サッカー日本代表はいよいよグループステージ突破に向けた大一番、スウェーデン戦を迎える。
「ワールドカップ優勝」を目指す――チームの目線を揃えたのが今大会開幕前に離脱した前主将の遠藤航だった。
チームを離れても「日本代表の優勝」を願い信じ続ける前主将、遠藤が考え続けた「日本代表がワールドカップで優勝する」ために必要なこと。その過程を、新刊『STEP』(遠藤航・著)に綴っている。話題の一作から紹介する。

会話を増やす
【前回はこちら】「世界を震撼させる日本代表強さの秘密」
(ワールドカップ優勝を目指すために必要な)「主体的に戦う」ためには、「目標」をともにするメンバーの特徴を知る必要がある。
そしてそこでは会話を増やすことが欠かせない。
選手の「プレーの特徴」は練習や試合など同じピッチに立ち、プレー映像、データをチェックすることである程度知ることができる。でも、その選手が瞬間的に行った判断の理由は、話をしてみてはじめてわかることがたくさんある。判断の背景にはいくつかの要素があるからだ。
ひとつがチーム事情。その選手が所属しているチームがどんな「戦い方」をしているのかで選手のプレー判断は変わる。
これは、それぞれのチームのやり方を聞かないとわからない。例えば、クロップ監督のもとでプレーをしていた僕はとにかく前への推進力が求められた。アンカーという守備的なポジションだったけれど、攻撃のための守備がベースに
あり、高い位置でボールを回収して攻撃的な選手たちにパスを供給すること、ざっくり言うと「前の選手との連動」が求められていた。
でも、その前のシュツットガルトでは同じアンカーでも「後ろ(センターバック)との連動」がベースにあった。だから、プレミアリーグに移籍した当初は、瞬間的に長くプレーしていた「後ろとの連動」を意識したプレーをしてしまうことがあった。
プレミアリーグに適応しなければいけない、と感じていたのはこういう点だ。これは日本代表でも同じだ。染みついているプレーがどんなものか、それをちゃんと聞いておくことが大事なのだ。
もうひとつがパーソナリティ。どんな性格か、ふだんからどんなことを思っているのかは、ふとしたときのプレーに影響すると思っている。例えば、カタール・ワールドカップのクロアチア戦でゴールを決めた(前田)大然はめちゃくちゃ脚が速く、スコットランドリーグで得点ランキング2位になるほどの選手だ。
性格的にはみんなの前で発言をするタイプではないけど、プレーにおいては自分の長所を前面に出したいタイプだと思う。そのひとつである「前からのプレス(相手の選手に対してボールを奪いに行くこと)」は相手からすれば脅威だ。けれど単純に脚が速すぎて味方もついていけない(守備で相手をはめられない)ことがあったりする。
だから、プレスに行くタイミングを話し合って決めておく必要がある。きっと、長所を出したいと思いながらも我慢していることもあるはずだ。それを厭わずやってくれるパーソナリティがピッチ上で助けになることもある。キャプテンとして、そういうことは頭に入れておく必要がある。
そしてメンタリティ。話していくとそれがよくわかる。トミ(冨安健洋)はすごい能力を持ったサッカー選手だ。技術もスピードも戦う気持ちも強い。一方で、メンタルは繊細だ。シント=トロイデンでチームメイトだったとき、うまくいかないとふさぎ込む姿を見てきた。マジメがゆえに何かを変えなきゃと思い立って、車を変えちゃうようなタイプだ。
これも話してみないと気が付かなかったりする(そういうメンタルをネガティブに捉えているという意味ではない)。
会話をすることで選手の特徴をきちんと把握する。選手に戦い方を合わせていく「主体的なサッカー」をする上で最も重要なことだった。
日本代表はその点でメリットもデメリットもあった。
メリットはなんといっても「日本語」で話せること。ニュアンスがはっきりと伝わる。
デメリットは顔を合わせる機会が少ないこと。2023年の日本代表の試合数は10。集まったのは5回だ。2024年はアジアカップがあって試合数は16試合と増えたけれど(そのうち1試合は中止で不戦勝となった)それでも集まったのは6回、2025年も13試合(ヨーロッパでプレーする選手たちが参加できないE-1選手権を含む)で6回である。
だからとにかく練習中、試合中に自分たちがピッチで感じていることを伝え合った。同じようなことは監督やコーチの関係でも言えた。その点、森保さんや名波(浩)コーチ、齊藤(俊秀)コーチ、前田(遼一)コーチも選手との会話に壁を作らない環境を作ってくれた。2024年からはハセさん(長谷部誠)もコーチとなり選手に近い感覚を共有することもできた。
こうした会話の重要性は、キャプテン就任以降より強く感じた部分だ。
もともと言葉で伝えるより、背中で引っ張ろうと考えるタイプだった。
シュツットガルトではドイツ語圏の選手が多かったから、詳細なニュアンスを共有すること自体が難しった。まとめようとすると、逆にまとまらないということも多い。だからキャプテンの役割を「背中で引っ張る」「姿勢で示そう」と思っていたのだけれど、どこかで「背中で引っ張るタイプだから話さなくていい」と、言い訳のようにしていた部分があったとも思っている。
でも同じ言葉でコミュニケーションを取れる環境でキャプテンとなったことで、「言いたいことは伝える」ようにしたほうがいいと考えを改めた。
(遠藤航・著「STEP 夢を叶える33のブースター」より編集・抜粋)

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