勝利必須の初戦、どうなるスタメン?

 サッカージャーナリストのミムラユウスケ氏、田村修一氏、木崎伸也氏を中心に、サッカー解説者・林陵平氏、おこしやす京都ACの分析官・龍岡歩氏らに取材、日本代表のアジアカップでの戦いを全6回10企画に渡って配信する「日本サッカー徹底検証#5 アジアカップ特集」。

 今回は日本代表のトレーニングの様子、スタメン予想、ここでしか知れないアジアカップの様子を現地で取材するミムラユウスケ氏が書きます。

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楽観論も「苦戦」は必須のアジアカップ

 今大会、優勝候補の一角としてアジアカップに挑む”最強”日本代表。

 しかし、過去、日本代表がアジアカップで優勝した大会を振り返ると、延長戦やPK戦など厳しい戦いを繰り広げている。あらゆるメディア優勝候補の筆頭に挙げられているものの、今大会も苦戦は必至だろう。

 今回のアジアカップは、日本の歴史上でもっともスタメンが固定されない大会になるはずだ。

 歴代の日本代表の監督は、初戦からフルメンバーを起用することにこだわってきた(「フルメンバー」の定義を決めるのは難しいが、ここでは明日決勝戦がある場合に起用した先発の11人と定義しておく)。

 しかし、森保一監督は違う。

「フルメンバーの捉え方は人それぞれ違うところもあるかもしれないですが、(自分が考えるのは)その時の活動のベストメンバー」

 

 そう考える理由は、2026年W杯で優勝するためだ。

 2026年大会から参加国が増えるため、決勝までに戦わないといけない試合数が以前より多くなる。従来はグループリーグ初戦から決勝戦まで最大7試合だったのが、次の大会からは8試合に増える。

 だから、優勝するためには、先発メンバーの一部をローテーションして入れ替えたり、スタメンの大半を替えるターンオーバーが必要と考えているのだ。

 実際、2022年のカタールW杯でも森保監督はローテーションを採用している。しかし、5人を入れ替えてコスタリカ戦に挑むと、まさかの敗戦を喫してしまった。クロアチアと引き分け(PK戦で敗れているがFIFAの公式記録では引き分けとカテゴライズされる)、ドイツとスペインに勝ったのに……。あれは監督にとっても苦い経験だった。

 だからこそ、カタールW杯以降、試合ごとに大幅にメンバーを入れ替えて戦ってきた。その結果が9勝1分1敗であり、日本代表監督として初めて9連勝を記録した監督にもなった。

 ただ、それ以上に大きかったのは、選手たちのモチベーションのアップにつながったこと。従来であれば、1分たりともピッチに立たずに代表ウィークを終える選手も少なくなかった。

 だが、今は違う。

 交代枠が5人に増えた恩恵もあるが、招集された選手の大半がピッチに立ち、だいだい18人前後の選手が1度は先発に名を連ねるからだ。

 W杯優勝という目標を達成するためであることはもちろん、2022年大会の借りを返すためにも、森保監督は試合ごとの選手の入れ替えを念頭に置いている。

 それは今回のアジアカップでも変わらない。

 むしろ、対戦相手のレベルこそ違うとは言え、メンバー選定の試行錯誤はW杯本大会にもつながるような絶好の機会と捉えている。

 元旦のアジアカップメンバー発表会見のときに、そのことを問うと、こんな答えが返ってきた。

「『ターンオーバー』のプランを持って(今回のアジアカップに)臨みながら、その都度、チーム状況、選手のコンディション等々も違いますので、その上で判断していきたい。カタールW杯のときも、事前にプランしたことを、そのときの状況を何も考えずに実行したわけではなく、『最大11人代えながら戦う』という『ターンオーバー』も考えながら人数を絞っていったというところがありますので。今回も、コンディション等々を見ながら決めていきたいなと思っています」

 

 このようにコンディションを重視しながらベトナムとの初戦のスタメンを決めるはず。だから、日本のファンが想像するようなベストメンバーとは若干異なる面々が先発することになりそうだ。

ベトナム戦の先発予想

 具体的には、負傷中の三笘薫はもちろん、冨安健洋らの負傷明けの選手はスタメン起用されない可能性が高い。また、キャプテンである遠藤航でさえも、イングランドでの過密日程の影響が考慮され、ベンチスタートになる可能性は十分にある。

 実際、大会初戦の予行練習となった1月9日のヨルダンとの非公開の練習試合でも遠藤を起用しなかったことを監督は認めている。

ベトナム戦の予想スタメン

 

 

 というわけで、スタメン予想はしてみたものの、果たしてそれが当たるかどうか……。皆さんもぜひ予想してみてほしい。

ベトナム・トルシエ監督の「不吉な言葉」

 今回の試合で何より面白いのが、ベトナム代表を率いるのが、日本のアジアカップ史上最も強さを見せて優勝したと評される2000年大会の指揮をとったフィリップ・トルシエ監督であることだ。日本代表史上初めての取り組みが、日本代表の歴史を語るうえで欠かせない人物の前で行われるわけだから。

 なお、日韓W杯で日本を史上初めて決勝トーナメントに導いたフランス人指揮官は不吉なコメントを残している。

「カタールW杯で日本がスペインやドイツを倒したように戦う」

 確かに、今回の日本のFIFAランキングが17位なのに対して、ベトナム代表は94位。大半の人が日本の勝利、ベトナムの敗戦を予想するだろうが、この構図は確かにカタールW杯での日本対ドイツ、日本対スペインのそれと似ている。

 とはいえ、どの試合でも「日本相手に番狂わせを起こそう」と相手が目の色を変えて挑んでくることは日本の選手たちは織り込み済みだ。トルシエ監督の心理ゲームに惑わされることはないだろう。

 最後に、そうした状況を踏まえた上で、キャプテン遠藤によるベトナム戦全日記者会見で口にした言葉を紹介しよう。

「僕はキャプテンとして優勝するためにここにいる」

 

 ベトナム代表との試合は、現地時間の1月14日の14時半、日本時間の20時半にキックオフを迎える。

【カタールアジアカップこぼれ話】

 今大会のグループリーグのプレビュー記事では日本の練習場で見つけた面白いものを紹介していきます。

 今回は、実に古典的な「ジョーロ」です。

 お花に水をあげたりするときに使うアレです。日本代表の練習場にも当然、スプリンクラーがついており、練習前には放水が行われます。しかし、カタールは、もともとは砂漠の国。放水をしても、芝生はすぐに乾いてしまいます。そこで練習の合間などに、スタッフがそのときのトレーニングで使うエリアにこまめにジョーロで水を撒いているようです。砂漠のアジアカップならではの取り組みですね。

ジョーロで水を撒く日本代表のスタッフ
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