徳川政権末期の「徳川近代」という時代は、明治新政権が政治的に江戸時代を全否定することによって抹消されてしまった。 その影響は現代まで続いている。勝者である官軍によって歪められた歴史は、幕末を生きた偉人たちの存在を掻き消してしまった。 しかし、再来年の大河ドラマ「逆賊の幕臣」で、幕臣として近代化に尽力した小栗忠順が主人公になるなど、少しずつ歴史の見方も変わってきている。 本企画では、小栗忠順のみならず「幕末・維新を動かした真の主役たち」というべき人物に着目し、音声を中心に記事や動画などもまじえてお届けしていく。 第3回は阿部正弘#2 徳川近代を切り開いた調整型政治家の功罪  阿部正弘は福山藩第7代藩主として江戸に生まれ、若くして家督を継ぎました。奏者番、寺社奉行を経て、25歳で老中に就任した人物です。奏者番として将軍への取次を担い、事実関係を重視した冷静な裁定によって信任を得ました。水野忠邦を退け老中首座に就いた後は、強権的な政治ではなく、意見調整を重んじる姿勢へと転じます。人の話をよく聞き、結論を急がない政治手法は賛否を呼びましたが、そのもとで...