街を歩いていると、不意に耳に入ってくる言葉がある。誰かの会話、カフェのBGM、看板の文字。芸人・鈴木ジェロニモが、日常の中で出会った“ちょっと気になる言葉”に耳をすませて、思考を巡らせます。(連載の詳細はこちら)

新曲が出た。『それが踊ったことになる』。まずは聴いてほしい。前回の『トマトのジュース』と同じく、にゃんぞぬデシさんと米澤森人さんに作編曲をしていただいた。トマトのジュースチーム、と私は呼んでいる。
MVも撮りましょう、という話になってお抹茶さんに登場いただく。監督脚本編集、全てにゃんぞぬデシさん。大先生。ここの河川敷で、こういうショットで、こういう振り付けで、と全てをプロデュースしていただく。撮影していると、曲を作る前に感じていた過去の風景が目の前で未来の形をして待っているような感覚に至る。
詞先・曲先(しせん・きょくせん)という言葉がある。歌を作るときに歌詞を先に考えるか、メロディーを先に考えるか。私たちは詞先で作った。まず私が歌詞を作成してチームに預ける。すると曲を付けてくださって、なるほどこの曲調ならこの言葉はもう少し、と何度かラリーを繰り返す。歌詞に取り組んでいる最中は明確な場所や時間は自分の中でも明示されないが、曲というボディを手にすることによって、そうか確かにこんな場所かもしれない、こんな時間かもしれない、と後から分かっていく。そのようにして後から後から、もしかしての世界が見えてくる。
MVが完成。観て、これだ、と思う。初めて訪れた某所であったはずなのに、どうしてか私の記憶に存在していたような、傍らの(お抹茶さん演じる)ピアノ刀侍も幼い頃から行動を共にしていたような、新しさと懐かしさが同時にやってくる。私たちの歌がMVという身体を持って現れると、その記憶が、あったことになる。いくつも分岐した過去を束ねて私は今ここにいる。過去が未来で待っている。歌詞から曲へ、曲からMVへ、そのことが明確になっていく。
「事件すぎます」。トマトのジュースチームのグループLINEに突然スクショが貼られる。...