夫婦カウンセラーとしてこれまで4000組以上の夫婦をサポートし、著書『夫は、妻は、わかってない。夫婦リカバリーの作法』でも注目を集める安東秀海先生が、読者の皆様から寄せられた夫婦関係のお悩みにお答えする「夫婦リカバリー相談室」。

シリーズ「夫婦健康診断」では、夫婦問題の予防や早期発見のために必要な向き合い方や考え方を安東先生が紹介・解説。今回は良好な夫婦関係に必要な「自己肯定感」についてお届けします。

 

夫婦関係の「修復力」を決めるもの

「いつも穏やかで楽しそうな夫婦」と「どこか緊張感が漂う夫婦」。その差はどこにあるのでしょうか。

カウンセリングを通して夫婦のすれ違いに向き合っていると、激しくぶつかっても、驚くほどしなやかに関係を立て直していける夫婦には、ある共通点があることに気づきます。

夫婦リカバリー相談室、今回は幸せな関係が続く夫婦にあるものについて考えてみたいと思います。

「自己肯定感」は夫婦の土台

「コミュニケーションが円滑であること」
「信頼し合えていること」
「情緒的なつながりがあること」

良好な夫婦関係を測る指標はいくつかあります。夫婦カウンセリングの現場では、これらの指標と直面している問題を照らし合わせながら、こじれた関係性を整えていくのですが、たとえ深刻な課題を抱えていても、意外なほどスムーズに関係を修復できるケースに遭遇することがあります。

ケンカをしてもすぐ仲直りができる。客観的には困難な状況でも、前向きに関係改善に取り組める。そんな夫婦に共通しているのは、「自己肯定感」の安定です。夫婦ともに肯定感が高い場合はもちろん、夫・妻のどちらか一方が安定しているだけでも、リカバリーに向かう推進力は劇的に変わります。

カウンセリングでは夫婦生活を「2階建ての建物」に喩えてお話をすることがあります。話し合いをしたり、コミュニケーションを見直したり、異なる価値観をすり合わせるのは、夫婦が共に暮らす2階部分を整えるうえで欠かせません。

一方、1階にはそれぞれが長年暮らしてきたふたつの部屋があって、そこにはそれぞれがこれまでの人生で大切にしてきた価値観や考え方、生活スタイルがつまっています。

共同生活の場である2階の部屋が心地よいものであることは重要ですが、2階を支える「1階部分」が揺らいでいれば、いくら上層を直そうとしても思うようには進まないものです。そして、その1階を支える土台となるのが、夫と妻それぞれが持つ「自己肯定感」なのだと思うのです。

そもそも自己肯定感とは何か?

ここ数年で広く認知されてきた「自己肯定感」という言葉ですが、時に「前向きに考えること(ポジティブシンキング)」と混同されているように思います。

前向きに考えるというのは、物事の良い面を自分で選んで見つめる「頭の使い方」です。私たちは考え方を選ぶことで、落ち込んだ気持ちを立て直したり、やる気を出したりすることができます。つまり、前向きさは心を上手にコントロールするための「ツール」のようなものです。

それに対して、自己肯定感のもとになる「自分を受け入れている感じ」は、頭で選ぶものではなく、心に湧き上がる「感覚」そのものです。調子の良い自分だけでなく、ダメな自分や後ろ向きな感情を持っている自分も、隠さずに「これが今の自分なんだ」とまるごと認めることを指します。考え方は選べても、湧いてくる感覚は選ぶことができません。どんな自分であっても、そのままの姿を否定せずに味方でいてあげることが、自己肯定感の本質といえます。

そしてこの「自分を認める力」は、夫婦関係においてとても大切な役割を果たします。なぜなら、...