
北中米ワールドカップがいよいよ始まる。「歴代最強」と呼ばれたサッカー日本代表はどこまで勝ち進めるのか?
日本代表史上初のベスト8超えに必要なことは何か――4年間、多くの識者とともにディスカッションをし、そのポイントを指摘してきた。果たして現日本代表はそのポイントをクリアできたのか? 改めて議論を振り返る。
「監督力」は試合を左右するのか?
ーーカタールW杯では、ドイツのハンジ・フリック監督やスペインのルイス・エンリケ監督といった名将たちに、森保監督の采配で勝ったとも言えます。これからの日本代表は「監督力」で勝つことは可能だと思いますか?
酒井高徳(以下、酒井):指揮している時間が長ければ長いほど、選手の特徴や勝ちパターンは蓄積されていくはずです。
カタールW杯まで日本代表を支えた吉田麻也選手、酒井宏樹選手はいません。彼らの経験値は重要だったと思います。
同じように監督の経験値というのもあると思います。
強豪国と対戦したときに「どういう傾向に試合が流れるか」「どんな選手を投入するのがいいのか」、そのエビデンスを積み重ねる必要はあると思います。
監督にできるのは、今まで得たエビデンスをしっかりはめ込んだ上で、その時々に的確なチョイスを出せるかどうかが「監督力」だと思います。
それ次第では「監督で勝つ」というのはありえる話だと思いますし、高いレベルになってくると必要な要素の1つになると感じます。
――岡崎さんは監督をやられていて、「監督で勝つ」という感覚はありますか?
岡崎慎司(以下、岡崎):僕は「監督が全て」だと思ってしまうところがありますね。
いろんな分析や特徴を持った選手たち、優秀なスタッフがいたとしても、最終的に決断するのは森保監督だと思います。
だから監督って本当に「孤独」だと思います。
僕も試合終わった後に話をしたいけど、言い訳みたいになってしまうので、なかなかか話せない。
試合後は「ああすればよかった」「こういう判断ができた」と思ったりするのですが。
それがW杯という大舞台、日本代表ともなれば、なおさら増えてくると思うんです。
W杯のあの異常な緊張感の中で、どれだけ早く決断できるか。
監督ってすごい職業だなと思いながらやっています。
「W杯行き」を決めたアジア最終予選バーレーン戦の狙い
ーー直近の試合でも3バックが試されていますが、森保監督の采配は慎重すぎるという指摘もあります。もっと大胆に、最初から攻撃的にいく選択肢についてはどう思われますか?
酒井:交代カードを切ってしまうと、もう後戻りはできないというリスクを常に考えなければいけません。大胆にいくのはいいですが、退場者や怪我人が出たときのために、監督は常に「保険」を持っていなければいけない。
試合展開に関して言えば、前半はずっと0-0で、バーレーンがすごく良い守備をしていました。日本はボールを大事にしようとしすぎて、一つ一つのプレーに時間がかかっていた。それで何度かボールを失うと、だんだんみんなが裏を狙わなくなり、ボールが欲しくて後ろに重たくなってしまった。
そこである程度時間を見て、伊藤選手や中村選手を入れたのは割と良かったんじゃないかと思います。
三笘選手が警戒されて足元で抜くシーンが少なかった中で、疲れてきているタイミングで中村敬斗選手を入れて仕掛けさせるのはアリだと思いました。
岡崎:単純に僕が思ったのは、センターバック3枚にちょっと不安があって、最初は「保険を打って入ろう」と思ったんじゃないかなと。
だから堂安選手や三笘選手には「無理だったら下げちゃおう(ブロックを作ろう)」と最初から言っていたと思うんです。そうなると選手たちの選択肢としても、下げる判断が早くなる。
テレビなどでは「相手に主導権を握られている」と言われていましたが、負けられない戦いだったからこそ、あの戦い方を貫いて勝った。
元々「勝負をかけるのは後半」というイメージをみんな持っていたんだと思います。
まずは保険をかけて試合に入って、最後は交代選手を含めて「選手がやってくれる」という信頼感。それが森保さんのサッカーなんだなと思いましたね。
(本稿は2025年3月公開「岡崎慎司×酒井高徳「W杯優勝への“3つの議論”」を一部を抜粋し再構成した)
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