ブンデスリーガはバイエルンが10連覇を達成、注目はチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグそしてカンファレンスリーグの出場権争いと、1部残留・降格をかけた戦いへと移っている。

 昨季、昇格1年目ながら9位に躍進した遠藤航擁するシュツットガルトは残留争いの真っただ中。

 現在の16位は、2部の3位クラブと入れ替え戦を戦う位置になる。15位のヘルタ・ベルリンとは勝ち点4差。自動降格となる17位・ビーレフェルトとは2差。

 いずれも2試合ずつを残し、ヘルタが2敗、シュツットガルトが2勝すれば自動的に残留が決まるが、ビーレフェルトが勝ち、シュツットガルトが負けると順位が入れ替わるという混戦状況だ。

 そしてそのシュツットガルトが次節、対峙するのがバイエルンである。屈指のビッグクラブに対しどう戦うのか。

 同じくブンデスの強豪で現在2位につけるボルシア・ドルトムント戦は「内容は良かったが、敗北を喫した」試合だった。果たして、どんな試合だったのか。プレーした遠藤航はどう感じていたのか。

 月間・遠藤航の「PICKUPMATCH#6 ドルトムント戦」で聞き手を務めたスポーツライターのミムラユウスケ氏に、この一戦を解説してもらう。

(執筆:ミムラユウスケ)

ゴール期待値で上回っていたドルトムント戦

 今回の「PICK UP MATCH」は注目の一戦となったドルトムントとの試合をお届けします。

 この試合ではシュツットガルトがホームチームらしく相手を押し込む時間がありました。データをいくつか紹介しましょう。

 シュート数はシュツットガルトとドルトムントを比べると、13対10。ホームチームが優勢に見えました。

 しかし、枠内シュート数と率は2本(15.4%)対4本(40%)で、アウェーチームの質・量ともに上回ることに。

「xGols」というデータでも対照的な結果がでました。この指標は、放たれたシュートの位置やシチュエーションをブンデスリーガの過去の膨大なデータと照らし合わすことで、その日のシュートの数と質から期待される得点数を数値化したものです。

 例えば「xGoals」が2点であれば、過去のデータを総合すると、そのチームは2点を取れるだけのシュートの数とシチュエーションを作り出したことになります。

 この試合のシュツットガルトはxGoalsが1.65点だったのに、実際には無得点。対するドルトムントはxGoalsが1.45点だったものの、実際には2得点でした。

 ホームチームは(これまでなら決めてこられた)決めるべきシチュエーションで決められず、逆に、アウェーチームはシュート数やシチュエーションから予想される得点よりも多く決めた。

 試合を見た多くの人は、「シュツットガルトが押し込んでいたのに最後はドルトムントが勝った」という感想を抱いたかもしれません。その要因はデータに表れています。

 遠藤選手が「PICKUPMATCH」で語った試合についての感想は以下のようなものでした。

「内容的には、シュツットガルトもそんなに悪くはなかったんですけど、結果は0対2の敗戦ということで。

 前半と後半に1失点ずつ。失点の仕方が悪かったですね。あと、うちにもカウンターからのチャンスが何回かあったので、そこで獲れていれば……。

 ただ、最終的には、最後のペナルティエリアでのクオリティーの差がそのまま結果に反映されてしまったかなという感覚が個人的にはあります。個人的なプレーはそんなに悪いとは思っていないんですけど、やはり、チームを勝たせられなかったところは残念でした」

 

 自力で勝るドルトムントがボールを持つ時間帯は長かったものの、シュツットガルトはリスクを冒してプレスをかけ、ボールを奪いに行きました。

 実際に、その流れからボールを奪ったり、相手のミスを誘発した場面もあった。ただ、必ずしも狙い通りだったわけではなく、一部のポジションの選手に負担がかかるような形だったとも言えます。

一部の選手に集中した「負担」

 この試合では、ドルトムントの選手の能力を警戒してしまっただけではなく、ピッチに立った選手たちの組み合わせや特徴から、シュツットガルトのインサイドハーフの選手がプレスをかけるときの範囲や対象が広がっていました。

 その要因や、そうなったときにどのように対処すべきかについては「PICKUPMATCH#6」での遠藤選手本人の解説に譲ります。

 特にインサイドハーフの遠藤選手は広範囲をカバーしないといけなくなったために、得意とするボールを奪いきるという能力を披露するシチュエーションが減ります。

 実際、昨季のデュエルキングであり、今季もリーグトップである遠藤選手のこの試合でのデュエル勝利数は全選手のなかで4位タイでした。

 一方で、広範囲を走り回り、複数の相手をケアし続けていたため、相手にプレスをかける回数がチームでもっとも多いという数字も出ています(34回)。

 こうしたデータは、彼の能力の高さを表すものではありますが、「チームとしてドルトムントから良い形でボールを奪うという目標」を考えると、この試合においてそれが「最適解」だったのかどうか。そのあたりについても、動画で解説してもらっています。

 遠藤選手の答えのひとつは、「(前から相手をハメに行きたいのであれば)右サイドバック(遠藤選手が右のインサイドハーフだった)の選手が、もう少しボールに対して強くいけるかどうか」が一つのキーだと話しました。

 しかしそこには選手のタイプや、ストロングの難しさもあります。

「ブロックを組んだ」からこそ生まれた攻撃シーン

 一方で、ハードにプレスをかけない時間帯があったからこそ、生まれたプレーもありました。

 前半30分。遠藤がボールを拾い、ドリブルで3人を振り切ってカウンターの起点となります。この試合のハイライトの一つにもあげられる場面でしたが、「ブロックを組んでいたので、最初の10、15分のときと違って、体力的に少し余裕がある時間でした」と遠藤選手が振り返る「90分の中の体力マネジメント」をふくめ、このプレーが出た背景にもさまざまな要因が隠されていました。

 ただ、試合をとおしてみれば、このように個人の選手が機転をきかせて、局面を変えるようなシーンは、アウェーチーム・ドルトムントのほうがはるかに多く作っていました。

 それが勝敗をわけたとも言えます。遠藤選手はこうも話しています。

「内容は良かったとはいえ、やはり、実力差はあるなというのが個人的な感覚として残ったゲームではありました。中盤で対峙している相手のボールの持ち方や動かし方などは、相手とは少し差があったなと思いました」

 悔しさと手ごたえと――。

 ブンデスリーガを代表するドルトムントとの試合だったからこそ見られた、様々な発見や学びの詰まった一戦。

 戦術ボードを手にしながら、ときに日本代表の例などにも触れながら、遠藤選手が語る思考や判断。

 ぜひ、動画本編でご確認ください。濃密な授業を受けたような感覚を味わえるはずです。

「PICKUPMATCH」本編はこちらから👇
【遠藤航】名門クラブとの一戦、「内容では上回っていた」に潜む罠