街を歩いていると、不意に耳に入ってくる言葉がある。誰かの会話、カフェのBGM、看板の文字。芸人・鈴木ジェロニモが、日常の中で出会った“ちょっと気になる言葉”に耳をすませて、思考を巡らせます。(連載の詳細はこちら)

お盆だったと後から思い出して、すると幸いスケジュールが空いていたので短く帰省しようと思い立つ。とりあえず宇都宮駅まで行く必要がある。東京から宇都宮へ行くには新幹線という方法もあるが、新宿駅から湘南新宿ラインに乗った方が安いし早さもそんなに変わらない、と覚えていたのでそれで向かう。
新宿駅では座れず、なんだよまあ、と立っていると池袋駅でごそっと人が降りる。これはどうも、と空いた座席に座る。宇都宮までおよそ1時間40分。本読んだってスマホで作業したっていい。何してやろうか、と顔に出ないようにニヤニヤする。が、結局窓の向こうの景色が変わっていくことにぼんやり嬉しくなってしまって、音楽よろしくお願いします、とAirPodsを耳に挿す。
パソコン音楽クラブの新曲、あとCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUINのアルバム、と誰かの投稿や会話を思い出し、出会いがいがあるなあとほくほく再生する。うとうとしたりしなかったり、そのうち外が栃木っぽさを見せ始める。建物が低くなって、景色に緑と錆が増える。シングルとアルバムを再生し終えたSpotifyが、こんなのもいいよねと自動で次の曲を流す。
おお。たぶん初めて聴く曲だけれどなぜか聴き覚えがあって、そうして歌が始まって、あ、ceroだ、と思う。いいじゃんねーとそのまま聴き続ける。すると突然、歌詞が明瞭に入ってくる。
「夏に映画館出た時 終電が終わった駅前」
はっ、とする。これは東京の歌だ。私は〈夏に映画館でレイトショーを観て、終電が終わった後の駅前にいる〉ことを想像する。新宿の景色が浮かぶ。すごくいい歌だからこそ、私は栃木を意識しながら、そんなものはない、と思う。...