脱いでも稼げない「裸のデフレ」の時代、コロナ禍がその状況に拍車をかけた。夜職で働く女性たちが収入を失い、困窮化。性風俗産業は女性の貧困とからめて取り上げられるようになった。
その一方で、稼げる女性と、そうでない女性が二極化しているともいわれている。ではその背景には何があるのか。社会全体で格差が拡大するなか、性の世界にもその影響はあるのか。
今回はこれまでのおこなった風俗の世界で働く女性たちへのインタビューをもとに、格差が生じる要因を分析する。
格差のマトリックス
ここまでインタビューしてきた7名の女性たちの語りを基に、令和の現代を生きる風俗嬢の経済格差の要因、及びその背景にある課題を整理していきたい。
彼女たちに経済的格差をもたらす要因になっているものは、2つある。
1つ目は「集客のスタイル」である。風俗の仕事における集客スタイルは、大きく分けて「個人の力で集客する」スタイルと、「店舗の力で集客する」スタイルがある。
前者は、SNSによる発信、接客技術の向上によるリピート獲得などで、女性個人のファン、すなわち「嬢推し」のお客を集めるスタイルである。後者は、店舗のコンセプトを明確化し、広告宣伝を通して店舗全体のファン、すなわち「箱推し」のお客を集めるスタイルである。
2つ目は「仕事へのスタンス」である。風俗の仕事への関わり方は、大きく分けて「主体的に関わる」スタンスと「受動的に関わる」スタンスがある。前者は、自分の意思でこの仕事を選び、明確な目標を持って働いている状態を指す。後者は、明確な目標を持たず、その日の気分やその場の空気に流されるまま働いている状態を指す。
風俗の仕事における収入の格差は、集客のスタイル(個人ベースか店舗ベースか)と、仕事のスタンス(主体的か受動的か)の掛け合わせによって決まる。4象限のマトリックスで整理してみよう。

以下、この縦軸と横軸によって切り分けた4つのゾーンをそれぞれ分析していく。
Aゾーン:主体的 ✕ 店舗ベース……「普通こそ正義」
集客力の高い店舗に在籍して高収入を稼ぐことができている女性たちのゾーン。瑠衣さん、真波さんが該当する。
既存の会員(利用客)を豊富に有している大手グループの運営するヘルス・風俗エステ・デリヘルなどに在籍して働いているケースが多く、女性個人がSNSなどで発信・集客する必要性は低い。
集客力の高い店舗では、人気のある女性は、シフトを提出すればすぐに予約で埋まる。接客以外の雑務(写メ日記やSNSの投稿、姫予約への返信など)に時間を取られずに、目の前のお客への接客に集中することができる。そのためさらに売上を立てやすくなる、という好循環のサイクルを回せるようになる。
このゾーンで働くための条件は、2つある。1つ目は「平均以上のスペックを持っていること」だ。
集客力の高い店舗や大手グループに採用されるためには、一定の見た目や体型、年齢、社会常識、コミュニケーション能力などの条件が求められる。
とはいえ、誰もが振り返る芸能人のような見た目や、モデルのような体型の持ち主である必要はない。平均的な見た目と健康的な体型を維持しており、接客業として普通に初対面のお客と会話ができるだけのコミュニケーション能力があれば、面接を通る可能性は高い。
一方で、風俗の世界においては、この「普通」こそが最も得難い条件になることがしばしばある。誰もがこのゾーンで働けるわけではない理由の一つは、それだけ風俗の世界で「普通であること」が希少価値になっているからであろう。...
