写真:共同通信

 プロ野球はオフシーズンに。2025年シーズンの各賞受賞選手の発表などで賑わう。

 なかでも選手にとって最大の栄誉のひとつである「ベスト9」。今回は、1シーズン通して各球団の取材を続けた平石洋介が選ぶ「ベスト9」を発表します。

INDEX
1)近況

2)2025年プロ野球ベスト/セ・リーグ編
 ―投手(先発・中継ぎ・抑え)
 ―内野手
 ―外野手
3)2025年プロ野球ベスト/パ・リーグ編
 ―投手(先発・中継ぎ・抑え)
 ―内野手
 ―外野手
 ―DH

近況

 父の訃報に際し、多くの方に温かい言葉をいただきました。本当にありがとうございました。

 小学校を卒業してから実家を出た僕は、父と多くの時間を過ごせたわけではありませんでした。果たしてあの選択は良かったのか。自身も父親になり、ふと思うことがあります。

 父もさみしかったのではないか。もっと父親孝行ができたかもしれない。

 多少の悔いはあります。それもこれからに生かしていく。

 改めて、みなさんありがとうございました。

 ということで、今回は僕の選ぶ「ベスト9」。なかなか難しいお題でしたが、ぜひご覧ください。

この選手がすごかった

 11月26日にNPB AWARDS 2025が開催されました。セパ両リーグのタイトルホルダーをはじめ、記者投票によるMVPや新人王なども発表されました。

 シーズンを通して客観的にプロ野球を見させてもらった今年。「平石はどの選手が目についたのか?」そんな声をいくつかいただいたので、今回は僕の選ぶ「ベスト9」を考えてみたいと思います。

 まずは、NPBによる「ベスト9」です。

NPBベストナイン受賞選手

セ・リーグ

投手……村上頌樹(阪神)
捕手……坂本誠志郎(阪神)
一塁手……大山雄輔(阪神)
二塁手……中野拓夢(阪神)
三塁手……佐藤輝明(阪神)
遊撃手……泉口友汰(巨人)
外野手……森下翔太(阪神)、近本光司(阪神)、岡林勇希(中日)

パ・リーグ

投手……リバン・モイネロ(ソフトバンク)
捕手……若月健矢(オリックス)
一塁手……タイラー・ネビン(西武)
二塁手……牧原大成(ソフトバンク)
三塁手……村林一輝(楽天)
遊撃手……宗山塁(楽天)
外野手……柳町達(ソフトバンク)、中川圭太(オリックス)、周東佑京(ソフトバンク)
DH……フランミル・レイエス(日本ハム)

 本音で言えば、納得です(笑)。そのうえで、本来なら投手はひとりですが、セ・パともに先発、中継ぎ、抑えと3人を選出しています。

 実際の受賞選手と照らし合わせながら楽しんで読んでもらえると嬉しいです。

2025年プロ野球ベスト/セ・リーグ編

 早速、セ・リーグからスタートします。

■先発投手
村上頌樹(阪神)
26試合 14勝4敗 防御率2.10

 先発は村上選手と並び最多勝のDeNA・東克樹選手、最優秀防御率を獲得したチームメートの才木浩人選手との3人で悩みました。最終的な決め手は、最多勝、最多勝率、最多奪三振の「投手3冠」に輝いた圧倒的なパフォーマンスです。

 開幕投手を務め、年間通して安定感があった村上選手の特筆すべき点は、ゲームを作れるところにあります。ソフトバンクとの日本シリーズ第1戦を挙げれば、1回の立ち上がりは不安定で失点しながらも、2回、3回と徐々に修正し、7回1失点で勝利投手になった。このように、大崩れしないからこそ高い数字を残せるのだとつくづく感じました。

■中継ぎ
石井大智(阪神)
53試合 1勝0敗37HP9セーブ 防御率0.17

 最優秀中継ぎのタイトルこそ巨人の大勢選手に譲りましたが、数字、パフォーマンスともに石井選手が群を抜いていました。開幕間もない4月4日の巨人戦で1点を奪われて以降、50試合連続無失点は圧巻です。

 この成績を支えたのは、ホップ成分が高く、コントロールにも優れたストレートです。そこにスライダーや左バッターの外側へと落ちるシンカーと、変化球の精度もよかった。僕としては文句なしの選出です。

■抑え
松山晋也(中日)
53試合 0勝1敗5HP46セーブ 防御率1.54

 成績では、同じくセーブ王のタイトルを獲得した巨人のライデル・マルティネス選手が若干、上回っています。ですが、前年までチームの守護神を務めていた彼の穴を埋めた松山選手を大きく評価しています。なにより、夏場に上肢のコンディション不良で1か月ほど離脱しながら、クローザー1年目で46セーブはお見事と言えるでしょう。

 松山選手の魅力は、投げっぷりのよさにあると思っています。真っすぐに力があり、フォークの落差もあるため、バッター目線では相当な圧力を受けているはずです。

■捕手
坂本誠志郎(阪神)
117試合2本塁打27打点 打率.247

 キャッチャーについては「打てるキャッチャー」のDeNA・山本祐大選手にずと注目をしています。またヤクルトの古賀優大選手も87試合の出場ながら、5割の盗塁阻止率は脅威でした。

 とはいえ……、やはり厚みのある投手陣をしっかりリードし、阪神のリーグ優勝に貢献した坂本選手を選ぶべきだと思います。盗塁阻止率も.309と及第点、ディフェンス面のイメージが強いかもしれない坂本選手ですが、バッティングも実にクレバーです。

 試合状況や配球を考え、ときにはヤマを張るなど、その思考力を打席で発揮していましたが、これはキャッチャーとはいえ誰でもできることではありません。攻守で自分の役割を全うしたことは賞賛に値します。

■一塁手
大山雄輔(阪神)
141試合 13本塁打75打点 打率.264

 リーグ3位の75打点をマークした大山選手の一択ではないでしょうか。交流戦がスタートするまでは打率が.250を切るなど、いまいち波に乗り切れていない印象でしたが、そこからの巻き返した点はさすがでした。

 大山選手には長打のイメージがありますが、進塁打を打つなど状況に応じたバッティングができる。数字には残らない仕事もできる黒子のバッターが5番に座っていたことも、阪神のクリーンアップにより一層の強みをもたらしたのは間違いありませんでした。

■二塁手
中野拓夢(阪神)
143試合 0本塁打30打点 打率.282

 現在のセ・リーグでセカンドの大本命は牧秀悟選手でしょう。今シーズンはコンディション不良に悩まされましたが入団以来5年連続で二桁ホームランを打つなどその実力は健在です。

 その牧を抑えてでも推したいのが中野選手です。1番バッターの近本選手との「1、2番コンビ」は球界に定着した印象です。

 2番の中野選手はリーグトップの44犠打を象徴するように繋ぎの役のイメージが強かったですが、ただ繋ぐだけでなく「チームの中における自分の役割に徹して」いました。

 初球から打ちに行けない、進塁打を打たなければいけない、といった制約もあったと思いますが、その中で.282という打率を残したことは、素晴らしい。追い込まれてからのしつこい打撃、試合状況や配球に応じた思考力は、ベスト9に値するものでした。

 また19盗塁が物語るように、出塁すれば果敢に走るといった姿勢も魅力です。そして、143試合にフル出場しエラーがわずか2だった守備力も欠かすことのできない強みでした。

■三塁手
佐藤輝明(阪神)
139試合 40本塁打120打点 打率.277

 本塁打と打点の二冠王、リーグMVP。課題と言われていた守備も今シーズンは6個のエラーに止め成長していますが、なんといっても突出していたのがバッティングでした。

 これはあくまでも私見ですが、今シーズンの佐藤選手はタイミングの取り方を変えたように思います。

 入団1、2年目あたりまでは、右足を早めにやや高めに上げてタイミングを取り、トップの位置から一気にバットを振っていくスタイルでした。もちろんそれで結果を残してきたわけですが、課題としては、体が早く開いてバットがなかなか出てこないことで、インコースや速い球に詰まってしまう、といったことがありました。

 そんな中で今年は、...