結婚生活の中で積もり積もった不満や違和感。もう離婚しかないと思うほどの不仲やトラブル。
さまざまな夫婦の在り方があるからこそ、ふたりの間だけで解決できない悩みや問題を抱える人も少なくないでしょう。
夫婦カウンセラーとしてこれまで4000組以上の夫婦をサポートし、著書『夫は、妻は、わかってない。夫婦リカバリーの作法』でも注目を集める安東秀海先生が、読者の皆様から寄せられた夫婦関係のお悩みにお答えします。
今回は、夫の不倫のご相談です。昨年2月に夫の浮気が発覚。一度は別れると約束したものの別れておらず、現在は別居生活に。うつ病を患うまでになってしまったそう。夫は「離婚はしない」と言うものの、果たして元の生活に戻りたいのかと悩む妻。どうしたらいいのでしょうか。
ミヨさん(仮名)からのご相談
夫婦共に44歳で、結婚14年目、中学の男の子がいます。
昨年のバレンタインに夫の浮気が発覚しました。カバンから見知らぬ高級チョコレート、問いただすとすんなり認め、開き直り、離婚するかこの不倫関係を認めてくれと言われました。
夫とは恋愛結婚で、仲も良く性生活もわりとある方でした。しかし40歳を過ぎたころから、私の身体の問題でできないことが増えました。一昨年、夫の外出が増えたのを不信に思っていましたが、まさかという想いで、大ショックでした。夜眠れなくなり体重も減りました。
当時、私はパートで働いていましたが、職場の人間関係に悩んでいたため、これ以上辛い思いをしたくなくて辞めてしまいました。夫はいったんは不倫相手と別れると約束したものの、5月になっても別れていないことが発覚。再び嘘をつかれたことがトラウマになっています。
そして現在、夫とは別居していて、週末に夫が家に帰ってきます。子どもには事実は話していません。夫が浮気したことは私の両親、義母、義弟も知っています。夫はそのことに居た堪れなくなったのと、私が心療内科でうつと診断され暗くなってしまったことで、家に帰りたくなくなったためです。こんな理由で離れ離れに暮らすのが私は嫌です。ですが、夫は通勤もしやすい別宅が居心地がよいようです。私と距離を取りたいようです。
その一方でもう二度と浮気はしない、離婚はしないと言っています。信じようにも信じきれない私がいます。そもそも、夫は自由でいたい人、束縛が嫌な人です。考え方が私と根本的に違う人です。私も子どものことを考えると離婚はしたくありませんが、この先を考えると、こんな自分中心の人と本当に元通り一緒に暮らしたいのか分からなくなってしまいます。苦しくてしかたありません。
(妻・ミヨ、夫・ケンタ)
※頂いたご相談に編集を加えております。ご了承ください。
失われたのは「彼の愛」ではなく「彼を愛せる自分」
バレンタインに夫の不倫が発覚したという、ミヨさん。発覚のタイミング、その後の経緯から考えても、心が削られるような日々を送られてきたことと思います。
お子さんのためにも関係修復を、と願う一方で「こんな自分勝手な人と、本当に元通り暮らしたいのだろうか?」と自分の気持ちが分からなくなるのも無理はないと思います。
でも、今ここでミヨさんが抱えている「迷い」と「葛藤」こそが、これから自分を取り戻すうえで必要なステップなのかもしれません。今回は、夫の不倫と向き合うミヨさんの取り組みについて考えてみたいと思います。
「彼の責任」を追いかけない
まず初めにお伝えしておきたいのですが、ミヨさんは夫の不倫に関して、自分を責める必要は何もありません。
こんなことがあるとどうしても、「彼を束縛したから」「求めに応えられなかったから」「笑顔でいられなかったから」と、自分自身を責めてしまう気持ちが生じやすいものです。けれど、明確にしておかなければならないのは、彼がしたことの責任は100パーセント彼にあるということです。
不適切な関係を持ったことも、ミヨさんを傷つける嘘をついたことも、すべては夫・ケンタさんの選択であり、決してミヨさんの至らなさのせいではありません。
問題と向き合う上でもっとも大切なことは、それが誰の責任によるものかを明確にすることです。
自分が担うべき責任と相手の責任とをきちんと区別できていなければ、ミヨさんが背負う必要のない問題にまで苦しむことになってしまいます。ミヨさんが取り組むべきは、第一にご自身の心のケアであって、「不倫の理由」も「彼が別居を続けていること」も、ミヨさんが背負うものではありません。
「自由でいたい人」という言葉の裏側にあるもの
「彼の責任」は彼に任せて、ミヨさんにはまず傷ついた心のケアに時間をかけてもらいたいのですが、ここで重要なのが「自分の優先順位を上げること」です。ミヨさんは、ご自身のことをいつも後回しにする傾向があるのでは、と心配しています。
ミヨさんは、ケンタさんを「自由でいたい人」と言います。でも、誰だって自由がいいし、誰かに制限などされたくないものです。その言葉の背景には、ミヨさんの献身的な関わり方が隠れているように思えます。子どものため、家庭のためと、ミヨさんは自分のことを二の次にしてはいないでしょうか?
もし心当たりがあるなら、この時期くらいはミヨさん自身の優先度を上げてください。今晩の献立をミヨさんの食べたいものを軸に考える、彼に子どもを任せて出かけてみる。そんな小さな「自分を優先する練習」が、傷ついた心のケアにもつながります。
「過去の出来事」と「現在も残る課題」を切り分ける
感情に「時間軸」はありません。それがたとえ過去の出来事であっても、思い出して辛いのは「今、この瞬間」の痛みです。だからこそ、傷ついた心のケアが欠かせません。
ただ、矛盾するように聞こえるかもしれませんが、この苦しみを乗り越えていくためには、問題をあえて「過去」と「現在」の時間軸に切り分けて捉え直してみることも重要です。
ケンタさんの不適切な行動は、事実として整理すればすでに「過去の出来事」です。そして今、彼は「二度と浮気はしない」「離婚はしない」という選択を示しています。その言葉を信じるならば、不倫という関係自体は過去のものとなり、今なお残っているのは、未だ癒えない心の痛みと傷ついた信頼関係という、現在進行形の課題です。
心の痛みはミヨさんが時間をかけて癒していくもの。そして信頼関係の回復は、ケンタさんが主体となって努めるべきものです。過去の出来事に今のミヨさんを支配させないよう、これらを明確に切り分けておくことが大切です。
彼は愛を失ったのではなく、立ち往生している
ここでひとつ、心に留めておいていただきたいことがあります。それは、ケンタさんの愛が消えてしまったわけではないということです。
もし彼の中にもう愛が残っていないのであれば、すべての責任を捨てて離婚を選んでいるはずです。彼が今、別宅に身を寄せているのは、確かに無責任で心地よさに逃げている側面もありますが、それ以上に彼自身の心が「罪悪感」に耐えきれなくなっているのではないでしょうか。
今の彼から愛を感じられないのは、彼自身が自分の罪悪感や失敗感に圧倒されて、優しさを表現する心の余裕を失っているから。彼は今、ミヨさんへの気持ち以前に、自分自身の不始末の重さに立ち往生して、身動きが取れない状態に陥っているのかもしれません。
失われたのは「彼を愛する自分」
信じられないかもしれませんが、ミヨさんは決して彼からの愛を失ってはいません。では、今ある喪失感の正体は何でしょう。
それは「彼への信頼」、そして「彼を愛するミヨさん自身の気持ち」なのではないでしょうか。
大切な人を大切に思えることは大きな喜びです。ところが、裏切られた痛みが邪魔をして、大好きだった彼を愛せなくなってしまった。その「愛する力」が失われたと感じることが、ミヨさんが抱いている喪失感と痛みの正体なのだと思うのです。
懸命に愛してきた、だからこそ、愛せなくなった今の状態が苦しい。でも、今はまだ彼を愛せなくても大丈夫です。信頼の回復は、それを傷つけたケンタさんの責任。彼をもう一度愛することができるように、ミヨさんはもっと時間をかけていいのです。
今日から始める「自分自身への愛」
もう一度、愛する力を取り戻すために、ミヨさんの取り組みは、まずミヨさん自身を愛してあげることから始まります。具体的な方法をいくつかご提案します。
・「愛」をチャージする
お子さんの笑顔、友人の言葉、好きな音楽。枯渇した心のコップに、外から「安心」を注いでもらいましょう。
・自分軸で選ぶ
「誰がどう思うか」ではなく「ミヨさんがどうしたいか」を小さなことから決めてみてください。今日のお茶は何を飲むか、そんな問いかけから始めます。
・期限を決めない
「いつまでに元気にならなければ」と焦る必要はありません。ゆっくりでも停滞しているようでも、そのペースを大切にしてください。
彼が「愛されるに足る夫」に戻るかどうかは、これからの彼の努力次第。それは彼の課題であり、ミヨさんが背負うものではありません。
「こんな人と本当に一緒にいたいのか?」という疑問は、ミヨさんが自分を大切にしたいと願い始めた兆しでもあります。今は傷ついた心を休ませ、ケンタさんの行動をゆっくり見守ってみてはいかがでしょうか。その先に、新しい関係を築くのか、別の道を選ぶのかという答えが、自然と見えてくるはずです。
次の一歩として:
もし、お二人だけでは方向性を定めることが難しかったり、どうしても過去の痛みが消えなかったりする際には、あらためてカウンセリングの利用も検討してみてください。
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