北中米ワールドカップ開幕まで10日を切った。「歴代最強」と呼ばれたサッカー日本代表はどこまで勝ち進めるのか?
日本代表史上初のベスト8超えに必要なことは何か――4年間、多くの識者とともにディスカッションをし、そのポイントを指摘してきた。果たして現日本代表はそのポイントをクリアできたのか? 改めて議論を振り返る。
日本代表歴代3位の50得点、ブンデスリーガ2年連続2桁得点を記録するなど日本屈指の実績を残した岡崎慎司と、ドルトムントやマンチェスター・ユナイテッドで世界トップのストライカーとプレーしてきた香川真司が語る「世界基準のストライカー」とは?
ドルトムント時代にチームメイトだった、グループリーグ第3戦で対戦するスウェーデン代表・イサク。香川真司からみた17歳のイサクの才能とは?
香川真司が出会った最も凄いストライカーは?
──欧州トップスコアラーたちを見ると、身長185cm以上でサイズとフィジカルに恵まれた選手が目立ちます。やはりFWにとって「サイズ感」は重要なのでしょうか。
香川:もちろん重要です。昔は体の大きな選手は足元の技術やスピードに欠ける傾向がありました。
でも今は、ハーランドやイサクのように、圧倒的なサイズがありながら、足元の技術があって、なおかつスピードもある選手が増えています。体格的に恵まれていて速い選手は、やはり大きな脅威になりますね。
香川:ただ日本でそういう規格外の選手が現れるかというと、また別問題ですよね。
岡崎慎司(以下、岡崎):ドルトムント時代に当時17歳のイサクを見たときはどう思っていた?
サイズは大きいけど、ポストプレーをやるタイプではなかったね。
オープンに裏のスペース流れたり、開いてボールを受けたりとか、そういうプレーが多かった印象だね。
岡崎:真司の中で、サイズだけじゃなく、動き出しやパスの出しやすさみたいなところも含めて、一番評価が高い選手は誰?
香川:それはチチャリート(ハビエル・エルナンデス)。
岡ちゃんに近いかもしれないけど、常に動き直して、良い状態でゴールと線を結びつきながら、ボールを受ける準備をしている、ストライカーらしいストライカー。
あとはレヴァンドフスキかな。
レヴァンドフスキの進化に見る「エゴ」と「万能性」
香川:レヴァンドフスキの場合はずっとゴール前に居続けて、ポジショニングという意味では、無駄な動きをしなかったですね。その分、僕が動いていました。
当時のドルトムントにはルーカス・バリオスもいたんだけど、彼のほうがオープンな動きをするイメージ。
岡崎:今のレヴァンドフスキは万能なイメージだけど真司と一緒にプレーしていた当時からそうだった?
香川:いや、僕がマンチェスター・ユナイテッドに行って、その後ドルトムントに復帰して、バイエルンに移籍していた彼と久しぶりに対戦したとき、「こんなにポストプレーが上手かったかな?」と驚きました。
ドルトムント時代は、そこまでボールが収まるイメージのプレーヤーではなかったんです。バイエルンに行ってから、本当に良い万能型へと進化したんだと思います。
岡崎:僕もドルトムント時代のレヴァンドフスキと戦った時の印象はエゴイスト。
だけど生き残っていくために周りを活かすプレーも身につけていったのかなと思うと、彼のような「無駄な動きをしない」ストライカーでも、今のような万能型のプレーができるようになるというのは発見でしたね。
プレミアリーグに行ったらどうなっていたのかというのも気になります。
香川真司が求めるのは「ゴールしか見ていないFW」
──もし香川さんが監督、あるいはトップ下でプレーするとしたら、どういうタイプのFWが欲しいですか?
香川:純粋な「ストライカー型」ですね。
仲間を活かすことよりも、自分がゴールを取るというメンタリティを持った選手。
ゴールしか見ていないストライカーが、僕が監督なら絶対に欲しいです。ただ、そういう選手が今の日本から生まれてくるかと言われると、現状はクエスチョンマークがつきます。
岡崎:今の真司の話を聞いて思い出したことがあります。
僕が日本代表でワントップに入り、真司がトップ下をやっていた時のことです。
当時の僕はレスターでの役割もあって、セカンドストライカーのようにボランチやトップ下を助けようとプレスバックして守備に走っていました。
でも真司は、「もっとFWとして前線に残っていていいよ」と、僕に純粋なワントップとしての振る舞いを求めていたんですよね。
香川:そうでしたね。岡ちゃんは守備からトランジション(攻守の切り替え)で前線に出て行くのが得意でしたし、レスターの戦術としてもそれが身についていたと思います。
ただ、あの時はもう少し前で構えていてほしかった部分はありました。
日本人FWのジレンマ「守備を頑張りすぎてしまう」
──日本では「守備を頑張るFW」が好まれ、援護される文化が根強いですよね。
岡崎:チームのために守備のスイッチを入れるのは大事ですが、世界トップレベルの点取り屋たちは「守備を頑張って試合に出よう」なんて1ミリも思っていないはずです。
「俺が点を取るから、お前らなんで付いてこないんや」くらいの感覚を持っています。
もちろん、センターバックと駆け引きし続けながら、最低限のコース限定などストライカーとしての守備のやり方はありますが、深く戻って守備をするのは中盤に任せています。
香川:本当にその通りです。僕もセレッソでFWの選手たちと話す時、「そこまで守備をしなくていいから、もっと点を取るためにパワーを残してほしい。常に前線で元気でいてほしい」と伝えています。
もちろん監督の戦術としてやらなければいけない部分もありますが、日本人は「みんなで頑張って守りましょう」という文化が強いので、そこのバランスは非常に難しいですね。
岡崎:僕自身、監督をやっていく中で、FWの選手が真ん中にいてほしいのに、色々なところに動いてしまうのを見ると「こいつ本当に点を取りたいのか?」と思ってしまうことがあります。
プロの世界で点を取るのはさらに難しくなりますから、この「ゴールへの執着心」や「マインドセット」をどう教え、どこまで伸ばせるのか。今はそこですごく悩んでいますし、面白い部分でもありますね。
ただ監督としては、「守備」もしてほしいんですけどね(笑)
(本稿は2025年7月配信【岡崎慎司×香川真司】FWの世界基準を語り尽くす「ストライカーは才能か?育成か?」を一部を抜粋し再構成した)
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