徳川政権末期の「徳川近代」という時代は、明治新政権が政治的に江戸時代を全否定することによって抹消されてしまった。
その影響は現代まで続いている。勝者である官軍によって歪められた歴史は、幕末を生きた偉人たちの存在を掻き消してしまった。
しかし、再来年の大河ドラマ「逆賊の幕臣」で、幕臣として近代化に尽力した小栗忠順が主人公になるなど、少しずつ歴史の見方も変わってきている。
本企画では、小栗忠順のみならず「幕末・維新を動かした真の主役たち」というべき人物に着目し、音声を中心に記事や動画などもまじえてお届けしていく。
第2回は阿部正弘#1
明治維新の前夜、日本の近代化の幕を開けた男
明治維新が日本の近代化の出発点であると考えられがちですが、その前段階として見落とされてきた重要な人物がいます。幕末の老中・阿部正弘です。本企画では幕末を動かした五人の重要人物を取り上げますが、その筆頭として阿部正弘を紹介します。
阿部正弘は、黒船来航という未曾有の危機に直面しながら、従来の幕府政治の枠にとらわれない意思決定を行いました。諸藩や有識者の意見を広く求める合議的な姿勢を取り、開国対応や軍制改革、人材登用を進めた点に、近代国家への転換の萌芽を見ることができます。日本の近代化は、明治維新によって突然始まったのではなく、阿部正弘の時代にすでに方向づけられていたと言えるでしょう。
それにもかかわらず、阿部正弘の名は歴史教科書では脇役として扱われがちです。その背景には、「幕府は停滞し、倒されるべき存在だった」という単純化された明治維新観があります。しかし実際には、幕府内部からも近代化を模索する動きは確かに存在していました。阿部正弘を起点に幕末史を捉え直すことは、明治維新の理解そのものを見直すことにつながります。
音声内容(再生時間:41分56秒)
- 日本の近代化の幕を開けたのは阿部正弘
- 異国船打払令を廃止し、国際協調路線へ転換させた
- 身分にとらわれず優秀な人材(川路聖謨、水野忠徳、岩瀬忠震など)を抜擢し、専門的なテクノクラ―ト(技術官僚)とジェネラリストを育成した
- 吉田松陰が高く評価されたのは昭和になってから
- 「坂本龍馬は教科書に載せなくていい」という答申がなぜ覆されたか……等
本企画では以下の5人の人物について論じていきます。歴史教科書で語られてきた従来の視点を覆す見方を皆様にご提示していきます。
阿部正弘 しれっと開国した徹底した改革派老中
井伊直弼 薩長討幕派がもっとも恐れた誇り高き保守文化人
小野友五郎 米軍士官が驚愕した天才科学官僚
小栗忠順 近代日本をデザインした国際派武断官僚
土方歳三 徳川陸軍 最初で最後の近代歩兵戦指揮官
<次回>【幕末・維新を動かした真の主役たち 第3回】阿部正弘 #2
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明治維新について語られる人物像の多くは、維新で勝った側の都合に沿って書かれてきた物語に依拠しており、公教育の教科書に至るまで、その影響が色濃く残っています。
本企画では「幕末・維新を動かした真の主役たち」に光を当て、音声を中心に、記事や動画などもまじえて配信していきます。
彼らがどのように生き、何を考え、どう行動したのか。そして、維新後に新政府は彼らをどう扱ったのか。人物の軌跡を丁寧にたどることで、従来のイメージとは異なる真実の明治維新」をお伝えします。
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