「感性」もまた、蓄積されたデータである

 テクノロジーの進化により、今の野球界はかつてない”情報の海”にある。

 打球方向の確率、投球の回転数、細分化されたトラッキングデータ……。しかし、数値化された「正解」が現場に浸透すればするほど、指導者と選手は一つの壁に直面する。それは、選手が本来持っているはずの「感性」との乖離だ。

 データという客観的な事実と、選手がグラウンドで抱く主観的な感覚。このバランスをどう捉えるべきかーー。

 そこで今回は、ともに楽天イーグルス監督を務めるなど、「指導者目線」でプロ野球界の第一線を見続けてきた平石洋介と今江敏晃が、この避けては通れない「転換期」における最適解を語り合う!

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「確率」と「勝負」の狭間で揺れる現場

【平石洋介×今江敏晃/激白対談】「探球論」~特別対談「楽天時代とPL学園」前編より

ーー 今の野球界において「データ」と「感性」のバランス、あるいは選手への落とし込みをどう考えていますか。

平石洋介(以下、平石) データは、他の人がどうか分からないけど基本的に見るよ。

今江敏晃(以下、今江) データで出すと、意外にこの目で見て感じているより、打球方向やヒットを打ってる場所など、明らかにわかるんですよね。

ただ、そこにピッチャーも投げれるかというと、投げれないことが多い。バッターもこっち方向が多いからといって、じゃあ本当にその勝負に出られるか。

「確率で言うと、そっちの方が高いかもしれないけれど……」と、選手は迷いながらやっている。

平石 今ちょっと野球界が転換期というか。ここ数年で、そういう(高度なデータ)が出てきました。多分まだ当分続くと思います。

本当にそのままいくのかと言ったら、疑問なんですよね。感性は、絶対必要だと思うんで。察知する能力も必要です。

データの外にある「名手の察知能力」

平石 今までの名手でもそうやん。技術だけじゃない。なんで「さっきまでここにおったのに、なんでこっちにおんの?」というのができてくる。

それがデータで判断してるかと言ったら違う。去年で言ったら村林一輝(楽天・内野手)が、ベンチの指示なのか本人の考えなのかわからんけど、急に極端な守備に敷くやん。

ーー それは、平石さんの目から見ても驚くような動きだったのですか。

平石 2アウト、ランナーサードとかで、たとえばバッター源田(西武・源田壮亮)は、追い込んだ後にめちゃめちゃ三遊間の前を守ったりする。

ちょっと、あそこ嫌やなと思ったら、ポンポンとアウトを取らされる。だから大したもんやなと思って。でも本人に聞いたら「ベンチだけじゃなくて、自分で思い切って動いてます」というのがあったんやけど。ああいうの、大事。

「思考が研ぎ澄まされていって、すごくいい感性ができてくる」と今江敏晃は分析する


今江 本人が感じて動いて、もしヒットになってしまったら、またそれが本人が考えて「こうかな」、でも「この状況だとこうなって……」と。それが研ぎ澄まされていって、すごくいい感性ができてくると思うんですけどね。

 

 

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「感性とは蓄積された独自のデータである」(平石洋介)

ーー 最終的に、データと感性の折り合いをどうつけるべきでしょうか。

平石 こればっかりは本当に正解がありません。両方大事なことなので。というのも、僕は感性もデータの一つだと思っているので。
 

「こればかりは正解がない」と前置きした上で、平石は「感性もデータの一つ」だと語る


ーー 「感性もデータの一つ」とは、どういうことでしょうか。

平石 それまで蓄積された経験がポッと閃めく。それも根拠があるわけですよ。

ただの思いつきだけじゃないので、実際はそっちもデータだと思っているわけです。どれを選択してどれを捨てていくのか。詰め込みすぎてもパニック起こりますし。自分自身の体を使って、プレーするのは間違いないんで。

データはあくまでもデータなので、使える部分と使えない部分はあると思うんです。

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