「西アフリカ一帯を覆う砂漠地帯」1996年渡部陽一氏が撮影

 渡部陽一です。

 アフリカ西部ニジェールで、7月26日、大統領警護隊がバズム大統領を拘束。

 国内では憲法の停止が発表され、バズム大統領に代わり、警護隊長のチアニ将軍が指導者になったと宣言。

 7月30日にはクーデターの支持者らが旧宗主国のフランスへの反発に際し、大使館を襲撃、放火するという事態が起きています。

 これによって、ニジェールにいるフランス国民を中心に退避が始まっており、在留邦人も日本政府により退避支援が行われました。

 このクーデター、いったいどんな狙いがあったのか。1996年に撮影した西アフリカの写真とともに、解説したいと思います。

ニジェールと周辺国の地図/GettyImage

INDEX
Q1.
ニジェールとはどんな国なのか?
Q2.ニジェールでクーデターが起きた背景
Q3.西アフリカ一帯の状況について
Q4.なぜ西アフリカではフランス離れが起きているのか?
Q5.ロシアが西アフリカに近付く狙い

Q1.ニジェールとはどんな国なのか?

 アフリカ西部に位置する共和制国家で、国土の3分の2はサハラ砂漠が占めています。

 首都はニアメ市。面積は日本の約3.3倍で、人口は約2600万人。

 ウラン鉱山が有名で、日本のウラン主要輸入国でもあります。

 イスラム教徒が9割を超え、フランスの植民地だったため公用語はフランス語となっています。

 サハラ砂漠の南側、サヘル地域で唯一の民主国家であるニジェールは、1960年8月に旧宗主国フランスから独立しました。

 軍政を経て1989年に民政移管されましたが、96、99年、2010年と今回で6回目のクーデターが起きるなど、情勢は安定していません。

 独立以降、貧困、飢餓が深刻で、国民1人当たりの国内総生産(GDP)が594ドル(2021年世界銀行)の世界最貧国の一つと言われています。

 外交面では非同盟中立を掲げながらも、米仏などの主要国との連携を推進。

 その一方で、1997年に台湾と断交し、中国と国交を再開しています。

 地政学的に見ますと、ニジェールはアフリカ西部から欧州への移民難民移動の経由地でもあります。

Q2.ニジェールでクーデターが起きた背景

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