夫婦喧嘩となる原因は、日々の生活にあふれる「些細な出来事」から「不倫やセックスレス」などの生々しい問題まで多岐にわたります。
その背景には「態度や言葉遣いといったコミュニケーション」「価値観の違い」「感情のわだかまり」が大きく潜んでいます。これらに加え、「発達障害(ASD・ADHD)」が直接的な原因としてあったとしたらどうでしょうか?
『夫婦リカバリー相談室』では、発達障害のパートナーに持つ夫婦をサポートする新コーナー「発達障害の夫婦ハック」を開始。
夫婦コミュニケーションや家庭運営における発達障害にまつわる悩みや疑問、問題の捉え方、適切なアプローチ、関係改善に役立つ知識を夫婦関係専門カウンセラーの安東美紀子先生がお答えしていきます。
※2022年に発効された世界保健機関(WHO)の疾病国際分類ICD-11では、発達障害は「神経発達症」と表記されます。「障害」という言葉が与えうるデメリット等を考慮して日本でも神経発達症とする流れになりつつありますが、お困りごとを抱えているご夫婦に届きやすいように、本稿では当面「発達障害」として解説します。
そこで今回は「発達障害と夫婦不和」について、安東先生にお話伺います。

人気連載「夫婦リカバリー相談室」でおなじみ、夫の安東秀海さんとともに、カウンセリングオフィス『Life Design Labo』を東京・渋谷に開設。浮気・不倫などの問題を越えての夫婦関係の構築や、セックスレス、モラルハラスメントなど、夫婦間のセンシティブなテーマに精通し、行動レベルでのアドバイスを得意とする。
「発達障害による夫婦関係のトラブル」が近年急増
——夫婦関係の中でも、「発達障害と夫婦の不和」についての悩みや疑問に対するアプローチを紹介・解説していきたいと思ったきっかけは何ですか?
安東美紀子さん(以下、敬称略):ここ数年、「発達障害」「ASD(自閉スペクトラム症)」「ADHD(注意欠如多動症)」といった言葉を用いた相談が増えてきました。10年前だったら「共感力がない」「気持ちが分からない」といった表現が中心でしたが、現在はグレーゾーンも含めて特性名や診断名を挙げて相談されることが多くなってきています。
その背景には
• こどもが発達障害の診断を受けるケースや療育のために、家族もその特性を知る機会が増えた
• 書籍やインターネットなどで発達障害に関する情報が広がり、「この特性に由来するのでは」と考える人が増えた
といった社会的な変化があると考えられます。
その一方で、発達障害でも夫婦関係の悩みに特化したライフハックが少ないなという思いがあり、夫婦のコミュニケーションと発達障害の関係について、もっとわかりやすく伝えらえる情報が必要だと感じました。
——パートナーが発達障害、もしくはグレーゾーンかもと思われる場合、夫婦コミュニケーションや家庭運営において、どのような特徴が見られることが多いですか?
安東:
ASDでは
• 感情への共感が弱い
• こだわりが強い
• 過集中が強い
などが見られ、柔軟な対応が苦手なために、相手の気持ちを汲み取りにくいことが衝突の原因になることがあります。
ADHDは
• 衝動的な行動
• 感情の高ぶり
• 注意力の持続が困難
• 優先順位づけが難しい
といった特性があります。興味が偏りがちなので片づけや段取りができなかったり、忘れ物や遅刻が多い、失言や言葉がきついなど、家庭運営や言い争いの場面でトラブルになりやすいです。
人によってはASDとADHDの両方の特性を軽度にあわせ持つことも多く、症状が重なって現れることもあるために、夫婦間トラブルが複雑になるケースも。
また、セックスレスのお悩みでご相談にいらっしゃる方のお話しを伺っていると、実はその原因となる背景には発達障害の特性があったりします。相手の感情状態や雰囲気を考慮できず、自分のペースを優先してしまうがために、同意や気持ちの不一致で傷つきが生まれたり、セックスレスになってしまうのです。
——発達障害に関連して「カサンドラ症候群」という言葉を耳にするようになりましたが……。
安東:「カサンドラ症候群」とは、ASDなどの発達障害を持つパートナーや家族との間で、コミュニケーションの困難さから生じるストレスにより、心身に不調が表れる状態をいいます。
パートナーの共感性の低さやこだわりの強さから、「何を言っても通じない」「会話にならない」「私が悪いのでは」と感じてしまい、自己否定・自信喪失・抑うつ状態に陥ってしまうことが少なくありません。
本来は性格や相性の不一致ではなく、特性の違いによるズレなのに、それを自分の責任として抱え込み、孤独感を深めてしまうんです。
ADHDのパートナーを持つ方に起こることもあって、ADHDの衝動性から夫婦喧嘩に発展しやすかったり、感情が高ぶりやすく、夫婦喧嘩になると強い口調になったり、ときにはモラハラ的言動になるわけです。それが日常的にダメージとして積み重なり、場合によっては体調不良や育児疲れなどもある中で、恐怖・疲弊・無力感といった慢性的なストレス、カサンドラ状態に発展してしまいます。
カサンドラ状態にある方がご相談にいらっしゃった場合は、ご夫婦関係の改善にアプローチすることも大切ですが、その方自身の自己肯定感の回復をサポートする必要があります。強い身体反応がある場合は医療機関の受診をおすすめする場合も少なくありません。
——発達障害の特性への理解が、夫婦関係の改善につながることがあるってことですよね。
安東:パートナーのこだわりや反応が「性格の問題」ではなく「特性」によるものだと理解できると、「自分のせいではない」と受け止められ、関係改善の一歩になりやすくなります。また発達障害を持つパートナー自身についても「特性を直す」のではなく、「どうすれば相手を傷つけずに済むか」という具体的な対策を一緒に考えていくことが大切です。
日本では、夫婦カウンセリングはまだ馴染みの薄いものです。さらに「夫婦関係の悩みの背景に、発達障害(特性)が影響しているかもしれない」という視点も、一般的とは言えません。
そのため、どこに相談してよいか分からず「性格の不一致だから仕方ない」「もう修復は無理だ」とひとりで諦めてしまっている方も多いのではないでしょうか。
私は、病院へ行くほどの「医療」でもなく、かといって「自分ひとりで抱え込む」ものでもない。その中間にある大切な選択肢として、もっと気軽に「夫婦カウンセリング」を思い浮かべていただける存在になりたいと考えています。
もちろん、カウンセラーは医師ではないため、診断はできません。また、すべての夫婦不仲が発達障害に起因するわけでもありません。しかし、夫婦関係のトラブルは、当事者同士だけで話し合おうとすると、どうしても感情がぶつかり、すれ違いが悪化しやすいという側面があります。
カウンセリングの現場では、まず信頼関係を築くことを大前提に、詳細なヒアリングを行っていきます。最近では、診断をお持ちの方をサポートさせていただく機会も増えてきました。
この連載では、そんな夫婦カウンセラーという立場から、様々な「夫婦の知恵(夫婦ハック)」を読むカウンセリングとしてお届けしたいと考えています。
• 目の前の問題の奥に隠れた「本当の原因」を見つけるきっかけ
• 疲弊した心の持ち方やケアの方法
• 日々のコミュニケーションでの傷つきを減らすコツ
これらを通じて、今の関係を「愛を感じられるもの」へと変化させるヒントを共有していきたいと思います。
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