徳川政権末期の「徳川近代」という時代は、明治新政権が政治的に江戸時代を全否定することによって抹消されてしまった。

その影響は現代まで続いている。勝者である官軍によって歪められた歴史は、幕末を生きた偉人たちの存在を掻き消してしまった。

しかし、来年の大河ドラマ「逆賊の幕臣」で、幕臣として近代化に尽力した小栗忠順が主人公になるなど、少しずつ歴史の見方も変わってきている。

本企画では、小栗忠順のみならず「幕末・維新を動かした真の主役たち」というべき人物に着目し、音声を中心に記事や動画などもまじえてお届けしていく。

第5回は井伊直弼#2

「不平等条約」の再検証から見える井伊直弼の実像

 井伊直弼は、日米修好通商条約を「不平等条約」として強引に結んだ専横の政治家と語られがちです。しかし条文を見れば国益を損なう内容だったとは考えられず、領事裁判権も相互性のあるものだった。

 むしろ条約が不平等化していくのは、その後の尊攘派による外国人襲撃と外交上の譲歩の積み重ねによる面が大きいとされます。井伊は国際情勢を踏まえ、当面は開国と協調を選ぶ現実的判断を行った人物でした。

 将軍継嗣問題や朝廷の混乱が絡む中で責任を一身に負った側面もあり、単純に専横的な人物像では捉えきれません。条約内容と政治過程の両面からの検証が不可欠です。

音声内容(再生時間:60分48秒)

  • 領事裁判権は“相互主義的”なものだった
  • 条約締結当初の関税はむしろ自主性があった
  • 不平等化は後の政治過程で進んだ
  • 「井伊直弼は開国・国際協調路線を現実的に選択した
  • 「朝廷の意思決定機能の限界と政治的混乱……等

 本企画では以下の5人の人物について論じていきます。歴史教科書で語られてきた従来の視点を覆す見方を皆様にご提示していきます。

阿部正弘 しれっと開国した徹底した改革派老中
井伊直弼 薩長討幕派がもっとも恐れた誇り高き保守文化人
小野友五郎 米軍士官が驚愕した天才科学官僚
小栗忠順 近代日本をデザインした国際派武断官僚
土方歳三 徳川陸軍 最初で最後の近代歩兵戦指揮官

<次回>【幕末・維新を動かした真の主役たち 第6回】井伊直弼#1(記事版)

...