ワールドカップがいよいよ始まる。日本代表の初戦は14日、強豪オランダと相まみえる。日本代表のキャプテン・遠藤航はシーズン中の手術の影響が報じられる。その具合や状態から「選手を入れ替えるべきだ」との論も生まれている。

 遠藤の想いは?――その判断基準はいつも変わらない。6月12日に刊行される注目の一冊『STEP』には、そのケガ直後の容態、そして代表への覚悟が綴られている。今回はその一部を特別に公開する。

6月12日発売「STEP 夢を叶える33のブースター」遠藤航・著

ケガ直後と「腫れ」の理由

 診断結果はすぐには出なかった。内出血がひどくきちんと映像が取れないという。

 先が見通せない中で、想像していた「目標」は「チャンピオンズリーグ決勝でベンチ入り」だった。チームメイトに頑張って勝ち進んでもらい、5月31日に行われる決勝でチームを助けられるようにしようと考えた。

 そして「日本代表でワールドカップ優勝」という「夢」の次なるステップは「日本代表に選出される」こと──つまり、少しでも早くケガを治し、ピッチでチームの勝利に貢献できる状態に戻し、それを森保さんや代表メンバーに証明するというものになるだろう。

 リスフラン靭帯の断裂がわかったのは3日後だったと思う。

 そして二つの選択肢が提示された。

 ひとつがこのケガについて僕の断裂具合から見て適切な治療法であるプレートによる固定。プレートを入れたままでも数カ月後にプレーができる可能性があったけど、最終的にプレートを取り出す手術が必要で、そこからさらに数カ月のリハビリが必要だった。

 もうひとつが日本であれば可能な人工靭帯を再建する方法。再手術の必要性がなく早ければ3カ月でピッチに戻れる可能性があるという。

 迷わず後者を選択した。

 あとあと聞いた話では、ヴァージも同じケガをしたことがあったらしかった。僕のケガを受けてメディアに「医者ではないから自分の話」と断った上で語った内容はまさにその通りでびっくりした。そういえば、彼の足の甲は今でも腫れている。試合後に「俺も同じところをしたことがある、早くよくなることを祈っている」(そのときは慰めだと思っていた)と言ってくれたのは、自身の苦しい経験があったからだったのだと気付いた。

 ケガ人が増えているチーム状況、チャンピオンズリーグのタイトル、リーグのトップ4入りに向けて団結している中でチームの力になれないことが悔しかった。個人としても、徐々に出場時間が増えていた。もしこのケガさえなければもっと試合に出られていたはず……そう想像するとタイミングの悪さを嘆きたい気持ちだった。

代表選外への覚悟

 とはいえ、起きたことは仕方がない。いくら悔しくても、嘆いても取り返すことはできない。次のステップに進む切り替えが必要だった。

 ドクターから「人工靭帯再建手術」について説明を受けると、日本で手術を受ける場所や日時、手術後どのタイミングでリバプールに戻るか、3月にどんな状態であるべきか、4月はどういう動作ができるようになるのか、5月は……と逆算をしながらスケジュールを確認した。

 決めなければいけないことがあった。逆算の起点をどこにするかということだ。

 何周も頭をぐるぐると回していると「日本代表メンバーに選ばれる」ことから逆算するのは「最適解」ではないように思えた。

「日本代表メンバーに選ばれる」ことを「目標」にする必要は確かにある。選ばれなければ、叶うことはないからだ。だけど、それは「夢」からの逆算として正しいのか? ステップを下りることになっていないか? 最適解なのか──?
当然だけど日本代表の発表はワールドカップより前に行われる。5月のどこか──例えばヨーロッパのリーグ戦が終わった最終週なのか、段階を踏んでもっと前に発表するのか、想像はつかなかったけれど、僕自身が「代表発表」の5月段階にコンディションを合わせるにはかなり急ぐ必要がある。

 できなくはないだろうけど、「日本代表でワールドカップ優勝」という「夢」からブレてないだろうか……例えばリハビリを含め無理をしてギアを上げることで「代表に選ばれた」としても、そのしわ寄せが本大会中に来てしまう可能性がある。

 それは自分の「夢」ばかりかチームメイトたちの思いである「ワールドカップ優勝」に対してプラスにならない。むしろマイナスになってしまうことではないか。

 ギプスで固定された足を放り投げるように、ソファで寝転がりながら考える。次第に判断基準がクリアになっていった。

 今、「夢」の実現のために必要な目標設定は「本大会で最高のパフォーマンスを発揮し、チームの勝利に貢献すること」をベースにすべきだ──。

 であれば「重要なのは6月14日のワールドカップ初戦、オランダ戦だ」。「そこで最高のパフォーマンスを発揮する準備をしよう」。

 気持ちが、スケジュールが、逆算の起点が固まっていった。

 覚悟もした。

「この逆算によって代表に選ばれない──発表時のコンディションが選出に値しないと判断されて選外となる──ことがあっても受け入れる」

 こうして日本代表にすべてをフォーカスした。

「日本代表でワールドカップ優勝」がすべての判断基準になった瞬間だった。それはつまり、「日本代表でワールドカップ優勝」という「夢」がはっきりと「目標」に変わった瞬間でもあった。

(遠藤航・著/『STEP 夢を叶える33のブースター』「夢 日本代表でワールドカップ優勝」より)

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