街を歩いていると、不意に耳に入ってくる言葉がある。誰かの会話、カフェのBGM、看板の文字。芸人・鈴木ジェロニモが、日常の中で出会った“ちょっと気になる言葉”に耳をすませて、思考を巡らせます。連載の詳細はこちら

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 友人3人と小さい旅行へ。小学校を改装してつくられた宿泊施設。教室だったところがカフェや食堂や売店になっている。校庭の一角がバーベキュー場風に整えられていて、そこが夕食会場となる。周辺は山に囲まれて緑が多く、しかも夕方から夜にかけて照明を焚いているので一応虫というものが寄ってはくる。しかし対策が上手くいっているのか、食べているテーブル付近は虫を気にせず快適に過ごすことができる。

「わっ! なんか飛んできた!」。友人が声を上げる。「ええっ!」。他の2人もつられて驚く。近くの照明のふもとに、夜間でも視認が余裕なくらいの大きさの、おそらく虫が飛んできたらしい。私は栃木県出身でそれなりに木々に囲まれて育ったからなのか、それとも単に反応が鈍かっただけなのか、ほお、と椅子から立ち上がらない。

「カブトムシだ!」。友人が慌てて叫ぶ。えっ、とすぐ見ると、本当にカブトムシだ。頭と背中を焦茶色にきらめかせ、ぐーん、よりはすっ、って感じの角をスマートに伸ばしている。さっき飛び終えたばかりの羽根を背中に畳みつつ、彼にとってはそっちが前なのだろう方向にぬしぬし歩き出しそうだ。おおー。野生のカブトムシをこんな近くで見られるなんて。小学生の私がときめく。しかし友人たちはカブトムシだって虫じゃないかと後ずさっている。このままでは、せっかくのバーベキューが志半ばで頓挫してしまう。

 この場に私だけだったらじっと見つめ合ったって構わないのだけれど今は一応状況があり、カブトムシには退席してもらわねばならない。私はテーブルの上にあったティッシュペーパーを握りやすいサイズに折って指のあたりに備え、カブトムシを触らないように気をつけて、触らないように、触る。あっちですよ、と退路を示したい。

 私の思いが伝わったのか、カブトムシはさっきまでのぬしぬし歩行をすぐにやめて、あーはいはいはい、といった様子で急いでくれる。テーブルから1メートルほどの距離。うん大丈夫そう、と友人たちに着席を促す。はあ、と安堵しながら彼らは座る。すると近くのテーブルで溌剌と肉を食べていた20歳くらいのボーイたちがじっくりじっくり近づいてくる。彼らは彼らの少年時代が心の近くにあるのだろう、カブトムシへの興味を隠し切れない様子。できることならもっと近づいて、あわよくば捕まえてしまいたい。私からはそう見える。

 じゃあ、と。こちらは捕まえる意思はないので好きに見ていいし捕まえたっていいんじゃない。そういう気持ちを伝えたくなる。私はにこやかな諦めを心掛けて表情を作り、右手でカブトムシをゆるく指しながら言う。

「カブトムシっ」...