「探球論」とともに進められた書籍プロジェクト。10月9日の配本(全国書店には10月14日から発売となる場合があります)を前に、完成した『人に学び、人に生かす。』の一部を紹介する。
プロローグ後編、「衝撃の人」。星野仙一との知られざるやり取り。
プロローグ「衝撃の人」2011年/楽天イーグル選手
そんな遠い関係は、突如として縮まることになる。
指導者2年目となる2013年。僕は一軍のコーチに就任することになったのだ。
もちろん、監督は星野さん。いわゆる「一軍の首脳陣」の仲間入りを果たすことになり、ミーティングや、試合後の食事などに同席することになる。そして印象は、どんどんと変わっていく。
なかでも、ユニフォームを着ていないときの星野さんの振る舞いには、正直、びっくりした。「冷たい人」だと思っていた名将は、選手、コーチだけでなくその家族やチームスタッフたちのことまで、とにかく目を配り、気を遣う。ときには家族の誕生日を覚えていてプレゼントを送る、シーズン終了後にチームスタッフに感謝の贈り物をする……。
「知らないところで、こんなに人のことを考えてくれているんや」
その姿を目の当たりにし、それまで僕の持っていた印象を疑うようになった。
「もしかしたら、星野さんって冷たい人なんかじゃないんちゃうか?」
「あのときは、ああすべきやと思った」
少し話が逸れるが、この本を読み進めてもらえれば、僕が気になったことは見過ごせない、年上、年下お構いなしに、その思いをぶつけてしまう、というシーンにたびたび出会うと思う。これは僕の性格である、ということを理解してほしい(笑)。
さて、その性格はあの星野さんに対しても同じだった。
初めての出会いからは想像できないくらい、星野さんとの距離は縮まっていた。きっかけは、おそらく2013年の試合でさせてもらったある進言だったと思っている。
その試合、星野さんはバントをするために代打を出そうとしていた。ただ、その選手はバントがうまくなかった。迷った末、思い切って星野さんに歩み寄った。
「バント...