元『週刊ゴング編集長』小佐野景浩氏が、かつての取材資料や関係者へのインタビューをもとに、伝説のプロレスラー・ジャンボ鶴田の強さと権力に背を向けた人間像に踏み込んだ588頁にもおよぶ大作『永遠の最強王者 ジャンボ鶴田』。

本連載では、刊行以来大反響を呼んだこの1冊に、新たな取材、証言を盛り込み改めてジャンボ鶴田の人物像に迫る。

今回は最終回として、本連載の著者・小佐野景浩氏に執筆いただいた「エピローグ」を公開。長年鶴田を取材し続けた小佐野氏の目に最強王者はどう映っていたのか。連載を終えた小佐野氏が改めて「ジャンボ鶴田」への思いを綴ります。

本連載「永遠の最強王者ジャンボ鶴田 完全版」をまとめた電子書籍の刊行が決定!
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普通の人でいたかった怪物を解き明かすために

 来年2025年5月13日、ジャンボ鶴田が亡くなってから25年…四半世紀となる。この連載の基となった拙著『永遠の最強王者 ジャンボ鶴田』がワニブックスから上梓されたのは没後20年の2000年5月13日だったから、本当に月日が経つのは早い。

 私は2007年3月に休刊となったプロレス専門誌『週刊ゴング』で1984年5月から90年7月の6年2ヵ月間、全日本プロレス担当記者だった。ジャンボ鶴田が日本人初のAWA世界ヘビー級王者となり、ジャイアント馬場に代わってエースの道を歩み始めた時から長州力らジャパン・プロレスとの日本人抗争、馬場が「これ以上はない!」と絶賛した天龍源一郎との鶴龍対決、そして三沢光晴らの超世代軍の壁になった時代を間近で取材していた。

 その時代、誌面における全日本の主役は天龍源一郎。当時の全日本で記事になるようなパッションのある発言をするのは天龍だけだったし、自分をさらけ出して全身全霊で戦う天龍がファンの心を掴んでいたからだ。もし、あの時代に天龍がいなければ『週刊ゴング』の誌面は新日本プロレス一色になっていただろう。全日本担当記者の私にとって天龍は誌面を確保する切り札だった。そして天龍の記事に多くのスペースを割く私はファンの人たちに“天龍番記者”として認知されるようになった。

 天龍に対して鶴田は、パッションのある発言をすることはほとんどなかった。見出しになるような言葉を発してくれない記者泣かせのレスラーだった。私が記者として力量不足だったから引き出せなかったのかもしれないが、いつも余裕しゃくしゃくでムキにならない、本気で怒らない、必死になる姿を見せない。それを美学にしているようにも思えたし、そうした立ち居振る舞いにプライドの高さ、頑固さを感じたのも確かだ。...