元『週刊ゴング編集長』小佐野景浩氏が、かつての取材資料や関係者へのインタビューをもとに、伝説のプロレスラー・ジャンボ鶴田の強さと権力に背を向けた人間像に踏み込んだ588頁にもおよぶ大作『永遠の最強王者 ジャンボ鶴田』。

本連載では、刊行以来大反響を呼んだこの1冊に、新たな取材、証言を盛り込み改めてジャンボ鶴田の人物像に迫る。

今回は全日本プロレスVSジャパン・プロレスの戦いの中でみせた鶴田の存在感。対戦したアニマル浜口が語るジャンボ鶴田の強さとは。

Index
・鶴田を長州より格上とした全日本プロレス
・攻めるジャパンと防戦一方の全日本というイメージの中で

鶴田を長州より格上とした全日本プロレス

 1985年に全日本プロレスはターニング・ポイントを迎える。それまでの全日本はジャイアント馬場の人脈でアメリカから超一流選手を招聘して力道山以来の日本人vs外国人という日本のプロレスの伝統的な図式を継承していたが、新日本プロレスのように日本人対決にシフトした。きっかけは前年84年6月に興行面のテコ入れのために新日本プロレス興行と業務提携したことだった。

 新日本プロレス興行は前年夏の新日本プロレスの社内クーデターによって退社を決意した元営業本部長の大塚直樹氏以下、新日本の黄金時代に貢献した精鋭営業部員たちが設立した興行会社。当初は新日本の兄弟会社として古巣・新日本の興行を請け負っていたが「純粋な興行会社ならば、ウチの興行も手掛けてみないか?」とジャイアント馬場が声をかけたのである。

 この業務提携に新日本は態度を硬化させて、8月に新日本プロレス興行に契約解除を一方的に通知。大塚社長は「これからは業務提携している全日本さんの興行がさらに盛り上がるために新日本の選手を引き抜きます」と宣言したのだ。...