吹奏楽部員たちが部活に燃える日々の中で、書き綴るノートやメモ、手紙、寄せ書き……それらの「言葉」をキーにした、吹奏楽コンクールに青春をかけたリアルストーリー。ひたむきな高校生の成長を追いかける。

第75回は東海大学付属大阪仰星高等学校(大阪府)#3

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トランペットのエースの軌跡

 東海大学付属大阪仰星高校の校舎に、ひときわ澄んだトランペットの音が響く。

(ダメだ。まだ音量が足りない……)

 3年でトランペットを担当する加藤愛実(まなみ)は真剣な表情で楽器を下ろすと、手の甲で唇を拭った。

加藤愛実さん(3年生・トランペット) *写真中央

 すでに口はマウスピースの形に薄赤く腫れていた。けれど、そこで練習を止めたりはしない。今年、愛実は55人のコンクールメンバーに選ばれ、初めてトランペットの首席(トップ)奏者になった。そのプライドと責任感、そして、仲間への思いが愛実を突き動かしていた。

 自分は全国大会で金賞をとった仰星のトップ。音でみんなを引っ張っていけるだけの力がつくまで練習するのだ。

 何度でも、何度でも、何度でも——。

 愛実は兵庫県西宮市から片道1時間半かけて東海大仰星に通っている。中学時代はマーチングの名門である西宮市立上甲子園中学校吹奏楽部で部活に没頭し、3年連続で全日本マーチングコンテストで金賞を受賞した。

「高校では勉強も頑張りたいし、マーチングもやりたいし、コンクールで全国大会の舞台にも立ってみたい」

 そんな欲張りな挑戦ができる場所として、愛実は東海大仰星を選んだのだ。通学するときは「遠いな」と感じるが、部活への情熱がそれを大きく上回っている。

 顧問の藤本佳宏先生は愛実をこう評し、信頼を寄せている。

 

「成績は学年トップレベル。トランペットには珍しく物静かなタイプだが、意志が強いエースプレイヤーで、リーダーとしても部長の八田菜愛をよくサポートしてくれている」

 愛実は藤本先生の期待に応えて高1からコンクールメンバーに選ばれ、憧れていた全日本吹奏楽コンクールに出場。喜びを感じたものの、先輩がメンバー外になったことで複雑な感情も抱えることになった。

「先輩のためにもがんばろう!」

 愛実はそう決意して本番に挑んだ。初めての全国大会とは思えぬ冷静な演奏ができたが、結果は銀賞。泣いている上級生たちの姿を見るのがつらかった。

 高2でもコンクールメンバーに選ばれ、自由曲《遥けし未来へ ~THE UNKNOWN JOURNEY~》(フィリップ・スパーク)ではコルネットも担当した。

 勢いだけで全国大会に立った前年とは違い、緊張感やプレッシャーは増していたが、見事に悲願だった創部初の金賞を獲得。コンクールメンバーをサポートしてくれた菜愛たちトゥッティメンバーが、自分たち以上に喜んでくれている様子が目に焼きついた。

(私たちはたくさんの応援や支えを受けて、全国金賞にたどり着けたんやな……)

 喜びの輪の中で、愛実は静かにそう思っていた。

全国大会に突き抜ける音を

 今年の菜愛には目標があった。オーディションではパート内の順位がわかるが、トランペットパートの1位になり、そして、トップに選ばれることだった。

 昨年も1位ではあったが、トップには選ばれなかった。その悔しさを晴らしたかった。

 だが、思いの強さがプレッシャーとなり、オーディションでは手も音も震えてしまった。

「失敗だったかも……」...