし方、大切にしている価値観など、個人の裁量やマイルールが守られる領域です。ただし、2階の共同生活を気持ちよく続けるための「思いやりと自律」が前提となります。
暮らしの中で何か引っかかることが起きたときには、まず「1階と2階のどちらに当てはまる問題なのか」という視点から考えてみると、頭の中が整理しやすくなります。
それが「すり合わせるべき共有の課題(=2階のテーマ)」ならふたりで向き合い、「個人の領域(=1階のテーマ)」ならそれぞれが責任を持つ。つまり、後者であれば相手の裁量に任せる(委ねる)という姿勢も必要になってきます。
こんな風に言うと、「相手に任せろと言われても、現にそのやり方に困っているのに、我慢するだけで問題が解決するわけがない」と思われるかもしれませんが、もちろんそうではありません。
「任せる」ことの目的は、変えようとしても変えられない「相手のやり方」や「考え方」を...