脱いでも稼げない「裸のデフレ」の時代、コロナ禍がその状況に拍車をかけた。夜職で働く女性たちが収入を失い、困窮化。性風俗産業は女性の貧困とからめて取り上げられるようになった。
その一方で、稼げる女性と、そうでない女性が二極化しているともいわれている。ではその背景には何があるのか。社会全体で格差が拡大するなか、性の世界にもその影響はあるのか。
本企画では、風俗の世界で働く女性たちへのインタビューを行っていく。記事だけでなく、動画、音声、LIVEなどのイベントを通して、格差が生じる要因を探る。今回は、西川陽子さん(仮名)#2
地方で見つけた居場所
スカウトの紹介で、地方への出稼ぎを決意した陽子さん。最初は名古屋の箱ヘルで働いたが、客層が合わなかった。
「その後に紹介されたのが、ある地方都市のお店でした。そのお店は在籍している女性の年齢層が幅広く、女の子同士の競争も激しくありませんでした。写メ日記をちょっと投稿するだけで目立つことができる。客層も穏やかで、自分に合ったお店でした。初めて「ここなら働ける」と感じることができて、それから定期的に出稼ぎに来るようになりました。
地方都市の良さを感じて、特に東京にこだわる理由もないので、地方でのんびり暮らしてみたい、と思うようになりました。そう思って移住先を探していたときに、現在住んでいる市のことをSNSで知りました。山も海もあり、美しい自然に囲まれている場所で、ここに住んでみたい、と思いました。観光施設の運営で興味を持てる求人があったので、応募しました」
陽子さんはその市に移住し、観光施設のスタッフとして、役所や地元の人たちと一緒に様々な仕事をするようになった。
「でも、その仕事は1年で辞めることになります。施設の中での自分の役割がはっきりしないまま仕事をすることになり、うまく成果を出すことができませんでした。仕事の自由度が思ったより少なかったこともストレスになりました。ただ、そのときの経験が無駄だったとは思っていません」
地方での働き方を変えた時期
陽子さんが「経験が無駄ではなかった」と語る理由は、個人で発信を続けていた日記とSNSが伸び、多くの人に読んでもらえるようになったからだ。
「発信をきっかけに、取材依頼や仕事の相談もくるようになりました。知り合いも増えました」
観光施設のスタッフをやめた後、陽子さんはそのまま同じ市で事業を始めた。
「知人の紹介で賃貸物件を借りて、事業を始めました。SNSでの発信も行っています。私が田舎暮らしを楽しんでいる様子を見て、喜んでくれる人がいる。だからこそ、過去の割り切りや風俗の話は、ずっと封印するつもりでいました。公にしてしまったら、今の生活が壊れてしまうかもしれないから。それでも最近は「あの経験も今につながっているんだな」と思えるようになりました」
ウェブマーケティングの基本は写メ日記にあり
陽子さんがSNSでフォロワーを集めることができたのは、偶然ではない。移住する前から、海外での体験や交際クラブでの体験などをブログで発信していたのだ。
「愛人関係や不倫、夜の仕事など、表に出しにくい話を書く人の多いブログサービスで、匿名で体験談を書いていました。そんな体験を書いたブログがランキング1位になったりして、「自分の文章って読まれる価値があるんだ」と初めて感じたんです。今Xやnoteで発信している原点は、このときの体験だと思います。
今になって改めて、「夜職の経験って、マーケティングの基礎だったんだな」と感じています。風俗の写メ日記って、どう書いたらお客さんが来てくれるか、どんな言葉なら興味を持ってもらえるか、毎日試行錯誤するんです。それってまさにマーケティングなんですよね。だから今、SNSで事業の集客をするときも、写メ日記の経験がすごく役に立っています」
事業と風俗の違い
地元で事業をやっていると、お客さんからよく感謝の言葉を頂く。しかし、陽子さんとしては、事業でお客さんからもらう感謝の言葉と、割り切りや風俗で男性からもらう感謝の言葉との間には、明確な違いがあるという。
「風俗のお客さんからの感謝の言葉は、自分という存在そのものを肯定されている感じがするんです。どうしてこんな違いがあるんだろうと思って、ChatGPTに相談したこともあります(笑)。...
