街を歩いていると、不意に耳に入ってくる言葉がある。誰かの会話、カフェのBGM、看板の文字。芸人・鈴木ジェロニモが、日常の中で出会った“ちょっと気になる言葉”に耳をすませて、思考を巡らせます。(連載の詳細はこちら)

新刊『もっと真剣になればよかった』の刊行記念イベントとして穂村弘さんと対談させていただいた。登壇する穂村さんの手に『もっと真剣になればよかった』が。読んでくださったことがありありと分かる、付箋貼りっぱなしの新刊。自分の本は新しくても使い込まれても嬉しいのだとしみじみ気づく。
「前作の『水道水の味を説明する』では、地球に初めて降り立った宇宙人が地球にはない道具を用いて地球のものを念入りに精査したような印象を受けました。今作はその宇宙人の目が、自身に向いている。自分のことを説明する、という本でもあると思います」。
いきなり本質を貫かれる。私がぼんやり把握していた執筆態度の概要を端的に捉えている、と思う。はぁー、へぇー、んなるほどっ、あぁーそうですね。芝居ではないマジの相槌を私の全身がぐねぐね続ける。すると、客席の方へひらいていた穂村さんの姿勢がぐっと私の方へ寄ってくる。
「ほどよい自己紹介というものがあるじゃないですか」。はい、まさに。これから穂村さんが仰ることに完全に同意することが、まっすぐ伸びる道路みたいに広々と分かる。
「新しい環境で自己紹介をするとき、弱い部分も見せておいた方がいいかなあと思って、方向音痴でよく道を間違えてしまいます、とか言うわけですよね」。はい。その行動が私の全てとは思っていなくとも、私の、あなたと同じであろう要素をあなたにとって解釈しやすく成形して、私たちは言葉を選ぶ。このとき選ばれる言葉って、一体何なのだろう。私はずっと、この〈ほどよさ〉が分からない。...
