徳川政権末期の「徳川近代」という時代は、明治新政権が政治的に江戸時代を全否定することによって抹消されてしまった。
その影響は現代まで続いている。勝者である官軍によって歪められた歴史は、幕末を生きた偉人たちの存在を掻き消してしまった。
しかし、来年の大河ドラマ「逆賊の幕臣」で、幕臣として近代化に尽力した小栗忠順が主人公になるなど、少しずつ歴史の見方も変わってきている。
本企画では、小栗忠順のみならず「幕末・維新を動かした真の主役たち」というべき人物に着目し、音声を中心に記事や動画などもまじえてお届けしていく。
第4回は井伊直弼#1
誤解された大老・井伊直弼の実像
井伊直弼は、幕末史の中でも特に誤解されてきた人物です。一般には、勅許を得ずに日米修好通商条約を締結し、反対派を弾圧した「悪人」として教えられてきました。
しかし、当時の慣例法では、条約締結に勅許は不要であり、政治と外交は幕府に委ねる「大政委任の原則」が有効でした。勅許問題が争点化した背景には、ペリー来航時に阿部正弘が朝廷や世論を政治に関与させた先例と、倒幕派が天皇を政治的に利用した事情があります。井伊直弼は開国を主導した立場でもなく、桜田門外の変も正当化できるものではない暗殺でした。
さらに井伊は文化的教養に富み、藩政では民政を重視した為政者でもありました。彼の実像を見直すことは、誤った幕末史観そのものを問い直すことにつながります。
音声内容(再生時間:36分26秒)
- 井伊直弼ほど誤解されている人物は少ない
- 条約を締結するのに朝廷の許可が必要だったのか
- 天皇に実際の統治能力がないことは、吉田松陰や高杉晋作らも理解していた
- 「桜田門外の変」はただのテロ行為
- 「茶人として「一期一会」という言葉を四字熟語として広めた……等
本企画では以下の5人の人物について論じていきます。歴史教科書で語られてきた従来の視点を覆す見方を皆様にご提示していきます。
阿部正弘 しれっと開国した徹底した改革派老中
井伊直弼 薩長討幕派がもっとも恐れた誇り高き保守文化人
小野友五郎 米軍士官が驚愕した天才科学官僚
小栗忠順 近代日本をデザインした国際派武断官僚
土方歳三 徳川陸軍 最初で最後の近代歩兵戦指揮官
<次回>【幕末・維新を動かした真の主役たち 第5回】井伊直弼#5
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