脱いでも稼げない「裸のデフレ」の時代、コロナ禍がその状況に拍車をかけた。夜職で働く女性たちが収入を失い、困窮化。性風俗産業は女性の貧困とからめて取り上げられるようになった。
その一方で、稼げる女性と、そうでない女性が二極化しているともいわれている。ではその背景には何があるのか。社会全体で格差が拡大するなか、性の世界にもその影響はあるのか。
本企画では、風俗の世界で働く女性たちへのインタビューを行っていく。記事だけでなく、動画、音声、LIVEなどのイベントを通して、格差が生じる要因を探る。今回は、石川真波さん(仮名)#1
「どうせやるなら、手に残るものがほしい」
石川真波さん(仮名・36歳)は、28歳から現在に至るまで、都内の風俗エステで働いている。いわゆる「回春マッサージ」と呼ばれる業種で、男性客にアロマオイルを使ったマッサージを提供した後にハンドサービスで射精に導く、という内容の仕事だ。
「この仕事を始めて、もう8年以上になります。今ではこの仕事がほぼ本業のような位置づけになっていますが、最初からここにたどり着こうと思っていたわけではありません。
もともと私は、飲み屋などのナイトワークを長くやってきました。大学を出た後は、大学院に進学して、民俗学の研究をしながら、塾講師などの仕事とナイトワークを並行して生活していました。
いったんナイトワークをやめて、「やっと卒業できた」と思ったこともありました。でも、昼の仕事がしんどくなってしまって、心の調子を崩してしまったんです。
「また飲み屋に戻ろうかな」と思ったこともありました。でも、そのときは大勢の人と接すること自体がつらくなっていて。接客は嫌いじゃないはずなのに、身体と心が追いつかない。そんな状態でした」
飲み屋の仕事自体は、決して嫌いではなかった。しかし、ふと「このまま接客の仕事を続けて、自分に何が残るんだろう?」という疑問が湧いてきた。
「接客スキルは身についているはずだけど、客観的に説明できる専門性や技術があるかと言われると、正直自信がなかったんです。
どうせなら、技術として残る仕事をやってみたい。そう思ったのがエステの仕事に興味を持ったきっかけでした。奨学金の返済や生活費のために借りたお金の支払いがあることも、この仕事を選ぶ動機になりました。後から知ったのですが、今働いているお店の地域は、私と同じような経歴の女性が多い地域でもあったみたいです」...
