夫婦カウンセラーとしてこれまで4000組以上の夫婦をサポートし、著書『夫は、妻は、わかってない。夫婦リカバリーの作法』でも注目を集める安東秀海先生が、読者の皆様から寄せられた夫婦関係のお悩みにお答えする「夫婦リカバリー相談室」。
シリーズ「夫婦健康診断」では、夫婦問題の予防や早期発見のために必要な向き合い方や考え方を安東先生が紹介・解説。
夫婦喧嘩でつい口にしてしまう言葉が、相手を傷つける「批判」になってしまうことがあります。ただ不満を伝えたいだけなのに、なぜか夫婦関係がこじれてしまう理由についてお届けします。(第1回)
不満はOK! 批判はNG!
どうして批判は夫婦の関係を傷つけてしまうのか
「靴下脱ぎっぱなしにしないでって、何回言ったらわかるの?」
「そっちこそ一日中家にいて、何でこんなに片付いてないわけ?」
きっかけは思い出せないくらい日常的で些細なことだったはずなのに、ひとたびヒートアップすると、お互いを傷つける言葉を投げ合ってしまう。
コミュニケーションが大切だと頭ではわかっていても、きっかけも定かではない喧嘩を繰り返してしまうと、会話そのものが怖くなってコミュニケーションを避けてしまうのも無理はありません。
実際の夫婦カウンセリングでも、コミュニケーションの機能不全は不貞や不倫の相談と並んで全体の半数近くを占めています。
今回は、夫婦の関係を静かに傷つけていくコミュニケーションの罠について、全3回にわたって考えていきたいと思います。
「不満」と「批判」を分けるのは、相手の「行動」か「人となり」か
思い返しても、なぜあそこまで険悪になってしまったのか理由すらわからない。そんな些細なすれ違いが、どうしてこれほどまでにお互いを深く傷つける事態へと発展してしまうのでしょうか。
そのメカニズムを解き明かす上で手がかりになるのが、夫婦関係研究の第一人者として知られるアメリカの心理学者、ジョン・ゴットマン博士の理論です。
ゴットマン博士は長年にわたる膨大な研究を通して、夫婦関係を破局へと導く危険な会話パターンを特定しました。それが「侮辱と軽蔑」「防衛」「拒絶と逃避」、そして今回取り上げる「批判」です。
この4つがふたりの会話に現れ始めると、関係が修復困難なレベルへ傾くリスクが急激に跳ね上がると言われています。そして、なかでも、すべての起点となるのが「批判」です。
博士によれば、私たちが日常的に口にしている「不満」と、関係を壊す「批判」は、似ているようで全く別のものです。その決定的な違いは、「行動の指摘」にとどまっているか、それとも「人となりの評価」にまで踏み込んでいるかという点にあります。
「靴下を脱ぎっぱなしにされるのは困る」というように、具体的な相手の行動についての話にとどまるのが「不満」。
一方で、「あなたはどうしていつもそれができないの?」「本当にだらしない」というように、相手の人となりそのものへの評価にまで踏み込んでしまうのが「批判」です。
ただ改善してほしい出来事についてリクエストをしただけのつもりなのに、なぜか喧嘩にまで発展してしまう。そんな時には、知らず知らずのうちに「批判」がふたりの会話に入り込んでしまっているのかもしれません。
ではなぜ「そんなつもりじゃなかった」のに、批判に聞こえてしまうのでしょう?
そこには無意識に使ってしまいがちな3つの会話パターンが潜んでいるのかもしれません。
①「いつも」「絶対」「一度も」といった過度な一般化
「どうしてあなたはいつも脱ぎっぱなしなの?」
「一度も自分から動いたことないよね」
目の前の出来事に対して、「過去も未来も含めてすべてそうである」かのように一般化して伝えると、相手は行動ではなく性格や自分そのものを全否定されたと感じてしまいます。
②「あなた」を主語にした会話...