結婚生活の中で積もり積もった不満や違和感。もう離婚しかないと思うほどの不仲やトラブル。
さまざまな夫婦の在り方があるからこそ、ふたりの間だけで解決できない悩みや問題を抱える人も少なくないでしょう。
夫婦カウンセラーとしてこれまで4000組以上の夫婦をサポートし、著書『夫は、妻は、わかってない。夫婦リカバリーの作法』でも注目を集める安東秀海先生が、読者の皆様から寄せられた夫婦関係のお悩みにお答えします。
今回は、妻からの指摘のされ方に悩むよしはるさん・男性からのご相談です。
よしはるさん(仮名)からのご相談
妻(いくこさん)はASD、私はADHDです。
私が約束を忘れると、妻が強い言葉で私をADHDと言って責めてきます。傷つくのでやめて欲しいと何度も伝えているのですが、やめてくれません。
どうしたら良いですか?
(夫・よしはる、妻・いくこ)
※頂いたご相談に編集を加えております。ご了承ください。
相手を変えようとするほど、夫婦関係がこじれる理由
「約束を忘れてしまうと、妻から強い言葉でADHDだと責め立てられる」という、よしはるさん。傷つくからやめてほしいと伝えても変わらない妻の態度に困惑してしまうのもムリはありません。
お互いに傷つけ合いたいわけでも、関係を壊したいわけでもない。それなのに、自分の気持ちや痛みを伝えようとするたびに言葉がすれ違い、かえって関係をこじらせてしまう。コミュニケーションの行き違いはなぜ生まれるのでしょう?
『夫婦リカバリー相談室』、今回はよしはるさんのご相談をもとに、傷つけ合ってしまうコミュニケーションのスパイラルを止めて、関係を悪化させないための具体的な方法を考えてみたいと思います。
「だからあなたは」に傷つくのは当たり前
まず触れておきたいのは、よしはるさんやいくこさんの特性について、確定診断があるのか、それとも傾向を感じている段階なのかという点です。
カウンセラーは医師ではないので、医学的な診断を下す立場にはありませんが、重要なのは、よしはるさん自身がその特性について納得できているのか?ということです。自分自身、整理がついていない段階では混乱してしまうのもムリはありませんし、必要以上に責められたように感じてしまうのもまた自然なことなのかもしれません。
けれど、ADHDもASDも情報処理や認知の傾向や特性であって、個人の性格や性質、ましてや人となりを定義するものではありません。
発達特性に傾向があるとして、大切なのは、それを使って相手をジャッジすることではなく、それぞれが無理なく暮らしていくためのヒントにすること。ここではまず、夫婦の関係悪化を防ぐために、二人の間で起きている問題となるやり取りを整理してみましょう。
妻の徒労感と、夫の傷つき——すれ違いの背景にあるもの
まず、妻であるいくこさんの視点に立ってみましょう。
もちろんいくこさんも、よしはるさんが「わざと忘れた」と思っているわけではないはずです。
けれど、「何度伝えても同じことが繰り返される」という状況は、待つ側にとって大きなストレスになる可能性があります。生活のリズムを崩されるだけでなく、「私の言葉は届いていないのではないか」「軽く見られているのではないか」という落胆や徒労感が積み重なっていたとしても不思議ではありません。
「ADHDだからなの?」なんて言葉が出てしまう背景には、よしはるさんを傷つけようとする意図があるわけではなく、何度言っても伝わらないことへの失望と、予定が崩れ見通しが立たないことへの不安や混乱が隠れているのかもしれません。
一方で、その言葉を受けるよしはるさんとしては、単なる注意を越えて「人間性そのものを激しく批判された」ように感じてしまうのもまた自然な反応です。悪気があって忘れたわけではないのに存在ごと否定されたように感じ、さらに特性まで引き合いに出されてしまっては、「どうしたらよいのかわからない」と思考がフリーズしてしまうことさえあるかもしれません。
夫婦間の行き違いというのは、それぞれが自分の中の誤解や思い違いを修正できないままに相手のことを判断してしまうところから始まることが少なくありません。...