"夏の風物詩"全国高校野球選手権・第108回大会(8/5-8/22)が目前に迫り、各地方では出場権を争い熱戦が繰り広げられている。一方、プロ野球とメジャーリーグはオールスターゲームを終えると、優勝争いの色が濃いシーズン後半戦へと突入する。
そんな野球で盛り上がる夏には、元西武ライオンズ監督・辻発彦さんと2026年プロ野球前半戦を振り返るスペシャルトークイベント「平石洋介の探球論REAL&LIVE」が開催される。今回は、イベント開催を記念して平石洋介の探球論のバックナンバーを特別公開!
1)柳田悠岐が示す強い球団のベテランの姿勢
2)セーフティスクイズでゲッツー「試合終了」の技術
・セーフティスクイズとは?
・ホークス・谷川原が取った基本に忠実なプレー
セ・リーグは下馬評が低かったヤクルトが躍進。どこまでその勢いが続くのか、注目が集まる。一方、パ・リーグは強力な戦力を誇るホークスが強い。平石洋介が見る強さの理由。
柳田悠岐が示す強い球団のベテランの姿勢
――パ・リーグはホークスが強いです。例えば周東(佑京)選手は、打撃などは本調子ではないと思いますが、守備での球際や送球だったりというのはやっぱりチームの強さがにじみ出ていますね。
平石 これはホークスという、ここ数年だけじゃなくて、もっと前から王会長が監督として来られて、そこからホークスが変わろうとしている、そのあたりの歴史というのは、……そのときの内情は僕には分からないですけど、でもいろんな話を聞いて僕も実際(コーチ時代の現場で)目の当たりにすると、本当にいい伝統がありますよね。
それを伝統だけで片付けていいのか分からないですけど、技術だけじゃなくて取り組み方とか振る舞いとか、いろんなところでプロッフェショナリズムがホークスやっぱすごいんですよ。
それを球団組織もあると思いますけど、特に現場の選手が本当に歴代の選手、先輩から受け継いでいる。
今も柳田(悠岐)、(中村)晃もいますし(今宮)健太……野手で言えばね。もうその辺が本当にまたいい姿でやってますよ。
こないだもめちゃくちゃ走塁練習やってましたね。試合前に。
――そうなんですね。
平石 全員が同じ状況ではないんですけど、1塁ランナーでも例えば左中間ぐらいの打球だったらブワーっと走ってサードベース回るぐらいまで行ったりとか。
セカンドランナーからのスタートもそうです。2人にも言いましたよ。いい練習するなって。さすがやなと。だからホークスは強いと。
今はファイターズもそういう練習やってますけどね。だけど、じゃあ例えば(前半のテーマにあった)ロッテにそういうのがあったかって言ったらないんですよ。どっちかって言ったタラタラしている方のチームだったので。
プロだから勝てばいいんだろうって言うんですけど、でも常勝軍団で長続きするチームっていうのはやっぱりその辺のはちゃんとやりますね。
――その辺の違いですよね。だから選手本人の差だけじゃなくて、組織としての今までのあり方。
平石 今の監督がどうとか、サブ(サブロー監督)さんがどう、とかじゃなくて。それをいきなり一瞬で変えるのは絶対無理なんで。
――ホークスの強さの下地を作ったのは平石さんですよというお褒めの言葉もありますが。
平石 いやいやいや。全くそんなことないです。
――本当にホークスはそういうところがすごいですよね。
平石 一回緩みかけた時期も正直あったんですよ。あったと思います。僕見てても。なんですけど今やっぱまたちゃんと(戻ってきてますから)ね。
――そうじゃなかったら、今宮選手が怪我で残念ですけど、ベテランがあれだけ怪我しながらも「やっぱり開幕のスタメンは今宮です」って若い野村(勇)選手が出てきているのに、奪い取るなんてなかなかできないですよね。
――ジャイアンツの坂本(勇人)選手とかも同世代で活躍した(現在はベテランとなる)選手がちょっと苦労されてますけど、一方で柳田選手含めたホークスはその時点でいい走塁練習をするとか出力の練習で上げられているからですか。
平石 そうですね。ウエイトトレーニングとかをやっている人(ベテラン)はいると思うんですけど、ギータはウエイトはもちろんキャンプの時でも全力でダッシュもしてますし、未だに練習の1発目のティーからほぼ全力でスイングしますから。
そこに行くまでにもちろん準備はするんですよ。でもそれぐらい毎日出力上げて、ダラダラ長い時間はギータやらないですけど、必ず出力を上げてるんで。
僕も今、全然トレーニングも運動もしてないんですけどね。指導者になって、ちょっと走ったりくらいはやってますけどここ何年も、……かなりの年数ダッシュをしてないと、マジでスピード出ないんですよ。本当に。自分でも嫌になるくらい(笑)。
だからやっぱ毎日出力を上げるって大事だなと思います。本当に。だから怪我している選手もずっと慎重に慎重にやってたら弱るのは早いでしょうね。
――書籍『人に学び、人に生かす。』にも書かれていましたね。一度出力を上げ切るアップを大事にしていた。そこで、1アウト3塁のセーフティスクイズの件ですね。ホークス対ロッテの(4月5日/3対4でホークスの勝利)。
セーフティスクイズでゲッツー「試合終了」の技術
平石 補足しておくと、最終回だったんですよね。1点ビハインドのロッテが逆転のチャンスとなる1アウト3塁。
――ホークスはいつもだと抑えの杉山(一樹)投手ではなく――怪我しちゃいましたけど――松本(裕樹)投手が出てきてました。ロッテから見るとチャンスを作り、ここで一気に逆転できるんだというところで、セーフティスクイズのサインが出て、それをバントしましたがキャッチャーに取られてしまい、3本間で挟まれワンアウト。で、1塁ランナーが、小川選手でしたかね、3塁を狙ってそこでタッチアウトでゲームセットという形になってしまいました。
見方的には「何をしとんじゃ」というような指摘もありまして解説いただきたいです。
平石 色々とありましたね。まず友杉(篤輝)選手、実はあんまりバント上手くないんでね。
でもこれは、うまくないで片付けたらダメなことなんですよ。なぜかって言うと、友杉選手はそれで生きていかないといけないから。ホームランを30発も40発も打つ選手だったら、あんな場面にセーフティスクイズなんてサインも出ない。
もちろんそういうバッターでもプロなら練習しないといけないんですが、(バントができなくても)しょうがない面がある。
けれど友杉選手はそのバント、実はあんまり上手くないんですけど、いい加減克服していかないとやっぱり出番なくなってくると思います。
セーフティスクイズとは?
そもそもセーフティスクイズを解説します。
「セーフティバント」というのは、打つ構えから、(やり方は色々ありますけど)要は自分も生きるバントヒットを狙うバントがセーフティバントって言うんですね。3塁側にやったり、1塁側のセーフティバントもあります。その場合は、ちょっと強めだったらプッシュバントとか、ドラッグバントって言ってセカンドの前に強めにあることを言いますけども。
けれど「セーフティスクイズ」っていうのは、これ日本の言い方ですよね多分。セーフティバントと同じようにバッターは自分も生きるような形でやらないといけないんじゃないかと思われている方がいらっしゃって。
そうじゃないんです。
スクイズと何が違うのかって言ったら、スクイズというのはランナーがピッチャーがリリースする前にはスタートを切っています、盗塁みたいに。それで、バッターはランナーが走っているので、ボール球でもワンバウンドでも飛びついてでもバットに当てて、できれば前に転がさないといけない。
最悪、外された場合にはバットを投げてでもファールにできたらいいんですけど、そうやって何が何でもバットに当てないとランナーが走ってしまっているから空振りとか見逃しするとランナーがアウトになってしまうという。
でもセーフティスクイズというのは、特に使われるのが1・3塁のケースですよね。1・3塁、高校野球とかだったら2・3塁とかでもしてるチームありますけど、プロではほとんどないです。
たまたまセーフティやったのがランナーも返ってセーフティスクイズになってしまったケースはあるにしても、基本的には1・3塁のケースで要は送りバントみたいなもんなんですよ。
バッターは犠牲バントをする。自分がアウトになってそれが3塁前にやるのもありですし、1塁線付近に転がして強くなくても確実に殺すバントをすれば、防ぎようがあんまりない作戦でもあるんですけど、守備側も今それを何とかできないかって言ってちょっとシフトみたいな動きはするんですけど。
なので、バッターはストライク、空振りしようがストライクを見逃そうがいいんです。なぜなら確実に転がせるような高さであったりコースを選択してやるので。
例えばアウトローのめちゃくちゃ難しい球とかをやろうとはしないんですよ。で、ランナーはこのバットにボールが当たって、フライじゃなくて下向き(ゴロ)に転がる瞬間を狙います。送りバントと一緒です。
ただし、こないだのバントというのは、ほぼベースの上でワンバウンドして、ほぼベース付近で取られましたよね。あれとか、ピッチャーの前に強烈なゴロが行くとか、そういう場面はサードランナーはスタート切らなくていいんです。ある程度コースに確実に転がるぐらいのタイミングで行っといて、強かったら戻る。方向も強さも良ければそのまま行くっていう作戦なんですけど。
ホークス・谷川原が取った基本に忠実なプレー
もちろん友杉選手が決めていれば一番良かったんですが、一番僕的にダメなのは高部(瑛斗)選手。キャッチャー前に、なぜ行ったのかっていうのがまず一つですね。
信頼を得るためには友杉選手が決めないといけないですよ。で、そこに行ってしまった、最悪行ってしまったのはしょうがないですけど、なぜもうちょっと早く止まらなかったのか。ホーム付近まで行ってたので。
これランダウンプレイの鉄則なんですけど、キャッチャーの谷川原(健太)選手がまず素晴らしかった。
このプレーは、ホークス側に褒めることだらけだったんですよ。
まず谷川原選手が、これランダウンプレイって挟殺プレイって言われるんですけど、挟まったランナーをアウトにする時に、絶対にやらないといけないのが、ボールを持った選手が全力でランナーを追いかけること。
意外とランナーの動きに惑わされたりして、ちょっとスピードが緩まってしまったりとか、特にキャッチャーってレガースつけてプロテクター着てるんでなかなかスピードに乗って走れないんですけど、もう谷川原選手はめちゃくちゃスピード速く全力で追っかけて行ったんですよ。
で、その最初に言っていた高部選手がギリギリ谷川原選手の近くで止まってしまったので、全力で追っかけてきた谷川原選手から逃げるのでも必死だったんですよ。
これが距離感があったら、谷川原選手が追いかけてくる時に、ちょっと自分もちょんちょんちょんって動きながら(時間を稼ぐという)コツがあるんですけど、ポンと戻るふりとかをするわけですよ。そしたらそれに釣られて追っかけていった人が離すんですボールを。そしたら今度逆の方向に逃げれる時間ができるわけですよ。
なので、ランダウンプレイの上手いランナーは、自分のその距離感をまず最初に保って、必ず自分からアクションを起こします。相手もそれに釣られて動くので、また時間に余裕が生まれる、これがもう絶対鉄則なんですけど、まず一番褒めたいのは谷川原選手の全力での追っかけていた。
で、そこでサードの野村勇選手との距離感、素晴らしいタイミングで離せたので、もうここで高部選手が今度ボールを離した谷川原選手、野村選手の前から高部選手がパッと切り返すにしてはもう距離がなさすぎて、もうその場で切り返そうと思ったらタッチされてるんですよ。
行き場がなくなってしまったので外側に逃げていったんですね。これでスリーフィートという距離がありますから、この枠内より外れたらランナーは自動的にアウト、守備側もタッチできなくてもタッチをするっていう行為を見せれば審判がアウトって言われるんです。もうそこで外に逃げるしかなかった。
そこでまたホークス側が素晴らしかったのが、追っかけていった野村勇選手がスリーフィートってアピールしてタッチしながら、アピールしたら、その目の前にいたホームの審判のスリーフィートっていうジェスチャーをちゃんと見てたんです。
それで、ホームベース上にいた松本投手とかが、スリーフィートのアピールした後にすぐにサードベースにサードサードって指さしてるんです。野村勇選手も審判のジェスチャーを自分の目で確認して、後のプレイっていうプラスみんなのジェスチャー、指で、もうパッと止まってパッと投げたら、そこにちゃんと野手がベースのところにいてタッチプレイした。
だからホークス側は何一つダメなところがなかったんです。もう完璧なプレイ。
できそうでできないこと、本当に訓練だと思いますね。統率っていうんですかね、それをあの場でちゃんとできるっていうのは大したもんだなと。
ロッテの視点で言えば、1塁ランナーの小川(龍成)選手、これ3塁ランナーコーチも来いってゼスチャーしていたんですけど、高部選手のあの距離感を見たら、自分の判断で止まらないと。視界の先ですから。
だからロッテからしたら何一ついいところがなかったですあのプレイは。絶対やってはいけないことを全てやりました。っていうところですね。
――逆に言うと伸びしろというところで、ロッテはそういうところさえできれば、本当に1点2点、あれでソフトバンクに勝てるかどうかでだいぶ変わりますもんね。
平石 変わりますよ。本当に。
――ホークスは本当にすごかった。シフトでちゃんとチャージに来たファーストが明けたファーストベースにセカンドがカバー行き、今宮選手がセカンドベースに1回入った後にサードに行ってる。
平石 そうなんです。 野球をやってる人とか、見てる人もそうなんですけど、特に野球やってる人に聞いてほしいというか。
状況によってのランダウンプレーのある程度の決まり事っていうのかな。例えばピッチャーゴロで、2塁ランナーが挟まれました。追っかけて生き方だってチームによって違うとか、投げたらピッチャーがどっちに行くのかとか、投げた方向に行きましょうとか、いろんなことがあると思うんですけども。あくまでもそれは大まかな決まり事であって。
――原則的なこと。
平石 そうです。でも実際の試合で起こってる最中に、「俺はこっちやから」とか言ってベースが空いてたら意味ないんですよ。そこの変化にパッと気づいて先回りできる選手っていうのは、そこの機転が利かないといけないので。
だから今宮選手なんか、これは普通の選手っていうか、いい選手からしたら当たり前なんですけど、でもそれをさらっとやってのける。これさすがですよね。
――本当に。タッチのアクションもあって。あれタッチしようとしないとセーフになっちゃいますもんね。
平石 そうなんです。スリーフィートっていうのは、スリーフィートの範囲から超えたって、ただタッチするフリもしないままアピールしてもこれセーフなんで。ちゃんと野手はタッチするフリっていうのがいるんですよね。
だからいいチームですねやっぱり。
ご購入いただくと過去記事含むすべてのコンテンツがご覧になれます。
元楽天監督・平石洋介と一緒に「野球を探求」していくコンテンツ「探球論」。毎週の野球分析記事やLIVE配信、対談など「プロの現場レベル」のお話を話していきます。連動企画書籍『人に学び、人に生かす。』は好評発売中。
毎週配信、監督・コーチ経験者ならではの視点で送る新・野球分析

2025年は『人に学び、人に生かす。』を出版させてもらいました。長く読んでもらえればうれしいです。2026年はより野球の見方、現場の考えを伝えられるコンテンツにしていきたいです!
会員登録がまだの方は会員登録後に商品をご購入ください。
