夫婦カウンセラーとしてこれまで4000組以上の夫婦をサポートし、著書『夫は、妻は、わかってない。夫婦リカバリーの作法』でも注目を集める安東秀海先生が、読者の皆様から寄せられた夫婦関係のお悩みにお答えする「夫婦リカバリー相談室」。
シリーズ「夫婦健康診断」では、夫婦問題の予防や早期発見のために必要な向き合い方や考え方を安東先生が紹介・解説。
「分かってほしい」と思っているだけなのに、なぜ夫婦の会話はこじれてしまうのでしょうか。実は、相手に伝えたい思いが強いほど、無意識のうちに「あなた」を主語にして相手を責めてしまいがちです。「批判」と「防衛」の悪循環から抜け出すために、夫婦喧嘩をヒートアップさせないコミュニケーションのコツを解説します。(第2回)

「批判」と「防衛」のループを抜け出す
「靴下を片付けてほしいだけだったのに、気がつけば大喧嘩になってしまう。」
改善してほしいことや、分かってほしいこと。お互いに切実な思いがあるのに、言葉がトゲをまとうせいで本音が届かないのは、とてももったいないことです。
夫婦間のコミュニケーション不全について考える全3回のシリーズ。第1回では、「不満」と「批判」の違いをひもとき、何気ないひと言が「批判」となって相手の「防衛」を招き、夫婦喧嘩をこじらせてしまうメカニズムについて考えました。
第2回となる今回は、「批判と防衛のループ」から抜け出し、お互いを責めずに伝えたいことを伝える技術について考えていきます。
「分かってほしい」ことほど伝わらない会話の秘密
「なんで先に言ってくれなかったの?」
「言ってもどうせ分からないでしょ」
夫婦の会話がこじれるとき、その根底には、無意識に使ってしまう「批判的なメッセージ」が潜んでいるのかもしれません。
「あなたはいつも話を聞いてくれない」
「なんでいつもそうなの?」
このように、相手を主語にして言葉を組み立てると、本心はどうあれ、「悪いのはそちら側だ」「変わるべきなのはあなただ」という糾弾のニュアンスが色濃くなってしまいます。「あなたが悪い」と伝えたいのでなければ、これほど意図とずれた伝わり方はありません。
たとえ相手に非がある場面であっても、良好な関係を保つうえでは批判的なコミュニケーションは避けるべきです。なぜなら、批判されたと感じる側は、内容の正しさを受け入れる前に、自分を守るための「防衛反応」として反論や無視、言い訳を反射的に返してしまうからです。
どれほど正論であっても、むしろ正論であればあるほど、このリスクは高まるばかりです。
なぜ相手を「主語」にしてしまうのか
そもそも、なぜ私たちは「分かってほしいこと」があるときほど、相手を主語にした言葉を選んでしまうのでしょう。それは、「なぜ自分がこれほど辛いのか」をちゃんと分かってほしい、という思いが強いからではないかと思うのです。
抱えている不満や痛みが大きいほど、「これだけ嫌な思いをした現実を分かってほしい」という切実な願いが生まれます。そして、その痛みのきっかけが相手の言動にある以上、その背景を説明しようとするほどに
「あなたが◯◯したから」
「あなたが◯◯してくれないから」
という言葉になってしまうのも無理はありません。
決して攻撃したいわけではない。むしろ「なんとかして分かってほしい」と願うからこそ、相手の振る舞いをひとつひとつ、時には過去にまで立ち返って説明しようとしてしまう。
その結果、本当に伝えたかったはずの「私の気持ち」が置き去りになって、「相手の行動」ばかりが並ぶ批判的なコミュニケーションが生まれてしまうのではないでしょうか。
これは、前回の記事でお伝えした「いつも」「一度も」といった「過度な一般化」にも深くつながっています。
伝えたい思いが強いほど、その気持ちの大きさを表現するために過去の出来事まで総動員して伝えてしまう。ひとつひとつを丁寧に説明しようとする気持ちそのものが、結果として相手の人となりを決めつける言葉に変わってしまうのは、なんとも皮肉なことです。
「あなた」を主語にするメッセージは、「あなたが悪い」と責めたいから生まれるのではありません。私の気持ちや状況を「なんとかして分かってほしい」という、切実なSOSから生まれるのだと思うのです。
言い返す前に、まずは自分の感情を引き受ける
では、相手への不満を感じたとき、私たちはそれをどう伝えればよいのでしょうか。...